超短編!〜平成 | ナノ
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先生と未来の生徒

とある日の夕方、目の前に座っているロー君がいきなり私に向かって抗議をしてきた。

「わかんねぇんだけど」
「なに?」
「ドフラミンゴはお前もおれの先生≠セって言ってた。でもお前はまだおれに何も教えてくれてねぇ。何でだよ」

ロー君は不貞腐れた声でそう言った。なので私は思わずそれに苦笑しつつ、「ああ…」と小さくうなってみせた。
私はそのままくしゃりと強めにロー君の頭をかきまわす。

「それはね。まだ時期が早いから、よ」
「どういうことだ?」
「うふふ。言葉通りなの。今はだめ、ってこと。若様のゴーサインが出たらすぐにでも教えてあげるね」
「ガキだからって馬鹿にすんなよ。おれにできねぇとでも思ってるのか?」
「そういうわけじゃなくてね」
「ならどうしてだよっ」

背を向けていたロー君は眉を盛大にひそめた顔をこちらへと向けながら私を責めた。
日々の鍛錬で増えていく傷たちは見ていて痛々しいが、幼いロー君の筋がとびきりよくて飲み込みも早い事は他のファミリー皆が口をそろえて言っている。でも、ね。こればかりは。

「もうちょっと大人になったらね」
「何だよそれ。意味わからねえ」
「まあまあ。はい、あっち向いてて」
「もうちょっとって、いつだよ」
「そうねぇ」

私はふふと笑いながら彼の頭を掻きまわしていた手をそっと抜き取ると、側に置いた桶を取り上げて中のお湯をロー君の頭からジャーっと流した。「うは!!」。すると不意打ちなせいで水でも入ったのかゴホゴホ咳こむロー君が濡れた顔を手でこすりながら慌てていた。近くにいるベビーちゃんがそれを見てけらけらと笑った。

「おいっ!急に水かけるなよ!!」
「あははっ!ロー、カワウソみたい!」
「うるせぇベビー!」
「ベビー。ちゃんと肩までお湯につかってね?100数えたの?」
「はーい。ごめんなさーい!いーち、にー…」

ファミリーのアジトにある大浴場のなか、ベビーちゃんの澄んだ声が響き渡った。
このあとはデリンジャーをお風呂に入れてあげなきゃね。
びしょびしょの髪をかきあげるロー君は納得できないのかぶすりとした不満顔のままだった。
私は言う。

「とりあえず、私と一緒にお風呂入ってる間は無理だねぇ」
「え??」
「ねえねえ!!みんなで一緒にぶくぶくーってしよー!はやくー」

私は一瞬目を丸くしたロー君にクス…と笑いながらベビーちゃんのいる湯船に向かって歩いた。
妖艶な微笑、と言われるこの笑顔をそういう♀エ情がまったくない瞳で見つめ返されるのも悪くない、と私は思った。




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