柳に鬼の手 | ナノ
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よく食べる女

戸棚を開けると重箱があったので取り出して蓋を開けた。
「やったあ。おはぎ発見」
その重箱の中には美味しそうなおはぎがぎっちりと並んでいて、私は思わずニヤリと笑った。

重箱は前と違う場所に置いてあったから多分隠していたつもりなんだろうけど私の鼻を舐めないで欲しい不死川!残念でした!
おはぎをふたつお皿に乗せた私は嬉々として縁側に移動した。

ガラガラッッ!
「さくらッッ!お前ェ!!」

すると屋敷の玄関が勢いよく開き、般若の形相をした不死川が現れて私を睨んだ。「お帰り、不死川」。ぱく。私がおはぎを食べながら手を振ると、不死川は草履を投げ飛ばすように脱げばドスドスと畳を踏み抜く勢いで歩き私に詰め寄った。

「何でお前が俺の家に当たり前のようにいて、普通にソレ食ってんだよ!?」
「いやあ、ここ落ち着くし。任務後で疲れてて甘いものが欲しかったし」

ぱく。
そう答えながらふたつめのおはぎを咀嚼すると、ンぁあああああ、頭を抱えた不死川の苦しそうなため息が聞こえた。

彼も任務を終えた後らしく、隊服は汚れ、その顔には疲労の色が見えた。
「不死川も食べる??」
「お前が言うな」
そうだね!うふふ!ごめーん!
私がおどけると不死川は疲れ切った顔をして畳に座り込んでしまった。
なので立ち上がって新しいお皿におはぎをふたつ乗せ、急須にお茶を入れて湯飲みと共に持って行ってあげた。
「…」
しかし不死川の機嫌は悪いままだ。
私の持つ皿を彼の鋭い眼差しが睨みつけ、その腕はわなわなと震えている。

「どうしてお前が更に五つも食うんだァ??」
「いやぁ、すごく美味しかったからさぁ。これ、甘さ控え目でスイスイいけちゃうね!どこで買ったの??」
「…」

ぱく。
私が三つめのおはぎに余裕でかぶりつく姿を見た不死川は怒りを通り越して言葉を失っているようだった。

「…胸焼けしねぇのかよ」
「しないよ」
「…」
「美味しいねぇ」
「…」

この屋敷にはおはぎが常備してあるから疲労回復目的でやはりお邪魔してしまうんだよね。

私は最後のおはぎを飲み込むと、ごくり、お茶をすすった。
手付かずのままの不死川の皿をちらりと見ると、不死川は慌てておはぎを口にしている。