超短編!(令和〜) | ナノ
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そして世界は薔薇色になった

社会人になった兄が家を出ることになったので引越しを手伝った。新しい家は他人とのルームシェアになるけれど、会社は近いし家賃も破格で兄は喜んでいた。
引越し当日、兄が足りないものを買いに行くと言うので「じゃあ部屋で荷解きしとくね」と私は告げ、マンションの一室のドアのチャイムを押した。出てきたのはローだった。

「お邪魔します。今日から兄がお世話になります」
「ああ。まあ、あがれよ」

ローは大学の友達だ。学部は違うけれど、仲はいい。以前ローと一緒にいる時に、兄が引越し先を探しているという話をなんとなしにしてみれば自分の家の部屋が余っていることを教えてくれた。当時ローは自分の親代わりになる人と二人で住んでいたそうだが、その親代わりさんはかなり手のかかる大人らしくて(どういうことだろう??)、もう一人くらい面倒みてくれる人がいれば嬉しい、とのことだった。ローにはその前には兄の就職先の相談にものってもらっているし、(そして親代わりさんが働く会社にインターンさせてもらうことになり、社長に気に入られた挙句に就職した!)本当に感謝しきれない存在である。

部屋に上がらせてもらうと、広いリビングがあってそこには親代わりさんがいた。ずっと存在は知っていたけれど、会うのは初めてなので緊張した。椅子に座っていても背が高いとわかるその人はローに声をかけられればゆらりと立ち上がる。そしてゆっくりと振り返れば私ににっこりと微笑んだ。…。……。

「あ、あの…私…は」
「エマちゃん、だろう?ローから聞いてる。おれはロシナンテ。よろしくな」

あ…、あ…。
彼の顔を見た瞬間、目が合った瞬間、何と言っていいかわからずただ顔が熱くなった。
ロシナンテさんの目を見つめ続けることも急にできなくなって思わず目を伏せ、ドクンドクンと騒ぎ始めた心臓に慌てる。差し出された彼の手をとるのも一苦労だった。こ、これは…一目ぼれ??

「いやあ、君のお兄ちゃんには本当に助かってるんだ。おれも同じ仕事場なんだけど、おれドジばっかだからいつも兄貴に怒られてて、あ、兄貴って社長のドフラミンゴのことなんだけど、でも最近はおれの代わりに君のお兄ちゃんがテキパキやってくれるから有難いよ」
「そそ、そうなんですか、そ、それはよかった、です!」
「しかも今日からここに住んでくれるし。おれ、頼りきってしまうなぁ」

その嬉しそうな表情が眩しくて直視できない。何を話せばいいのかわからない。ロシナンテさんを前にただひたすらどぎまぎしていると、自室に行っていたローが本を片手に戻ってきたのでホッとした。

「ほら、これ。言ってた本。貸してやる」
「あ、ありがと」
「気に入ったら続きもあるし、…まあ、なんだ。いるなら取りに来いよ」
「え!ここに??来てもいいの??」
「お、おう…。お前の兄貴もいるんだし、いつでも来ればいい」
「う、うん。そうするね」

本を受け取りながら、その申し出に心がキューッとなった。時々疎ましい存在だった兄だが今日からは尊敬することにする。ロシナンテさんにまた会えるんだ、と考えると頭の中が虹色になった。そして隣にいるローは何でだか小さくガッツポーズしている。


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