オッサン部屋 | ナノ
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▼ 若と姫様と停電騒ぎ?

皆で夕食を食べているとき、突然にバチッという音がして部屋の灯りが急に消えた。「わっ!」。誰かが驚きから声を上げる中、若様の顔がぴくり…少しだけ動いて反応する姿が暗いなかでも隣に座る私にはわかった。

「あれれ?ブレーカー落ちたのかなぁ?」

私は慌てながらそう言って立ち上がる。デリンジャーは急に暗くなったことを怖がって「バブゥ↓」って言ってるし、ベビーちゃんは「え!え!?」って焦ってるし、バッファローは料理がのったお皿が見えなくなって「おかずが見つからないだすやん!」って怒ってる。ローは「ブレーカーじゃねぇの?」と私の言葉に冷静にそう返していた。

「俺が行こう…」
セニョールが静かな声で真っ暗闇の中そう言うのが聞こえた。「いいよーセニョール。わたし行ってくるから」。私は席を立とうとする彼を制した。でも本当に真っ暗すぎて足元が見えず、すぐには動けなさそうだった。

「やだ!本当に暗すぎ!!目が慣れるまで待った方がいいかなー。転んじゃうわ!」
「転ぶ、と言えばロシナンテは今日いねぇな。どうした?」
「仕事でしょー?」
「そうだったか。オーイ!!ピーカ、どっかに懐中電灯はねぇのかよ」
「懐中電灯は玄関!そこまで歩いていく自信わたしないよ」
「ウェエエーーン!!」
「おいおい。デリンジャーが泣き出したじゃねぇか!仕方ねェから俺が…って、痛ェッ!!椅子にぶつかったし!!」
「ディアマンテ!今すぐに歩いたら危ないって!目が慣れるまでおとなしくしてて!!」
「やだやだ!!ミナちゃん!!早く元に戻してよー。怖いよお!!」
「なら目をつぶってなさいよベビー!このくらいで怖がらないでよ弱虫!」
「そうだすやん。ちょっと暗くなったくらいで大げさだすやん!それよりおかずが見えない方が問題だすやん!!」
「匂いで探せばいいだろ。それにてめぇら落ち着けよ…。ちょっとブレーカーが落ちて部屋が暗くなっただけじゃねぇか」


お前等…


…すると、ギャアギャア言い合ってる私たちに対して若様の鋭い声が響き渡った。「いちいちうるせぇ」。そう言いながらハーって何だかため息ついてる。そして「…前置きが長ぇんだよ。……そういう妙な小芝居はいいから早い所先を続けろ」…と言ってくる。え?何言ってるの??

「何??若様どうしたの?」
なので私がそう言ってみると、あぁ!?と若様が声をあげるのが闇の中で聞こえた。「どうしたって…そりゃ…」。そしてモゴモゴと口ごもる。

「だからよ…、もう、なんつーか…これから何が起こるか、だなんてわかりきってるってハナシだよ。ならさっさとしろと言いてぇんだ」
「ん?どういうコト?」
「おい…。まさか主役にソレを言わせる気か??!」
「え!?主役!!??何?意味がわからない!劇でもするの?コリーダコロシアムで?」
「待てよ…オイ待て…。ミナ、お前それ本気で言ってんじゃねぇだろうな??」
「?」
「…おい…マジなのかよ…」


…ッパ!!「あ!灯り復活した〜!!よかったぁ〜」


訳の分からない若様の言葉に私たちが首をかしげている中、消えていた灯りが再びついて一同全員がホッと息をつく姿がこの目に映った。私の隣にはその事に何故か驚いて口を開け放し、固まった表情をした若様がわなわなしながら私たちファミリー全員を見渡している姿も見える。
「…お前たち全員焦りすぎだ。俺がブレーカーあげてやったぞ」
そして、いつの間に席を立っていたのだろう?ドヤ顔をしながらゆったりと自分の席に座り直してそう言ってきたのはグラディウス。成程!食事中でも外さない妙なゴーグルのお陰で急な暗闇でも対処できたというワケか!ちゃんと役に立ってるんだねその妙な装い!しかし私がそれに感心している中、若様が突如としてぬおおお!!と言いながら席を立ち何故か急に怒りだしたので皆はそれに驚いた。

「待て待て待てェエエエ!!何で…グラディウス……お前手ぶらでココに戻って来てんだよ?!!というか、何で何事もなく灯りがまたついたんだ!?お、おかしいだろ!?オイオイオイ!テメェら『立ちあがってまで何言ってんの?』的な視線を俺に送ってんじゃねぇよ!今日は…今日は……ちょっといつもとは違う日、だろ!!??」
「…」
「何だその目はァアアーーー??!!」
「何言ってるのかわからない目」
「ミナ……お前……本気かよクソッ!!何なんだ!暗くなったことにちょっと期待した俺が馬鹿だってのか?!…ロシィも今日という日に何故か仕事でいねぇときてるし……俺の弟だろアイツは……あああクソッ!!あー!!何て日だ!!畜生!」

若様はそう一人で叫びまわると、どうしても冷たい目をして彼を見てしまう私たちを一瞥してガー!!と吠えれば、頭をグシャグシャ掻き毟りどかんと椅子に座り直して食べていた秋刀魚に再びガブリと噛みついた。「しかも今夜のメニューが秋刀魚だとはな!!!」。そして何故か夕食のおかずにまで文句を言い始める始末。ハー…。もうアラサーだというのにまるっきり子供じみてるね。私は冷たい目をしたままの皆にこーーっそりと目配せを送るとふふふっと笑った。そしてじゃーん!と両手をあげて、見るからに落ち込んでいる若様にとっても明るい声で言ってあげた。

「…か、ら、の〜〜??」
「アァ??」
「「「「「ハッピーバースデーーー!!若様!!」」」」」


パパパパーーーーン!!!
そして皆で一緒になってそのお祝いの言葉を言った後、隠し持っていたクラッカーを取り出して一斉にそれを鳴らした。
途端に辺り一面色とりどりの紙ふぶきやリボンが舞い上がって、その一部が唖然とした表情の若様の頭にひらりと落ちていった。あはは。さっきのどうしようもなく拗ねまくってる若様も素敵だったけれど、この事に驚いて言葉を失っちゃった若様はもっとかわいくて素敵♪私はニヤニヤ笑いながら「みんなが誕生日を忘れちゃったとでも思った??」と意地悪く聞いてやる。若様は(多分)どん底の場所から一気に頂上まで浮上した自身の嬉しい気持ちを隠しきれない緩んだ顔を、ハッとしながら一瞬で隠しつつ「べ、別に!思ってねぇよ!!」…と、頭にのったリボンを取り去りながらそう言ってぐしゃぐしゃ手の中でそれらを誤魔化すように丸めていた。もう!本当は死ぬほど喜んでるく・せ・に☆

「あははっ♪サプライズ成功!!見た?若様の反応!!」
「最高だっただすやん!あれ、本気でキレかけてただすやんね!」
「ミナちゃんのシナリオおもしろすぎ!!というか皆芝居がうまくておかしすぎ!!」
「ホントだよ!デリンジャーもちゃんと演技できてスゴイスゴイ!」
「ふふふ。…若はいい具合に騙されていたな」
「アッハッハ!『主役に言わせる気か?』…のところじゃ吹きそうになったがな!」
「お前等…」

部屋に満たされた濃い火薬の匂いが薄れていく中、私たちの仕掛けたサプライズに無理やり怒った顔を浮かべようとするも気を抜けばその口元は否応なしに緩んでしまうらしい。若様はそれを必死でどうにかしながら「フン!」って荒く息を吐くと、私たちから目を逸らしてどこかわからない場所を見ていた。私はそんな若様にもう一度笑顔を浮かべると「よーし!!じゃあケーキ食べよう!!若様!ロウソク吹き消してね!」と声をかけ、「おーい!もう出てきていいよ〜!」と廊下の奥の方へと向かって声をかけた。

が、若様はすぐさまその台詞にぴくりと眉を動かし「おい、待て…」と冷静すぎる声を出す。え?どうした??ケーキ楽しみじゃないの??サプライズによりリアリティさを出すためにわざとおかずを平凡なメニューにしちゃった分ケーキはものすごく豪華にしたんだからもっと喜んでほしいんだけど!


「おい、一体誰が運んでくるんだ??ここにはすでにファミリーが全員揃ってるだろうが?」
「え?そりゃもちろ……


私がその質問に答えようとした……まさにその時……

ドンガラガッシャーーーーン!!!!!!!「−−ーッ!」

何と廊下の先から聞こえてきたのは、声にならない…というか実際音としては聞こえない悲鳴に似た人の吐く息の振動と、何かが派手に落ちて潰れ、加えて何かが誰かに燃え移る音…だった!「ピーピーピー!!!カサイハッセイ!カサイハッセイ!」。そしてたちまち鳴り響くのは我が家の各所に備え付けられた火災警報機!「わーーー!ロシナンテ!!!どうしたのっ!!??」。私は慌ててそう叫び、すると若様がものすごい顔をして「お前ーーーーーー!!」と私以上に叫びだしたので驚いた。


「馬鹿野郎がァアアアーー!!一体どうしてロシィにそんな役目を与えるんだよ!!明らかな人選ミスだろうが!!火のついたケーキ持ったアイツに何が起こるかなんて全員想像がつくだろうがアアアァアアン??!!??おい!消火器!!消火器持って来いィイイイイイ!!」
「カサイハッセイ!カサイハッセイ!」
「わーー!ロシナンテ!!もう馬鹿!!本当にドジ!!そのケーキ高かったんだよ!!転んで燃えてる場合じゃないでしょ!」
「相変わらずよく転ぶやつだな。…そしてケーキに……キレイにダイブしてやがるな…」
「カサイハッセイ!カサイハッセイ!」
「あーケーキ…楽しみにしてたんだぞ…」
「バブゥ…」
「あーん、イチゴが…。潰れちゃってまるでロシナンテが出血してるみたい…」
「カサイハッセイ!カサイハッセイ!」
「掃除が大変だすやんね。ケーキ…あーあ…食べられなかっただすやん…」
「コラさん!!!!!わぁああああ!!コラさんンンンーーー!!!!」
「クソが!!!お前らケーキを残念がる前にロシィを助けろ!!全くとんだバースデーだよっ!!ありがとうな!!…なんて言えるかよ馬鹿どもが!!」
「カサイハッセイ!カサイハッセイ!」
「あああああ!うるせぇ警報機だな!!!クソッッ!」


…というわけで、今日もファミリーは大好きな若様と一緒に楽しくおかしく過ごしているのであった。

チャンチャン♪


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