超短編!(令和〜) | ナノ
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海で手を繋いであげるね

*みんな同い年


毎年恒例なんだそうだ。
夏にクラス内外の友達を集めて海に遊びにいくというその企画は、サボ君、ルフィ君、エース君の3人がメインとなって夏休み前に計画されるらしい。
この3人組が声をかけたら学年の半分は参加しちゃうんじゃないの??
今年からこの高校に編入し、まだ4ヶ月程度しか彼らを知らない私でもその話を聞いたらそう思ってしまった。
とにかく、あの3人は学校で1番の人気者なのだもの。

今回3人の中で1番リーダーシップをとっているのはサボ君みたいで、放課後彼はホワイトボードに日時の候補を何個か書き出してああだこうだと言っていた。
今私はそれを端っこで眺めているんだけど、何か問題でもあるのかどうにも進行が悪いようだった。
よく見てみるとニコニコ楽しそうなルフィ君の側にいるエース君の顔が曇っていて、彼は色々言っているサボ君の話し全部に首を横に振っていた。どうしたのかな?そう思っていると、ついにエース君が大きな声を出し、室内はどよめいた。

「おれは海に行かねえ!」



その後ナミちゃんやビビちゃんに聞いたのだけど、何と、エース君は泳げないんだそうだ。ちなみにルフィ君も。
それでも彼らは楽しいから、という理由で毎年海へ行っていたらしい。エース君とルフィ君は泳ぎはせず砂浜で遊び、それで終わるんだとか。

「じゃあ何で今年は行きたくないのかな」
素朴な疑問としてそう聞くと、「さあー?」、それはナミちゃんにもわからないらしくて首をひねっていた。

しかし、恒例行事だから、ということもあってかサボ君はエース君抜きで話を進めついに日にちと場所が決まった。
「お前も来るだろ?」
放課後の教室。ニシシと笑うルフィ君がそう誘ってくる。ルフィ君と私の間にいるエース君はずっと仏頂面である。
「えー、と」
「え?行かねえのか??!」
「…迷ってて」
私が曖昧に笑うと、机の下、ルフィ君の見えない位置で私の指先にエース君の指先がそっと絡んだ。絡まって、そして引っ張るようにするその焦れた仕草に、私は首を横に振った。
「水着姿見せらんないからやめとく」
「えーつまんねえ!」
ルフィ君は残念そうにそう言った。


私とエース君は、実は付き合っている。
編入してすぐ彼と知り合い、話してみたら気が合って、だからよく一緒にい続けていればあれよあれよと恋仲になった。
でもまだ付き合って1ヶ月程度。彼が泳げないだなんて初耳だったくらい、私はエース君について知らないところがまだまだあって。
「なんで行くの嫌なの??」
学校からの帰り道エース君にそう聞いてみるも、彼は真相らしきことは何も教えてくれなかった。
「だって泳げねえもん」
「でも前までは行ってたんでしょ??」
「あーもう!うるせえなあ!暑いしアイス食ってこーぜ」
エース君は私の手を強引に引いてコンビニへと向かった。



「おれが言ったこと、エースには内緒な」

サボ君が悪戯っぽい顔で私にその事≠教えてくれたのは次の日だ。
毎年恒例の海、その日はいつも最後に恒例の儀式≠ネるものを行うんだとか。

「今年こそ克服できるか?!ってやつで、最後は仲間みんなでエースとルフィを海の中へ連れ込んでるんだよ。あ、一応浮き輪付きでな。そん時大抵2人とも無理!死ぬ!って暴れて半泣きになるんだよねぇ。だからかな?今年はそんな顔お前に見られたくねぇんだろうよ」
くつり。
サボ君はその時のことを思い出しているのだろうか、おかしさを堪え切れないっていう顔をしていた。

半泣きのエース君、かあ。私は想像する。
「見てみたいかも」
私が呟くと、サボ君は目を見開いた。

「やっぱり私、海行く!エースも行こう!!」

ルフィ君の側に駆け寄ってそう言うと、エース君はギョッとした顔(そして青い)をしていた。
ルフィ君は「よっしゃあ!」、サボ君はそんな私を見てこっそりと笑っている。

「エースの彼女はS、だな」


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