超短編!〜平成 | ナノ
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連休を満喫したい人。B

私は逃げていた。とにかく全速力で逃げていた。でも突然その行く手を阻むFBIっぽい人が現れた。まさかこのタイミング、しかもこんな場所で現れるとは思ってもみなかったので私は怯むしかなかった。

「待て。お前は逃げられねえぞ」

それはロー兄だった。
私はヒィイイーと声なき声で叫びつつその場にしりもちをつく。ロー兄は私に拳銃を向けニィと笑いながら「終わりだ」と告げた。あ、私詰んだな。

「危ねぇ!」

だが、そんな私を庇う人が後ろから躍り出る。一緒に逃げようとしていた仲間だった。ズガーン!「ッ!!」「うあああー!」。わりと重要なポジションに位置していたその人は銃弾に倒れあっけなく息絶えてしまう。…その人もロー兄だった。

「死んじゃったああ!」
「フン。馬鹿な奴だ…ってウワーーー!」

…と、そんな折に突然死角からゾンビが現れて拳銃を持つロー兄に齧り付いた。容赦ない咀嚼によりロー兄はあっという間にかみ砕かれる。ヒーー!アーメンアーメン!!私はパニックになりながらも落ちた拳銃を震える手で拾い上げてゾンビに銃口を向けた。ちなみにそのゾンビもロー兄である。

「近寄らないでー!!」
「ツギハオマエダー」
「ギャー」
「そこまでだ!これでも食らえクソゾンビが!!」
「んぁあ??!」

すると今度は医者っぽい人が現れてゾンビに注射器をぶっ刺した。「ギャアアー」。ゾンビあっけなく死亡!医者は私を見て小さく笑った。「ワクチンができた」。医者の恰好をしたロー兄はそう言いながら私にワクチンの詰まっているらしい袋を渡した。「これで助かるのね」「ああ。俺たちの努力の結晶だ」。でも、そう言い合っていると背後から急に手が伸びてきてその袋を奪い取る人がいた。一緒に逃げていた仲間のうちの一人だった。まあ、そいつもロー兄だったんだけど。

「これは俺がもらう。ご苦労だった。クックック」
「あんた仲間だったじゃん!」
「俺はハナからお前らを仲間だと思っちゃいねぇよ。コレを手に入れるための演技さ」
「裏切者ー!」
「じゃあな。もうお前らに用はねぇ……って…お前は…」
頭上を見上げる焦ったようなロー兄の顔。今度は何?!と思っていると轟音と共にヘリが登場した。そこからは静かに笑う偉そうな恰好をしたロー兄も登場する。ちなみにその手には爆弾を起爆させるためのスイッチが!!
「色々とご苦労だったな。だがもうお前は用済みだ。気づいてなかったのか、おめでたいやつめ。テメェは前々から俺に踊らされていたんだよ」
「おい!!契約と違うじゃねえか!!…大統領!」
「安定の黒幕が大統領!!」
「うるせえ。…ああ、そう言えば最後にひとつだけ教えておくべきことがあったよ。お前たちは、」
「…私たち、は?」
「人間ではない」
「ファ?!」
「精巧なアンドロイドだ。せいぜい博士を恨むといい」
「いきなり登場したその博士って誰?!」
「終わりだ」
「容赦ない!収拾がつかなくて打ち切る気でしょ?!わーーー!!!」
カチ!ドッカーーン!!!

…。

……。


「ーーーッッわああ!はーはー!!何だこの夢はぁ!!?」

バチッ!!
私が心臓をバクバクさせながら目を見開くようにして目覚めると、何だか全身がぐったり疲れている上にソファの上で寝ていたせいで節々が痛かった。
こんな奇妙すぎる夢を見た理由は床に散らばったレンタルDVDの山を見れば一目瞭然である。結局追加で借りてきた分も全部見てしまい、自分がいつ眠ったかなんて全く記憶になかった。
軽く痛む頭に手を当てながらため息をついて目を閉じ、明るい陽射しをまぶたに感じながらまた昼過ぎまで寝てしまった…と肩をすくめた。

「あー、夢の中で事件起こりすぎて寝てたはずなのに疲れちゃった。それに出てきた人間全部ロー兄だったし」
「そりゃいい夢を見たじゃねえか」
「どこがいい夢だ!ロー兄はおかしな夢見なかったの?さすがにDVDを10時間以上も見てたら…」
「俺は看護師姿のお前の膝枕で眠る夢を、」
「ぬあああ。ちっとも影響受けてない!しかもそんな夢に私を登場させるな!!!鳥肌!」
「見る夢は俺の自由だろ」

目を開けた先では頬杖をついて寝ころぶロー兄が笑いながら私を見降ろしていた。「水でも飲むか?」。その後ロー兄はそう言って寝ころんでいたソファから起き上がり、くああ…、小さく欠伸しながらテーブルの上のペットボトルに手を伸ばし私に寄越してくる。
「あ。ありがと」
ちょうど喉が渇いていたので私はありがたくそれを飲んだ。
ゴクゴクゴク…
「お前寝ぐせついてる。フフ。かわいいな」
ハー。水、美味しい。すごく美味しい。
それに喉が潤ったら何だか頭がさっきよりずっとシャンとしてきたわ。
「そういえばこんな風に2人で寝るのは久しぶりだな。ッフフフ。小学生の時以来だから…10年以上前か。あの時はお前の方から俺と一緒に寝るーとか言って寄って来てたよなあ。特に怖いテレビを見た後とかに。ああ、そうだ、次のDVDは思いっきりホラーなヤツにするか?そうすりゃまたこうやって…」
「…」

意識がはっきりしてきたところでこの状況をきっちり整理しよう。
そうか昨日崩れるようにして眠っちゃったからコイツ追い出す余裕もなかったのかしまったー最高にしくじったー寝ぼけてたせいもあるけど起きてコイツが隣にいることをナチュラルに受けいれて普通に話しかけたりなんかしちゃったよああもうどうしよう起きてしばらく経っちゃってるけどとりあえずここは拒絶の意を込めて叫んでおこうか多分もう遅いし何か言ってもコイツには少しの影響もないんだろうけどな…にしてもさっきからコイツニコニコウキウキツヤツヤしまくっててほんと気持ち悪い寝てる間に何かされてないよね私考えただけでホント気持ち悪いし吐きそうだし泣きたいよあああああ今日含めてあと2日お母さんたち帰ってこないだなんてこの現実のほうがマジで完璧なホラー。

「うわあああ!何でここにいるんだよ変態!!この家から出ていけ!!!」
「何言ってる今更なんだよ」


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