超短編!(令和〜) | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
期待を裏切る幼馴染

ある日、仕事場にて。こちらに向かって走って来る人が雨で濡れたガラス越しに見えた。ツンツン立った赤い髪に、お世辞にも柔和とは言えないいかつい顔。ヘビーな革ジャン。あ。この人不良だ。そして私の幼馴染のキッドだ。アイツ喧嘩したな?怪我したんだな。…そう思った。だから私は自動ドアが開くなり、入ってきたキッドに対して「ここは動物病院ですけど?」と言っていた。そしたらすぐに「アァん!?何言ってんだテメェ!」と睨まれた。じゃあ何しに来たの?

「さっき道端で見つけちまって…。雨に濡れて弱ってんだよ、助けてやってくれ」
「わ!子猫!!!」

見た目不良の我が幼馴染よ、雨の日に捨て猫を拾ってしまう、だなんて漫画やドラマじゃん!と言いながらキッドから子猫を受け取ると、明らかに衰弱しているので慌てて先生(私の祖父)を呼んだ。「うるせえ!さっさとどうにかしろ!!」。処置の間キッドはずっと心配そうに受付前をウロウロしていた。
応急処置を施したあと、一日病院で様子を見る、と伝えればキッドは強張った顔でわかった、と言って去っていった。キッドをよく知る祖父は、あの子は昔から優しいねぇ、とくすくす笑いながら呟いたので、あの見た目でね、と私も笑いながらそれに返した。そして翌日猫ちゃんは無事に回復。病院を開ければすぐに現れたキッド。そんな彼はきちんと診察料を持ってきていたので私は「料金踏み倒すかと思った!」と茶化してしまった。「はぁ?!お金払うのは当たり前だろうが?!」。…こやつは本当に見た目とやる事のギャップがすごい。

「じゃ、里親募集の張り紙を置く?」
「いや。何で手放す流れになってんだよ。飼うし。おれが」
「えっ!大丈夫なの??」
「…お前、マジで昨日から失礼だな」

ちゃん最後まで育てるって覚悟してらぁ!と息巻いたキッドに私はだよね、と微笑んだ。昔から私と一緒に祖父の仕事を間近で見てきた彼が動物の命を大切にするのは分かりきっていたことなのだ。見た目は強面の不良だけど!

その後、私はたまたまホームセンターでキッドと会った。真剣な目をして猫グッズを見ている彼の場所とのミスマッチぶりに、猫ちゃんの可愛さぶりを熱弁してくる姿に思わず笑った。

「名前何にしたのー?」
「おう。偉大な音楽家の名前にしたぜ」
「シド・ヴィシャス?」
「はぁ?!お前、そんなのラフマニノフに決まってんだろーが!」

…だなんて。
おお、我が幼馴染よ。やっぱり君は最後までこちらの期待をいい方向に裏切ってくるねえ。全く、おもしろい。


prev / BACK / next