▼ 鷹と燕
ある日突然彼女が消えた。
『あ、もしもし?今ね、ペローナとロロノアをシャボンディに送ったところ』
…と思ったら、どうやらロロノアを送ってやっていたらしい。
「なら何故一言言わなかった」
『あんた何回も言ってたのに聞いてなかったんでしょうが!』
「…それより女、お前俺のワインを飲んだだろう。俺のコレクションが一本減っている」
『ああ、それより。外の世界はすごいねぇ。いろんな人がいるのよ!剣士もいっぱい。海賊、海兵、賞金稼ぎ、人攫いに天竜人!こんなに人間を見たのは初めてだわ』
「…聞いているのか女。俺のワインを…」
『え?何今電話中なんだけど。うるさいわね…。あんたに付き合ってる暇なんてないわよ。…は?お茶??何言ってんの。茶より酒でしょーが。え?いいバーがあんの?そこビンテージワインある??え!しかもあんたの奢りなの!いーじゃん!……で、今何か言った?これからバーに行きたいんだけど』
「待て女。俺の秘蔵のワインを出してやろう。今すぐに帰ってこられるか?」
『えー!あの鍵付のやつ??本当に!?触ろうとしたら全力であたしを切りつけてきたあのワイン!?』
「そうだ女。だからすぐにそこから去れ」
『どうしたの急に?まあいいけどね。それ飲めるんなら』
「ちなみにその時の俺は全力ではない。俺はウサギを狩るのに全力を出す馬鹿な獣とは違うのだ」
『何言ってんの?まあいいや。じゃ、すぐ帰るね〜』
…とりあえず、当面は彼女が満足できる量のワインを棚に補充しておこうか。
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