ワンピ短編 | ナノ
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放課後

終業式が終わって、クラスメイトも帰ってしまった静かな教室。
窓からぬるい7月の風が吹いてくる中、じんわりと浮かぶ汗にぐへーってなりながら日直の仕事である日誌を一学期最後という事で今日ばかりは丁寧に書いている。
ガララッ
すると、驚いたことに教室のドアが威勢よく開いて、そこから入ってくる人間が一人。あ、トラファルガー君だ。

「いたのか」

だなんて、低い声でそう言う。「忘れ物?」。突然目が合ってしまった事にどぎまぎしながらも平静を装って何でもなさそうに言ってみた。不意打ちとかマジ勘弁!帰ったとばかり思ってたのに…!しかも教室で二人きり。更に汗がにじみ出る気がした。

「ダチを待ってる」
「そっか」

そう言いながら、トラファルガー君は私の座る席からひとつ離れた場所の椅子を引いてどかんと座った。その目は黒板のほうをじ…と見つめていた。彼もまた、じんわりと汗をかいているようだった。またぬるい風が吹いた。


「…明日から夏休みだな」
「そうだね」
「…どっか行ったりするのか?」
「ナミちゃんと買い物とかの約束はしてる。そのくらいかなー。あ、あとはおばあちゃん家に行ったりとか。トラファルガー君は?」
「…何もねぇな」
「あはは」

日誌を書く手が止まってしまった。
書き終えたくなかった。
けど、そのままだと不自然すぎるだろうからゆっくりと続きを書いた。でも、もうほとんど書き終えちゃったから…あと少しで終わってしまう。

「暑いね」
「…そうだな」

汗がつーっと、ついにこめかみから落ちてきたのであわててハンカチでぬぐった。何となく恥ずかしい。顔がどんどん熱くなっていく。これ以上は限界かも。

「お友達来ないね」
「…ああ」

明日からしばらく会えないのかぁ…。
そう思うと悲しくなったので、思い切ってトラファルガー君のほうに顔を向けてそう言ってみた。
夏休み中補修もあるけど、彼は成績上位クラスの参加となるから教室が別になる。その事も後押しした。
きちんと見ておかないと…この一か月半で私は彼の顔を忘れてしまいそうだから。
そのくらい、日々私は彼をまともに凝視できない。


トラファルガー君の顔にも汗が流れ落ちていた。それを乱暴にぬぐう腕。どきんとした。でも目をそらさずに見つめ続けた。
さようなら。トラファルガー君。また、夏休み明けに会おうね。


「花火…」


心の中でそう告げていると、しん…と静かな教室で彼の唇がふいに動いた。そしてこぼれる、小さな言葉。え?私は思わず聞き返す。


「なに?」
「……花火……行かねぇ?」


彼の目はずっと黒板に向いている。
また汗がこぼれおちている。
ほのかに染まった、彼の頬。
彼もまた暑くて熱くてたまらないようだった。



夏休みが…、始まる。

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