ワンピ短編 | ナノ
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街中のウラバンナ

その話は、昔ローと一緒になって読んだワノ国についての本に書いてあったからお互いに知っていた。
とある時期になると死者が現世に戻ってくるというその話。その当時は不思議な話だね!って言い合って、その後は頭のどこか片隅に知識として置いてあるだけで、ほとんど引用することのない代物だった。

「…けれど今。私はその話しが本当だと言えそうな時が来た…と言いたいね」
「…ああ」

とある町で。私とローは二人して道を歩いていた。そして今は例のその時期だった。私はその光景を見て思わずその話をローへと語る。ローもまた、同じくその事について思い出していたところだったらしい。一緒になってソレを見つめながら、うーん、と二人して妙な空気に包まれたみたいになっていた。


「ってか、何でだ?」
「…姿かたちは…ホラ。生前と同じではない場合があるって書いてあったじゃん」
「…まぁな。…で、アレか」
「…そうみたい…だね。ほら、だってずっとこっち見てるし、さっきは…」
「…」
「ロー?」
「…」


ローは…泣いているようだった。
突然に帽子を深く下げて、顔を半分以上隠しているのだもの。
だから私はそれに気が付かないふりをして、その場にしゃがみこんで「おいで…」と手を伸ばしてみた。

小さな子犬はワンと鳴いて、そしてタタタっと駆け寄り、そしてその途中派手にずっこけた。さっきも私たちを追いかけながら何もない所で転んでいたね。
「ッ…」
私は笑いそうになって、でもすぐに溢れそうになった涙のせいで顔がくしゃりと歪んでしまった。

ハートのブチ模様がひとつ入っているその子犬は、まるで照れたような顔をして起き上がり、私の傍までやってくると差し出した手をペロリと舐めてしっぽを振った。まるで笑っているみたいだった。


「連れて行く?」


私がそう聞くと、ローはグス…と誤魔化すように背を向けつつ鼻をすするも、すぐに私へと向き直って言った。


「逆に聞くが…、置いていけるのか?お前は」
「行けないね」


例えその期間を過ぎて、このワンコがドジじゃない普通のワンコに戻っていったとしても…。私たちはこのブチ模様がある限り、少しでもあの人をその身に宿したという事実がある限り、この子犬を手放すことはできないだろう。


「名前決めるのにケンカしなくてすむね」
「…ああ。お前のセンスは理解できねえからなぁ」
「何それ!もう!!ローってば酷い!さっき泣いてたくせに!カッコ悪!!」
「うるせぇな!泣いてねえよ!」
「なーいーてーまーしーたー!!」


ワン!


すると、まるで仲裁するようにして子犬が笑顔で鳴いた。



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