若草物語 | ナノ
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  お昼休みだ!


午前中最後の授業が終わると、皆が一斉に晴れやかな顔になって、各自お弁当を出したり、財布を持って立ち上がったりし始めた。あたしはごそごそと鞄を漁るとお弁当を取り出してそれを机に置く。

「中庭行く?」と聞いてきたナミちゃんに頷く。けれど「先に行ってて」とそう告げて立ち上がった。

廊下を出て歩いて、別のクラスの前へ行くと目的の人物と目が合った。その人は笑った顔でこっちへとやってきた。…とそこへ、私の肩をぐっとつかむ人物が一人。振り返るとエースだった。

「どうした?」
「あ、ご飯誘いに来たの?」
「そうだけど…。お前何でここにいる。いっつもナミって女と食べてるだろ?」
「あたしはね、ちょっとサボに渡すものが…」
「マリ、お待たせ。…それが例の?」
「うん!そう!はいお弁当!!」

あたしはそう言って、持っていた包みをやってきたサボに渡した。「んな!!!!!!」。隣のエースがものすごい奇声をあげている。「どどど、どうしてだよ!!」。そう言ってそのお弁当とサボを交互に見つめてあたふたしている。

「ありがとうマリ。嬉しいな。楽しみだ」
「うん」
「何でそんなことになってんだよ!!え!?サボ、おい!!!説明しろよ!!」
「説明するまでも…ないというか。フフフ」
「何、エース。そんなに慌てて」
「おーーい!エース!サボ!!食堂行こう!!早く行かねえとB定食なくなっちまう!!…って、サボ、今日は弁当なんだな!」
「ああ。何と、作ってもらった」
「よかったな!」
「よかったな、じゃねえよ!!!クッソ!!!」


エースは何故か顔を盛大に歪めて拳をぎゅっと握りしめていた。不機嫌な声で舌打ちすらしている。あたしは「?」と首をかしげつつ「じゃあ、あたしは行くね」と言ってひらひら彼らに手を振った。

中庭でご飯を広げようとした矢先、エースがものすごい形相でやってきた。「あれ?食堂は?」と聞いたあたしに、エースは顰め面したまま言った。

「俺にも明日弁当作ってくれ!」
「え?」
「あら♪」
「何の事?エース」
「何の事…じゃねえよ!!…ずりいじゃねえか!」
「ずるい…って。何で?」
「ふふふ♪」
「だって!!サボにだけ作ってやるなんて…不公平じゃねーか!!」
「ええ!?」
「ねえマリ。さっき休み時間にサボのお母さんからあのお弁当受け取ってたのよねえ〜。サボがちょっと出られないからって」
「ハァ!!??」
「うん?…うん、そうだよ。忘れていったからって持ってきてくれてて。そうだよ、エース。あれあたしが作ったんじゃないって。なにその勘違い!あはは」
「ハアア!?…クッソ…あの野郎…」

あたしはエースの焦ったような怒ったような顔に思わず噴き出した。そもそもあたしがサボにお弁当作ってあげるなんて…そんなことできるわけないのに!朝寝坊常習犯のあたしが!!

「母は偉大だね!あたしのお母さんも本日のお弁当ありがとう!!」
手を合わせぺこりと母作のお弁当に頭を下げたあたしの側で、エースはひたすら舌打ちして怒っているようだった。「クソーーー騙された!」。そう言って頭をぐしゃぐしゃかきむしっていた。


「まあ、奇跡が起こってあたしが早く起きれたら、その時は作ってあげるよ」
「え…」
「ひのまる弁当!」
「…うん。……って!!日の丸かよ!!お前なー!ヘヘッ」


するとエースはどうしてだろう?少しだけ機嫌をよくしてた。ひのまる弁当で満足してくれるんだったら、明日からでも作れそうだね。あはは。


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