超短編!(令和〜) | ナノ
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勝者触れなば、敗者は落ちんA

「このまま抱くけど」

本当は待つつもりだった。
エマの気持ちがおれへと完全に傾ききる、その時まで。
酔ったエマをただ部屋に運んでやって、少しだけ揶揄って、頬にでもキスを落として、好きだよと伝えて、その後は去るつもりだった。最初は。
でも、おれに支えられて歩いていたエマは一瞬この状況を理解し間違えたのかとろんとした顔と甘えた声で言ったのだ。

「ドラゴンさん、ありがと…ございます」

実に不愉快だった。
その瞬間、箍が外れる音がした。
あまりに子供じみた嫉妬だが、…もういいや、この際溺れることにする。
もう抑えないし、堪えない。

エマを抱え上げて部屋へ入り、ベッドへと乱暴に沈めておれは彼女の上に跨って顔を覗き込む。
今ここにいるのがおれだと気づいた事はその表情から読み取れたが、別にドラゴンさんと勘違いしていても構わなかった。

唇にキスを落とす。
エマは悔しそうに唇を噛んだ。…そんな風に見えた。
抵抗しようと思えばできるはずだ。
でもしない。
エマは楽になりたいんだろう。そう思った。
中々実らないこの恋はおれには辛い。
それならエマも当然、辛いはずだ。
だからされるがままなのだ。

酔っていたから、と。言い訳ならいくらでもすればいい。
今はただエマが欲しかった。
プツプツと服のボタンを外しても、…、やはり抵抗がない。
それにお前の潤んだ瞳を見ればおれは何もかもわかってしまう。
ほら、目は口ほどに物を言うというだろう?




だめ、やめて。
ううん。もっとキスして。
…だめだ。抵抗しないと。
でも耐えられない。しっかりと触れて欲しい…。
…、さっきからその繰り返し。

はだけて露わになった素肌に落ちてくるサボ君の唇が本当に気持ちよかった。
跨がられることで私に当たっているサボ君の硬いものに気付けば、これから起こることへの現実味が一気に増して心臓がドクドクと強く打った。
息が苦しい。身体が熱い。気恥ずかしさに顔を横に向けると、すぐに手を充てがわれてまっすぐ前を向かされ、目を合わせてくる。
「こっちを見ろ」
強い声がして、サボ君がまたキスをする。それは、ここにいるのは自分であると私に教え込むような貪るような強いキスだ。
ぬるり。
舌が唇を割って入り込んできた。
ぐちゅ、と唾液の絡む音がやけに大きく響いてぞくぞくする。
サボ君の手が優しく身体中を撫でまわせばじんわりと疼きはじめた中心に、「はぁ…」、思わずため息が漏れた。

気持ちがいい。もう負けた。…早く欲しい。
だから自らサボ君の舌に自分の舌をからめ、彼の背中に手を回した。
サボ君は顔を離すとそんな私にクス…と笑い、自身の服のボタンに手をかける。
そうすると鎖骨から下の筋肉質な肌が少しずつ見えていく。
それがどうしようもなく色っぽくて、私は次第に息を上げていた。


そして重なった彼の素肌は本当に熱かった。
あまりにも熱いから溶けてしまいそうだ。
私はそう思っていた。


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