柳に鬼の手 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

嫌われる男

さくらが俺の家にやって来て傍若無人に振る舞うのは今に始まった話しじゃない。
それは俺が柱になる前から続いてる事で、彼女曰く、俺の部屋は綺麗で落ち着くんだそうだ。
ハァ??
テメェの部屋をちゃんと片付ければ落ち着く空間になるだろうが?

「せきをしてもひとり≠チて寂しくない??」

しかも彼女はそんな事を言ってくすりと笑えば、任務後に俺の部屋に上がり込んで、寛ぐ、寝る、勝手に台所や厠を使う、挙げ句の果てに隠していたおはぎを探し当てて食う…と散々身勝手に振る舞って次の任務へと赴いていくのだから本当にとんだ厄介者でしかない。

『カァ〜!さくらノ任務完了!任務完了ォ!』

ソロソロヤッテクルゾォ?

そしてついには俺の鎹鴉がそんな報告をしてくるようになっている。
…おいおい、正気か?
俺はくつくつ嗤う鴉をきつく睨め付ければ、おはぎの入った重箱を棚の隅へと置いてその前に本を重ねた。


「…」


しかし驚いたことに、待てど暮らせどさくらが現れる様子がなかった。
俺は縁側で胡座をかきながら苛々と頭を掻く。
奴が重傷を負ったという報告は無かったのに、何故だ??
…。
…と、そんなことを考えている自分に更に苛ついた。
しかし任務の後は必ずと言っていいほどここに来ていた人間が現れないのは少々気持ちが悪いのが事実で。
かなり癪だが様子でも見に…、いや、少し散策にでも行くことにしよう。
俺はやれやれと立ち上がると草履を履いて家を出た。





「わああ〜、炭治郎くんありがとう」
「いえいえ!これくらいお安いご用ですよ!俺、掃除が得意なんです」

今日も今日とて片付く予感のしない我が部屋にため息をついていると、側にいた後輩の男の子が何か悩み事ですか?と首を傾げた。澄んだ目をぱちぱちと瞬かせながら。
そんな彼に、実はねぇ…と恥ずかしながら自分の欠点を話してみれば、何と、彼は掃除の手伝いを申し出てくるので驚いた。
いやいや別にいいのよと断ったのだがその子は頑なに家に上げてくれと懇願し続けた。
なので試しにその子を家に放り込んでみればあれよあれよと掃除が進み、我が部屋はチリひとつ落ちていない空間へと生まれ変わったのである。
すごい!
嗚呼!竈門炭治郎君!
この喜びはありがとう以上の言葉では言い表せられない!!
語彙力が足りないわ!
なのでぎゅう、と彼の身体を抱き寄せてよしよしと頭を撫でた。
すると途端に身を竦ませ顔をほのかに赤くするので、彼を愛でたい欲が更に掻き立てられた。
ギュウウ!
ああ、かわいや!

「ひゃっ!さくらさ、ッッ!」
「炭治郎くーん!ありがとうねぇー!嬉しい!これで久しぶりに我が家で休めるよ!」
「えっ?!じゃあさくらさん、いつもどこにいるんですか??」
「うふふっ!内緒〜」

彼の素朴な疑問をはぐらかしていると、なら俺毎日掃除しに行きましょうか?、だなんて何とも頼もしい提案をしてくれるので益々可愛い奴めと思ってしまった。
どこぞの目つきも口も悪い男とは大違いだわ。
「…!あ、不死川」
…と、そんなことを考えていたら偶然にも茂みの向こう側に見慣れた男の鋭い眼差しを見つけた。
いつもながらの怖い顔が一段と凄みを増している気がするが、何故??


「竈門ォオ…」
「うわッッ!!し、不死川さんッッ!」