超短編!(令和〜) | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
欲しくなる

「こいつエマ!おれの妹だ!どうだ??可愛いだろー!」

私の兄、サボ兄は、昔から私をやたらかわいがっていて、友達が家を訪ねた際には必ず私を紹介した。
小さい頃は兄の友達とそのまま一緒に遊びたいが故に紹介してくれることを喜んだが、ある程度の年齢になるとそんな兄のシスコンぶりが恥ずかしくて、「ちょっと顔出せ」と言われれば逃げ出したくなる。

「サボ兄、私宿題やってるから…」
「まあまあ。新しいダチにお前見せてぇんだ!来いって」

でも残念ながら私もどちらかというとブラコンで、サボ兄に笑顔で手招きされるとホイホイついて行ってしまうのが現実。
だからそのままサボ兄の部屋の中に入ってみると、確かに今まで顔を合わせたことのない男の人がひとりいた。
外ハネした黒髪にそばかすの目立つその人は、私と目が合うとニカッと大きな笑顔を見せてきた。

「おー!そいつがいつもサボが自慢してくる妹か!」
「そうだ!どうだ?可愛いだろー?」
「へへっ!お前ホント、シスコンだな」
「…」

その人はエースさんと言うそうだ。
サボ兄のクラスメイトだと告げ、彼は自身の手を差し出してきた。
握った手は温かくて、太陽みたいな笑顔が印象的な人だった。

「よろしくな!」
「よろしくお願いします」



そしてエースさんはその日からよくうちに遊びに来るようになった。どうやらサボ兄と気が合うらしい。
その度にサボ兄は私をほぼ強引に部屋へ連れ込み、私への溺愛ぶりをエースさんに見せつけていた。
多分エースさんは呆れただろうし、迷惑だっただろう。
…でも私は迷惑なんかじゃなく、むしろ、幸せだった。

「そんなんじゃエマちゃん、彼氏も作れねぇぞ」
「はぁ?!んなもん作らせねぇよ。おれが阻止する」
「えぇー?面倒な兄貴だなぁお前」
「…」

そう言ってハハッと笑うエースさんの事を、私はいつしか好きになってしまっていたので。





「あれ?サボは?」
「買い物行ってたから、あと少しで帰ってくるかな?」

自宅の玄関を開けた先にいたエースさんは、私を見るなりニッと笑うと「そっか!」、そう言って家へと入り靴を脱いだ。
脱いで、家へ上がってきて、
そして…

「なら今のうちにキスしようぜ」
「え?ちょ、ーーッん」
「へへっ」

エースさんは私の顎を指先ですくい上げれば忙しげに唇を合わせ、くつり、楽しそうに笑った。

「も、もう。せっかちなんだから」
「いいじゃん。サボいねぇんだし」
「だからって…」
「戻ってきたらできねぇだろ??」
「…うん」
「ならもう1回」
「…ん」

そして私たちは唇を重ね…

「好きだよ、エマ」
「私もエースさんが大好き」

ぎゅ、とお互いを抱きしめあった。
…。
…というわけなのです。
何とこれが、今現在の私とエースさんの関係なのです。


私はいつしかエースさんを好きになっていたのであるが、何と嬉しいことにエースさんも私を好きになってくれていた。
とある日、サボ兄の目を盗んで告白された時は本当に舞い上がるほどに嬉しかったっけ。
その日から私たちはサボ兄に隠れ、こっそりと付き合っている。

「まだバレてねえのか?」
「うん。バレてない」
「あいつ案外ニブイのな」
「そうかも」

しかし、本当にバレたら果たしてどうなるのだろうか??
それは私にも全く見当がつかなかった。
何せサボ兄の私への執着ぶりは両親も呆れるほどなのだ。
そういえば昔、私を好きになってくれた近所の男の子を追いかけて追い詰めて、殴って泣かせたこともあったっけ…。
大丈夫かな??

「エースさん、逃げ足は速い??」
「?別に逃げねえよ」

エースさんは頼もしく、そう言った。



ちなみに、エースさんに言わせればこの状況は100%サボ兄が悪いんだそうだ。曰く、真に大切な物は人目に晒さず隠しておくべし。

「だってあんなに見せびらかされちゃあ、そりゃ、欲しくなるだろ?」

エースさんはそう言うと、俺のモノ、とでも言うようにまた私の唇にキスをして笑った。


/ BACK / next