若草物語 | ナノ
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  授業開始だ!


あたしは教科書を開いた途端にこの目に飛び込んできたわけのわからない数式から目を背けて黒板の端の方を眺めていた。あーもう、数学なんてなくなればいいのにー。そう思って黒板からも目を背けて、窓から廊下をちらりと眺めた。
…って、まさか!!なんと!
私が視線を移した廊下にはルフィが背を屈めながらそろそろと歩いてこちらへやってくる姿が見えるではないか。ちょっと待って!何やってんの!!あたしは思わず「あ」と言いかけたその言葉を飲み込み、黒板に熱心に数式を書き込む先生を確認すると、机の下でスマホを操作してルフィへとメッセージを送る。

< 何!?)

ルフィはポケットからスマホを取り出し、それを見て何やら操作すると、今度は私のスマホがそれを受信した。

 ( 授業×!購買行く >
< まだ開いてない!)
 ( なら開くまで待つ >
< 馬鹿!)

屈託なく笑いながらそうメッセージを送ってくるルフィに、私は思わずくすりと笑ってしまった。ルフィはそろそろとこちらまでたどり着き、窓のすぐそばで腰を下ろすとニシシと更に笑ってメッセージを送ってきた。

 ( 数学て!マリも? >
< 行きたいけど )

そうメッセージを送り終えると、ルフィはにやっと笑ってしーっと唇に人差し指をあてた。そしてそろそろと扉付近にまで近づくと、慎重に慎重に、なんとその扉を音を立てずに開け始めた。人ひとり分通れるくらいの隙間をあけると、そこから中にまで忍び寄り、あたしに向かって来い来いと手招きする。私は首を振った。隣の席のナミちゃんはとっくにルフィに気が付いていて、もう噴き出す寸前になっていた。


ガラガラ!!バン!!!


すると、扉を開けて閉める大きな音が聞こえた。
それはちょっと遠くの別の教室からで、扉を開ける際にそこからは割と大きな声で誰かが何かを言う声が漏れ聞こえた。「先生!!俺トイレ!!!」。あ、この声はエースだと気が付いた。
びくりとルフィが私の足元で驚いたのと、かなり大きな扉の開け閉めの音だったから驚いた先生が黒板から振り返って窓のほうを見つめるのと、私が思わず身体を曲げて廊下に視線を向けたのはほとんど同時。目線の先には苛々した顔のエースがつかつかとまっすぐにこちらへ向かってやって来る姿があって、そして私の傍まで来るとあいたドアの隙間から迷うことなくルフィの腕を掴んで引きずり出した。…と同時に、先生がルフィの侵入にも気づいた。

「コラァアアアア!!!お前なにやっとんじゃ!!!!他クラスの奴が!!!しかも授業抜け出して!!!」
「俺が引き取っていきます」
「引き取るとかじゃねえ!!お前も何やっとんじゃーーー!!!」
「俺はトイレです」
「あちゃー。見つかっちまったかー」

ニシシ。
ルフィは怒られているにもかかわらず、相変わらず屈託のない笑顔を向けていて、先生はそれに更に怒鳴って黒板消しを投げていた。

ブルル

そしてあたしのスマホにメッセージがやってきた。


 ( 授業は真面目に受けるべし >


それはサボから。
あ、あたしさっきからメッセージを「杯兄弟」グループあてに送ってたみたいだね。あはは。

ルフィはその後、先生に放課後呼び出しの刑をくらっていた。まあ、仕方ないよね。エースはルフィを突きだしてしまうと、そのまま教室へと戻って行った。あれ?よかったのかな?トイレは。



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