ワンピ短編 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
コーヒーをいれましょうか?


大学の研究室の中で雑誌を読んでいると、向かい側にやってきて座っていたローが突然に「コーヒー飲むか?」と言ってきたので驚いて顔をあげた。

「入れてくれるの?」
「ああ…。ちょうど…飲みたいと思ったから」
「インスタントはヤだよ?ドリップしたやつ入れてくれんの?ローが?」
「ああ。入れてやる」
「やった!サンキュー!」

めんどくさがり屋のローにしては珍しく豆を挽くところからやってくれるというのでわーいと破顔して、そしてまた雑誌に目を落とした。ガリガリ。静かな部屋にミルの音が響き、狭い部屋の中いっぱいに芳ばしいコーヒーの匂いが満たされて思わず鼻がひくひくなった。すると、ローが唐突に言った。
「俺らより年下のやつって…誰がいた?」
「え?」
私はそんな質問をする意味がわからなくて、雑誌から顔をあげつつきょとんとするも、ローがこちらをじっと見つめて返答を待っているようなので「えーと…」と、両目を斜め上の天井へと運んで遊び仲間のことを思い出してみた。

「ルフィとか」
「…他には?」
「んーと。あとはゾロとサンジとウソップとナミちゃんよね。あとはー、たしぎちゃんとかビビちゃんとか。あ!エース君とサボ君とコアラちゃんもだね。あとはバルトロメオ君もだ。割といるね。私たちってあいつらの中じゃ年上に属するんだ」
「そ、そうか」
「あ!あとはそうそう。キッド!あいつもそういえば年下だ」

シュンシュンお湯が沸く音がしてきた中、そういえば全然そうは見えないけどあのいかつい赤い髪の男もまた自分より年下だったなぁと気付いて、思わずクスリと笑ってしまった。そしてもう一つ気がついたことがあったので思わず声をあげた。「そうだ!キッドにメール返さなきゃ、だったわ。…って、電話のが早いか」。私は携帯を持ってガタリと席を立った。

「おい。何故外に行く」
「え?だって、この部屋狭いし電話したらうるさいでしょ?」

すると、部屋を出ようとした私に何故か鋭い声でローがそう言った。「別に気にしねえよ」。その声が苛々していたので「えー?」と訳がわからないままとりあえず元の席に戻って座り直した。携帯を机に置く。するとローは言った。


「おい。何故かけねえ?」
「え?いや…、後でかけようかと思って…」
「今かけたらいいじゃねえか」
「…じゃあ」
「だから何で外へ行こうとするんだ!それにもうすぐコーヒー入るぞ!」
「はぁ…」


ローが始終苛々としている意味が全くわからなくて、間の抜けた声しか出せなかった。でも確かにコポコポとドリッパーにお湯を落とす音がすると共に、更にいい匂いが周りに漂い始めたのでとりあえず部屋にいるか。
だから私は電話はやめて雑誌の続きを読むことにした。今週号の記事は中々に興味深いのだ。すると強い…強すぎる射抜くような視線を感じたので顔をあげるとローがこちらをものすごい顔して睨みつけるようにしている。「な、なに?怖いんですけど…」。私がそう聞くと、ローはコーヒーの入ったマグカップをガンっとテーブルに置きながら言った。


「何なんだよその本」
「別に…単なる週刊誌だけど」


ローが本を険しい目で見つめているのでそう言い返すと、「そうかよ」…と何の気なしに言いつつも「何でンなもん読むんだよ」と一人でぶりぶり怒っている。私は表紙をちらりと見た。そこで、ああ…と気が付いた。それで聞いてきたの?周りにいる年下人間を。私が今気になって読んでるのはこのメイン特集ページじゃないんだけどね。…でも、なんだかおもしろそうだからもう少し黙ってみよう。


私は再び熱心に、前よりさらに熱心そうにその本を読み始めてみた。
『特集!年下男を上手に落とすテクニック!』…という雑誌を。
私が気になったのは、そのでかでかと書かれた見出しの側にひっそりと書いてある『1日10分!楽やせ体操でマイナス3キロ!』なんだけどね。笑。


「おい。キッドの野郎に電話かけねえのかよ」
「うん。ローのいない時にかける」
「ッ!」


その言葉にあからさまに焦り顔を浮かべたロー。私は雑誌で顔を隠しつつ思い切り声を出さずに笑ってやった。
そして誰かさんが雑念と共に入れてくれたコーヒーが意外にもものすごくおいしい。


prev index next