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▼ 煙と霜月

ヘビースモーカー大佐。
この度は本当に本当にご心配をおかけしたと思います。申し訳ありませんでした。
言い訳はできません。それを私が所持していたことは紛れもない事実ですし、私はそれを肌身離さずずっと持っていたかったのですから。
けれど、これがもし教官に見つかってしまった時に起こる事態についてまで考えが回っていなかったことは反省すべき点だと理解しております。その所為で養成学校では生徒全員の持ち物検査が急きょ行われることになりましたし、私のクラスは連帯責任ということで全員に腕立てとランニングが課せられてしまいました。全てが私の軽率な行動が起こした結果です。だから私は今回の事でたくさんの人達に迷惑をかけてしまったことを胸にとめ、これからの生活ではより一層自覚を持って行動しないといけないですね。ヘビースモーカー大佐は今私をどのように思っていらっしゃるのでしょうか。


これで大佐にお手紙を差し上げるのはもう8通目になります。けれどその間大佐からご返信をいただくことは一度もありませんね。
大佐は、一体どんなお方なんでしょうか?
今の私にはこの疑問ばかりが頭に浮かんできてしまいます。


大佐は私の両親をご存じでいらっしゃるのですよね。
先週両親のお墓に参ってくださっていたのは、ヘビースモーカー大佐、あなたなのですよね?
私がそこで拾った葉巻はあなたのものですよね?
いつもは両親の命日当日に訪れていたのですが、今年は遅れてのお墓参りとなりました。
私はその日とても驚いたんですよ。
だってそこには新しい花と線香を焚いた跡が残っていて、しかも、お墓の側に葉巻がひとつ落ちていたのですから。

あなたが私を養成学校に入れてくださったのは、私の両親を知っているからなのですか?
あなたは両親とどのような関係だったのでしょうか?

私はその事を考えると苦しくて仕方ありません。

私は両親の記憶がほとんどありません。
それならば、私の両親を知るあなたに益々会いたくて仕方ないんです。
両親は記憶どころか写真の一つも残してくれていません。形見は何一つ私の手元にはないんです。
だからでしょうか。
私にとってお墓に残っていたあなたの葉巻は、両親が私に授けてくれた宝物のような気がしてならなかったんですよ。
でもそれももう無くなってしまいましたけど。


少しだけでいいんです。
私は話が聞きたい。
あなたの口からでなくてもいいですから。お手紙でも構わないですから。
よかったら教えてくれませんか??私の父と母の事を。


生意気な事ばかり言ってごめんなさい。
でも本当に知りたいんです。


___


「なんじゃお前、あの子がこんな事態になってもやっぱり顔は出してやらんのか」
「…元帥」
「なあスモーカー。お前はまだ気にしておるのか?あの子の両親の死を…」
「放っといてください。…あの人達は本当は死ぬべきじゃなかった…」
「…フン。不器用な男じゃのォ。まあ、いい。ならせめて手紙でも書いてやったらどうじゃ?ホレ。あの子が持っとったお前の葉巻じゃ。担当教官から奪い取ってやったわ。ハッハッハ」
「…」
「こんなモンでも宝物とやらになるんじゃのォ。人それぞれの価値観は違うと言えど、これは理解しがたいわ」
「…」
「相手は女の子じゃ。もっと、こう、かわらいらしいものを宝物にさせてやりなさい」
「……」
「ほら。来月はクリスマスじゃしなァ」
「…あんたの口からそんな言葉が出てくるなんて気持ちが悪ぃよ」
「ハッハッハ。何とでも言うがいい。ジジイは考えが単純なんじゃ」
「…」



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