恋をしている



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カタリ、
音が鳴る度彼が来たのかもしれない、と期待してしまう。まだ陽も完全には落ちていないし、お仕事も終わってないはずなのに。
「……ジャベリンさん」
名前を呼んだら来てくれそうな気がして、ついつい口に出して彼の名を呼んでしまう。
わたしはきっとジャベリンさんの事が好きなんだろうな、なんて自分のことなのに他人事のように想っていて。
「……傍にいれるだけでいいもんね…。」
恋なんてしたことが無いから高望みはしない。
ジャベリンさんはわたしの本当の種族を聞いてしまえば、二度とここには来てくれなくなっちゃうから。だから、この気持ちはずっと胸の内にしまっておきたい。彼と出会えただけでも、幸せなのにそれ以上を願ってしまったらバチが当たってしまう。
それでも、それでも、
「早く来ないかなぁ。」
無意識に口を出た言葉はまぎれも無い本心で。自分が呟いたことなのに少しだけ驚いて。
(欲張りになっちゃった。)
あの日、倒れていた彼を助けたことに見返りなんて求めるつもりは無かったのに。彼と過ごす時間が増えていくたびに淡い期待をしてしまう。
もっと話していたい、もっと顔を見たい、もっともっと近くにいたい。彼の隣で生きていたい。
だけど、それは願ってはいけないこと。
「……でも、想うだけはいいよね。」
どんどんずるくなっていく。
本当に私は欲張りで悪い子だ。


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陽は完全に落ち切って辺りは真っ暗に変わっている。
(もしかして今日は来れないのかな?)
勝手に勘違いして作ってしまった2人分のご飯。早く食べないと冷めてしまいそう。
「………わたし、ばかだなぁ。」
視界が滲んでぼやけてしまう。約束していたわけではないし、ジャベリンさんにだって都合はある。
それなのに、絶対に来てくれる、なんてどうして思っちゃったんだろう。
「ごはんたべないとさめちゃう!」
震える声で自分に気合いを入れる。欲張りな悪い子が勝手に勘違いしただけだもの。
ご飯に手をつけようとした瞬間、コンコン、と戸の音が響いた。
「フィー、いるか?」
大好きな彼の声。さっきまでの涙が一瞬で引いていく。自分でも単純過ぎて笑ってしまう、彼が来てくれたのがこんなにも嬉しいなんて。
「いますよ〜!開けますね!」
慌てて扉を開けると、申し訳なさそうな表情をしたジャベリンさんが立っていた。
「済まない、遅くなってしまった。」
「だ!だいじょぶですよ!」
約束もしてないのに遅くなってしまったことを謝る彼の優しさが嬉しいと思ってしまう。私の言ったことに安心してくれたのか、ジャベリンさんは笑ってくれた。
あぁ、やっぱり私はあなたのことが。





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