ワンピ短編 | ナノ
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ローとネクタイ

ローが突然にネクタイが結べない…と拗ねた声で言いだすので私は少し唖然とした。
完璧をそのまま人間にしたような人だとそう思っていたのに、まさかそんな弱点があったなんて…ね。私が思わず苦笑すると、ローはむすっとした顔で無言のままネクタイを突きだした。

「医者は…、外科医は手先が器用なんじゃなかったっけ?」
「それとこれとは別だ…」

そう問えば怒ったような口調になったので、これ以上は刺激しないでおこうと私は口をつぐんで彼の差し出したストライプ柄のネクタイを受け取った。

「人に結んであげるのって…したことないからできないや」

受け取りながら、そう思ったので自分の首にそのネクタイを回した。「途中まで作ったのをあげるよ」…とそう言うと、ローはは?とそれがまるで愚問みたいな声をあげた。

「後ろから結んでくれよ」
「何で?」
「…興奮するだろ?」
「やめてよ…。そういう変態発言」
「いいからやれって」
「遠慮したいです」
「やれよ」
「やだ」


そう押し問答していると、ローが有無を言わせんばかりに私の首からネクタイをとって自分にかけて背を向けた。白のワイシャツが眩しい。「ほら」…と声すらかけるので、最後の抵抗みたいに「背が高すぎて届かない」と言えば、「なら工夫しろよ」と言いつつも椅子に座ってくれた。

ため息を吐きながら、その痩せているのに広い背中に身体を近づける。
そっと彼の背後から両手を前へと回すと、フ…とローの満足げな息遣いが聞こえた。


「病み付きになるな…。胸があたっていい気分だ」
「妙なこと言わないで…」
「早くしてくれ。遅刻するだろ?」
「なら黙って」
「…」
「動くのも触るのもなし」

ネクタイを締める作業をする私の手に唇をあてる彼にそう告げる。…と、ガリ…と歯で甘噛みされた。ずきり…と小さく痺れるような甘い痛みが広がる。全身にまで広がりそうなその痺れをどうにかやり過ごしながら手を動かした。ローの顔はずっと小さく笑っている。


「はい、できたよ。最後の仕上げは自分でやってね」
「最後までリコがやれよ」
「もう…」

立ち上がって前を向き、やはりわがまま発言をされる。なので仕方なく結び目を整えながら小剣を引っ張ると、キュ…という布の擦れる音と共に、ワイシャツネクタイ姿の完璧な外科医様ができあがった。うんバッチリ。ローもその出来栄えに満足そうにしながらネクタイに触れた。

「毎朝してもらおうかな」
「てか、覚えなさいよ…」
「俺に命令するな」

…と、やはり最後の最後まで俺様発言。
なので、お礼くらい言ったら??…と、結んであげたネクタイを掴んで引っ張っると、そんなに大した力で引いたわけでもないのにローの顔がずい…と近づいてチュ…と不意打ちのキスが降る。
キスする瞬間、彼はニヤリと笑っていた。彼はそして上着を着込んだ。


「行ってくる」
「行ってらっしゃい。今夜は早くなる?それとも遅い?」
「早く帰る。…初日だからな」


ローはそう言って、もう一度キスを降らせると、至近距離のままニィ…とまた笑った。


二人の生活の最初の日。
こんな朝が毎日続くのか…と思うと、悪くないような、面倒なような…。


そしてローはマンションのドアを開けながら言った。
私はだから少しだけ夜が待ち遠しくなった。もちろんそんな態度は彼に今は見せないようにしたけれど。


「ネクタイ解くのもリコにやってもらおうかな」
「興奮するから?」
「あぁ」
「ならまた後ろからやってあげるよ」
「そりゃ楽しみだ」

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