オッサン部屋 | ナノ
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▼ 若と姫様B

若様は今日もかっこよく朝ごはんを食べていた。あ、勢いよく食べたオムレツのケチャップが口のはたに…。
ふきふき。
隣に座っていた私がすぐさまナプキンでそれを拭いてあげると、若様はイラっとした顔で私を睨んだ。

「ミナ…飯を食ってるのをじっと見てんじゃねえ…。テメェの飯に集中しろ…ってか、食え。なんで食わねえ」
「嫁たる者、夫の食事の介助が優先なんだよ!わたしはあとで残ったものを食べるの」
「嫁じゃねぇだろ!…残ったものなんか食うな!きちんとテメェの分がテメェの前にあるだろうが!」
「若様の食べ残しでいいのに…」
「どんな教育だ!?いいから食え!…命令だ!」
「夫の命令?」
「違ぇよ!いいから食え!だああ…、クソ…、何でいつの間にこんなガキが俺の許嫁ってことになってんだよ…」
「え?知りたい??んねー?知りたい??ベッヘッヘ」

食べろと言われたので仕方なく若様の隣で私も食事をすることにした。今日はオムレツとポテトサラダと…あ、ブロッコリーだ。ブロッコリーは若様の嫌いな野菜。私の若様メモにも記載済みだ。嫁たる者、夫の嫌いなものは知ってしかるべし!の教えに従い若様の好き嫌いを私はほとんど把握している。
…と、そんな野菜が若様のプレートにのっているなんて…。きっと今日の配ぜん係は何故だか若様を毛嫌いしているローに違いない。
「残さず食えよ」
…なんて、若様はいつもベビーちゃんたちにそう言うんだけど、今日ばかりはそのセリフが出てこない。ブロッコリーのせいだな。私はそう思って若様の袖をクイクイ引っ張った。「アァ?」イラっとした若様が私を見下ろして睨んだ。

(それ、それ)

私はそして目が合ったことを確認すると、そっとみんなにわからないようにブロッコリーを指し示し、次いでその指で私の開けた口を指さした。入れろ、という意味を込めて。若様は一瞬片眉を小さくあげるも、素早く周りを見渡して誰もこちらに注意を払っていないことを確認すればフォークでそれを突き刺し、さっと私の口に入れた。そして知らん顔を決め込んでいる。

モゴモゴ

口角を上げている若様。
その顔を口をもぐもぐ動かしながら見ると幸せな気持ちになった。うふふ。今私ちょっといい女だよね??
それを飲み下して、次なる欠片をスタンバイしている若様の隣でもう一度あーんと口を開けてそれがやってくるのを待った。そしてタイミングを見計らってそれが運ばれた矢先…何と私とローの目が合った。

「あ…!テメェ…!!」

う…

若様の気まずそうな声が聞こえる。
なので私はあらんかぎりの力を込めてローを睨み返した。

ドン!!!


空気が揺れた。
途端にローが「グア!!」と小さく呻いてブクブク泡を吹いてテーブルに突っ伏す。

「わー!ローが急に倒れただすやん!」
「おいおいおい!ミナ…お前もしかして…!?」
「ほーら、これこれ!んねー!ミナは覇王色の覇気持ってんだよねー!若と揃いだ。お似合いだろ。相性いいはずだろ」
「それだけの理由で許嫁!?」
「あーもう、ローったら情けない!これくらいの覇気で!」
「バ、バブー!!」
「何でいきなり覇気をぶつけたんだすやん!?理由なき攻撃だすやん!」
「ミナちゃん怖い!!」

若様は倒れたローに憐れみの表情を浮かべ、そして私を呆れたように見下ろすも、他の皆がそんなローに注目した瞬間サッとブロッコリーの突き刺さったフォークを私の口に押し込むことは忘れなかった。モグモグモグ。若様のブロッコリー完食!これにて一件落着。

「お前ら残さず食えよ」

そしてフフンと余裕そうな表情と共にみんなにそう告げる若様。そんなずるい所もかっこいい♪
…と、そして私も自分のプレートを見てみると大嫌いなピーマンがオムレツの中に入っているのを見て冷や汗が出た。若様の先ほどのセリフを聞いてしまった以上、これを皆の前で残してしまうのは忍びない。夫の言うことに忠実でいるべき嫁として…。

「…」

フォークでそれをつついて困っていると、隣の若様の視線に気が付いた。ちらりと若様を見上げると、私の表情から事情を読み取ったのか彼はニヤリと笑う。…あ、これはあまりよくない笑い方だ。…そう思って肩をすくめた…その矢先。


ドドン!!


先ほどよりも更に大きな波動でダイニングの空気が揺れて、ギャ!グア!バブゥ!といううめき声と共にベビーちゃんやバッファロー、デリンジャーたちがその場に突っ伏した。
あ…
私は思わず若様を見上げる。


「さあて…、何が起こったんだか…」


若様はフッフッフと意味深な笑みを浮かべると、気を保てた残りのメンバーにどこか強く言い聞かせるような視線を向け、そして私のお皿の端に集めていたピーマンを颯爽と食べた。む…胸が…キュンキュンする!


「若様!!!わああ♪好きーー!!!」
「くぉら!!おい!!抱きつくな!!!もうこの後はゆっくり飯を食わせろ!」


ぽーーーん!


そして私は首根っこをつかまれて若様から引っぺがされると容赦なくダイニングから放り投げられた。



…あの日私が街中で嫌なことがあって盛大に叫んだ後に人が何人も倒れた様を見て、トレーボルは私を許嫁として決めたらしい。
『若も同じ技を使えるぞー。結婚相手に最適だろ!おいでおいで。うちのファミリーは楽しいんだねー』
そう言って手を引いてくれた。懐かしい。途中少女誘拐って警官に呼び止められたりもしたなぁ。ふふ!おかしい!!


それにしても若様に物を食べさせてもらうのって、とっても素敵。
いつか私も若様にあーんって何かを口に押し込みたいなぁ♪大人になったら…できるかな?!


もっともっともっと、いい女になるからね!
だから待ってて若様!



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