若草物語 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


  兄弟になった日。



多分彼らは任侠映画か何かを見て、それでこの度こそこそと三人集まって、その手にそれぞれ杯を持って何やら神妙な顔でブツブツ言い合ってるんだとそう思った。
私はだからそろりそろりと彼らの傍まで近づいて、極限まで近づいて、そして言ってやった。

「ワ!!!!」
「ギャ!!マリ!!!なんだよ急に!!」
「うっわ!こぼれた!!」
「冷てぇ!!」

私の突然の大声に盛大にびくついた三人は、見てわかるほどに慌てて、サボなんか持っていた杯を派手にひっくり返してルフィはそれをかぶってひゃあ!なんて言ってる。あはは。私はおかしくて笑った。エースはそんな私をギロっとものすごい勢いで睨んでる。まじめにやってるのに!!なんて言いながら怒ってて、だから私は言ってやった。
「なら何であたしを除け者にするのさー」
と。

「うるせえな!!これは男と男のぎしきなんだよ!!女はすっこんでろ!」
「ひどい!!さべつでしょそれ!!あたしだって、そのぎしきやりたい!」
「あはは。ほーらやっぱり言った通りだろー?マリなしでやってたら絶対怒られるっておれ言ったじゃん」
「そうだそうだ。そもそも何でエースはマリを呼ぶなって言ったんだ?」
「言ったろうが!これは男と男の…」
「なら、あたし今だけ男になる!」
「はぁ!?言っておくけど、杯はみっつしかないんだからな!!だからそもそもお前が…」
「問題ないよ。だって、ほらここに」


私はそう言って、多分これはルフィのおじいちゃんの酒瓶だと思うんだけど、それを手に取る。こぼしてしまってからっぽのサボの持つ杯に、改めてそれを入れてあげて「あたしこれでいいから」と言った。そのまま「あァ!?」と言ったエースがそれ以上何事か言いだす前に、カチカチカチっと三人の持っている杯に素早くその酒瓶をぶつけると、あたしはそのまま一気に瓶を口に含みぐいっとそれを持ち上げて中身を飲んだ。



「ああああ!!!」



エースが驚いて声を上げたのと、止めようとしてサボが手を伸ばしたのと、アハハと私を見て盛大に笑ったルフィをこの視界の端でとらえたのが…私の意識が消える直前の映像。


「馬鹿!!それは本当のさけだぞ!!!」


ぐらん…


そう叫んだエースの声が何だか斜め上から聞こえたきたした。
割とたくさん残っていた中身をほとんど一気に大量に飲んでしまった私。アルコールが焼け付くようにしてのどを滑り降り、その直後にのどや胃が拒絶反応を起こすみたいカッと熱くなったのと、意識がぐにゃりと歪んだのは同時。

「!!!!」

そしてあたしはそのまま後ろにずっこけるようにして倒れた。うっすら開いていた目で、慌てたようにして駆け寄って覗き込んできた三人のその心配そうな顔を眺めまわした時、私の世界は完璧に真っ暗になった。



それが十年前。



その時の事は忘れようにも忘れられない。
初めてのお酒と、無理やりの兄弟杯、ルフィのおじいちゃんの拳骨と、皆のあきれたような顔。エースはかんかんに怒っていて、サボはこうなることをわかってたのかくすりと笑っていて、ルフィはあたし同様これが初めてのお酒だったからか、その顔を赤くしてとにかく笑い転げていた。


だから私たちは血は繋がっていないけれど、その日から4人兄弟。
ちなみに私の地位が一番上なんだ!
だって、任侠映画によると、飲んだ量が一番多い人が一番上って確か言っていたからね。



prev / next

[ back to index ]