超短編!(令和〜) | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
誰にでもできる簡単なお仕事です。

誰にでもできる簡単なお仕事です。

朝起きると郵便受けに求人チラシが入っていた。よく聞く定型文と共に勤務時間や面接場所、連絡先が書かれているのだが、「ん?」、私は時給の項目に目を瞠った。高い。おかしいくらい高い。印刷ミス?そう思うくらい高い。あ、これ、ヤバい仕事だな。そう思って私はそれを捨てた。

あなたにしかできない簡単なお仕事です。

すると次の日、郵便受けに入っていたのはそう書かれたチラシだった。面接場所も連絡先も昨日のと恐らく一緒。あの時給じゃ騙されてでも飛びつく人が多そうなのに冷静な人間ばかりだったのかな。よく見ると勤務時間が少し短くなっていた。自由な時間もきちんと取れるよアピール?しかもチラシの片隅には手書きで「遊戯室で空手を教えてもらえます!」とも書いてあった。なんだそりゃ?捨てた。

本当にあなたが必要です!一緒に働こう!

翌日、チラシの文言はそう変わっていた。勤務時間、時給変わらず。空手のことも記載。増えていたのは「カリスマ性あるリーダーと愉快な仲間たちがあなたを待ってるよ!」。私はハァ、とため息をついてそれを捨てた。

ええい!これ以上は出せないぞ!この金額ならどうだー!一緒に働こー!切実に!

まさかの時給が1.5倍になった。そもそもが高いのに何ということだ。しかも3時にはおやつも出るらしい。捨てた。

お願い!私だけじゃ無理!助けて!

捨てた。たくさんのカラスが曲芸を披露します、は気になったけど。

もう限界!みんな泣いてる!あの人の身勝手さ知ってるでしょ??!ねえ!

捨てた。



ある日私を訪ねて来た人がいた。もはや手紙状態になっているチラシをたたみながらドアを開けると、そこにはドラゴンさんがいたので笑ってしまった。彼はかなり疲れた顔をしていた。
「すまないがまた戻って来てくれないか?」
「そうですね。そろそろコアラちゃん倒れそうだし」
私の言葉にドラゴンさんは心底安心した顔をした。どれだけ我儘放題してるの?あやつは。



「やだ。やーだやだやだ。おれはあいつの作った書類じゃなきゃ読まねえ!ん?おい、これ片付けたの誰だ?お前か?場所が違う!やり直せ!ああクソ肩が凝った!……って、あああエマ〜〜?!!!お前帰って来てくれたのか!!何だもう!待ちくたびれたぞ!」
「エマさんっ!うわああん良かったあ!」

プンプン怒ってるサボの隣でコアラちゃんは半泣きだった。前から色々と身勝手なパートナーで、そこに嫌気がさしてここを辞めたわけだけど可愛い後輩を救うためにもまた頑張るか。
私がサボの両肩に手を当てて揉み解せば、「へへっ。ありがとな」、サボは嬉しそうにおとなしくなった。


prev / BACK / next