超短編!(令和〜) | ナノ
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人生終了のお知らせ。

偶然遭遇した海賊船がまさかの四皇だなんて不運にも程がある。攻撃を受ければあっという間にこちらの船を沈められるし、その圧倒的な力の差に海兵は最早戦意喪失だし、死を覚悟している者なんて…ああ、全員だ。

甲板に集められ、座らされ、船の責任者である私は頭の目の前に投げ出された。そして言われた。
「おい、海兵。言い残すことはあるか?」
これは普通なら絶体絶命の場面である。でも私には切り札があった。自分の悪魔の実の能力を使う時は今しかない。だから私は震える唇をどうにか開き、皆に聞こえるようにこう告げた。

「今から…私がここのボスだ!」
「?!」

私の食べた実。ボスボスの実。
自分がボスだ、とそう告げれば今いる場のトップに君臨できるというその能力。正直、海軍にいるときは大御所達の手前、試してみたことはなかった。気が引けるし、何よりその後の皆さんの反応が怖いし。だから今回はある意味ぶっつけ本番だった。果たして効くのか??あー、効いてなかったら寝たふりして寝言ってことにしよう。いやその前に死ぬか。は、ははは。…笑えないや。そう思っていた、…ら。

「ボス。失礼しました」

何と目の前にいる四皇、赤髪のシャンクスがすぐさま剣を仕舞えば慇懃に礼をしてくる。ちなみにその隣にいるべックマンも、周りの手下どもも同様に。
「ボス!ご命令を!」
そして全員が低い姿勢でそう言ってくるのだから正直言ってこちらが焦った。
何とまあ。この能力が四皇であっても効くなんて。



「とりあえず、部下の縄を解け…いや、解いてください」

命令を!そう言って私の側に控える赤髪達に萎縮しつつも、囚われた部下の縄を解いてもらった。
あ、あとは負傷者の手当てお願いできますかね??「アイ、サー!」「おい!ボス待たしてんじゃねェ!」。怖い。すいませんすいません。できたら沈められた船の代わりを何か貰えませんかね??「アイ、サー!」「オラァ!テメェラさっさとしろ!」「ひーっ」。怖い!

赤髪海賊団の皆さんにはあまりにも迫力があるため私の口調は常に尻すぼみであったが、とりあえず能力により言うことは全部叶えてもらえた。逃げるための船も確保したし、あとは赤髪達は待機してろとでも命令して部下とともにスタコラサッサと逃げれば全部解決である。…でも。

「ボス、他にご命令は?」

にこり。私の側にいるシャンクスは眩しい笑顔と共に私にそう言ってくれる。立場が逆転してからと言うものの、彼は常に私の側に控え何をするにしても私の手助けをしてくれている。ドアを開けてくれたり、椅子から立ち上がる際には手を取ってくれたり、転びそうになった時には支えてくれたり…などなど。それをあの四皇が、である。あの、四皇が!
それが何だか気持ち良くて、今すぐこの場を立ち去りたい気持ちがありつつも、何となく去りづらかったりする。ああ!いかんいかん!私は海軍、相手は海賊。そもそも相容れない立ち場同士なのに何やってんだ私。今すぐここを…

「食事の用意ができたそうです。ご案内しても?」

シャンクスがヤソップからの伝言を聞いて、私にまた笑いかけてくれる。そして差し出される彼の手。食事なんてしてる場合じゃない。早く逃げるべき。100人中99人はそう思うだろう。…でも。こんな機会なんてきっともう2度とない。あー何迷ってんだいつ効果が切れるかもわからないのに。私は差し出しそうになった手をグッと握って引っ込めて、そして部下達を船に乗せるよう告げた。

部下全員が船に乗ったと確認した後、私はシャンクスに「全員待機!」、そう告げた。さようなら四皇!何気にちょっと楽しかった!そう思いながらレッドフォース号から飛び降りようとした…まさに、その時。

「まあ、待て」

チャキ。
私の首筋にヒヤリとした刃物の気配。
「そうだな。待てよ」
ガチャ。
そしてこめかみには拳銃。
一瞬にして下がる自身の体温に身体を震わせながら、恐る恐る目線だけを動かせば私の両隣にはにこにこ笑顔のシャンクスとベックマン。ただし、その笑顔はとてつもなく、邪悪である。


「下克上はできるみてぇだなァ。お前の能力」


そして告げられた台詞に、私は自身の人生の終わりを悟るしかなかった。





「さーて。色々と聞かせてもらうぜ?海軍の機密情報」
「部下は逃してやるから、洗いざらい吐け」
「ひゃ、ひゃい」
「にしても、なーんでさっさと逃げねぇのかねぇ?」
「首を取れるチャンスでもあったのになァ。馬鹿だなお前」
「…(ッハ!そうだよその通りだよ…)」
「今気づきましたってツラだな。おいおい本当にお馬鹿ちゃんだな!」

(その後は何だかんだでシャンクスに気に入られちゃうってことでハッピーエンド希望)


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