相合傘 | ナノ
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▽ 薄墨色の空


今夜は私が不寝番なので、キャプテンの部屋へは行かなかった。真っ暗な中、マストの上の狭い見張り場所で回りを見渡す。町に停泊しているけれど、とりあえずの警戒はしないとね。海兵に寝込みを襲われたら大変だ。
ふと気が付けば甲板に人の気配がしたので見下ろすと、キャプテンがつかつかと歩いて立ち止まり私を見上げている所だった。ひらひらと手を振るも、キャプテンはそのまま動かずに私をじぃ…と睨むように見つめている。首をかしげると、彼のサークルで空間が包まれて、こちらに何か投げつけると同時にそれは次の瞬間にキャプテンになって私の側へと降り立った。
狭い場所であるのにするりと入り込まれて、あっという間にぎゅうぎゅうになる。
キャプテンはそして手を伸ばして私の顎をぐっとつかむと自分へと寄せてきた。

「痛い…」
「リオ…。夕方言っていた件について詳しい説明をしてもらおうか」
「あ、それより!夕ご飯おいしかった??私一緒じゃなかったからさ」
「…そんなことより、説明が先だ」
「ええ…そんなことだなんて…酷い…」
「…わかった。料理はうまかった。…で説…
「でしょ!!隠し味を入れることによってよりおいしくなってるはずだからね!!ねえ、隠し味なんだと思う??」
「少し黙れ。お前昼間に浮気まが…
「ああああ!ロー!大変!!あれ、海兵じゃない!?奇襲するつもりだよ!!緊急ブザー押すね!!」
「クソ…こんな時に!!ROOM!!」


…と、せっかく隠し味についてクイズを出そうとしていたのに、海兵が数名潜水艦に向けて銃を構える姿が見えたので慌ててそう告げる。キャプテンはクソ…と盛大な舌打ちをすると共に見張り台から飛び降りてサークルを広げていた。そしていつもより更に鮮やかに海兵を真っ二つに切り裂いている。その後も新手が何名か現れて、なので暫くは深夜で真っ暗闇の中での戦闘となった。私が戦闘に加わることを何故かキャプテンは嫌うので、私は照明器具を探して甲板を照らしてあげた。





そこまで苦戦は強いられなかったが、深夜の奇襲且つ大勢だったということもあり、戦闘は長引いてクルーは疲労困憊だった。私は救急箱を持って傷付いた彼らに応急処置を施し、ひと段落ついたところで大きく深呼吸して伸びをする。眠たいけれど、せっかくの島なのだ。時間があるならまた外を出歩きたい。
キャプテンは着替えに部屋に行ったのかその場にいなかったので、眠そうにあくびをするペンギンに近寄って「ちょっと出てきていい?」と告げれば、彼は少し困ったような顔をした。

「おいおい。船長を置いて行っちまうのかよ。疲れてんだから側にいてやれって」
「でも多分この後すぐに寝ると思うし…」
「いやいや。リオが側にいれば回復度合と…あと機嫌が全然違うからいてくれたほうが…」
「だいじょうぶでしょ!少しだから!」

結局行くんなら何故聞いたんだよー!!
…というペンギンの悲痛な声が聞こえたが、無視して甲板を蹴って港へと飛び降りた。

そして町をうろうろ歩いてお店を見つけ中へと入る。すると突然に腕を掴まれて思わずギャ!と叫ぶと、…その人物はキャプテンだった。目の下の隈がいつも以上に激しい。そして…睨みを利かせたその目力もいつも以上に恐ろしい!

「…何してやがる…」
「あ、買い物だよ。今回疲れたでしょ。だからチョコレート買ってたの。ロー、甘いもの、チョコだけは食べられるから」
「…」
「好きだよ…ね?」
「…ああ」

ちょうどきらしてたし…と言いながら先ほど買ったチョコの箱をそっと彼へ見せてみると、キャプテンは一瞬面食らったような表情をするも、暫くした後その表情は緩まった。これは嬉しい時の顔だ。口角がほんの少しだけしか上がっていないけれど、チョコに対しての時の表情はいつもこれだから大丈夫。

「もう帰るところだったの。ローてっきり寝てると思ってた。戻ったらコーヒー入れるね」
「…ああ。濃いやつ頼む」

じゃあ豆も買って帰ろうかな…と提案すると、キャプテンはそれを一蹴して強い力で手を引いてきた。
まあいいか。まだ豆は残っていたはずだから。

「俺を…心配させて遊んでんのか?」
「え?」

ぐいぐいと強く手を引かれる過程で、ふとキャプテンがそう聞く。私がすぐさま「何?」と問いかけると、キャプテンは暫し沈黙した後「いや…いい」と質問を取り下げた。


潜水艦へと戻って、濃いコーヒーと共にさきほど買ったチョコレートを二つばかりお皿に乗せてキャプテンの部屋へと運ぶと、チョコレート味のキスをされた。
キスの合間に帽子を掴んでソファへと置いたので、このまま私を抱くつもりだとわかった。

「ふ…、キス……甘い…」
「もっと甘くしてやる」

キスから送られるカカオの甘さとほろ苦さで思考回路をゆるやかに溶かされながら、キャプテンの指先は器用に片手で私の服のボタンを取り去り、下着の中へと侵入する。今度は指先から送られる刺激に身体の力が抜けそうになるところを必死で堪えて、私は「待って…」とその手を掴んで止めた。

「何だよ…」
「いいから…座って……」

小さく怒ったようになったキャプテンをほとんど強引にベッドへと座らせる。その際弾んだようになった彼の両足を開かせて、私はその間に膝をついて座った。キャプテンをすくいあげるように見上げると、そこには信じられないといった具合の顔をしたキャプテンの顔が私を見下ろしていた。

「少しそのままで……いてね……」
「おい…リオ……」

キャプテンの手が私の肩を掴んでどかそうとするが、私はその手を振り払って、その後すぐに彼のデニムのボタンに手をかけた。

「やらなくて……いい……そんな事…」
「させて…」

困惑したようなキャプテンの声が頭上から降ってくるが、無視してジッパーをおろし私は目を閉じた。心臓がドキドキとせわしなく跳ねていた。



気の毒になるくらいの彼の困惑も無理はない。
この行為もまた、私はキャプテンに対して初めてするのだから。
どうすればいいのかを思い出しながら、私は閉じていた目を開いた。


静かな部屋で、キャプテンのごくりと息を飲む音が大きく響いた。




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