超短編!〜平成 | ナノ
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連休を満喫したい人。A

真夜中のリビングで私の声はまるで悲痛な叫びのように響き渡った。


「あ、ッ、だめ…だめ!!そこでやめないでっ!終わらせないでえ!!嫌ぁ!!だって、こんな中途半端なことされたら、私…ッんんーーーー!!」


でも、その願いも空しく画面がパッとエンドロールに切り替わったので私はテレビに向かって手を伸ばしながら「キャーーーーー!!」と思わず叫んでいた。見ていたDVDが終わってしまった!しかもかなりのいいところで、だ!
「んああああ!やだもう!どうなるの!?この後どうなるの!!だめだよー!気になるよーーー!」
私はイィイイイー!と歯を噛みしめながらクッションをボスボス叩いた。ついでに隣にいるロー兄もガスガス叩く。私と一緒になって画面に「あー!」と叫んでいたロー兄は、クソ…と舌打ちしながら盛大に眉を潜めて唸っていた。

「…ックソ!あそこでFBIが出てくるのは卑怯だろ」
「そうだよあんなのずるい!!皆一旦引っ込むしかないじゃん!!もぉおおおーーーーー!」
「アイツもまさかあそこで死んじまうとは!」
「ありえないよ何で!?あの人いないと続かないじゃん!ってか、どうしてDVD5枚しか借りてこなかったんだよロー兄!馬鹿ぁ!」
「わ、悪い。5枚で1000円だったからつい…」
「気になって寝れないじゃんか!あああ!私今から借りてくる!まだお店開いてるし!」
「お前もう夜中の2時過ぎだぞ?危ねぇだろうが。…俺が行ってきてやる」
「え?うそ!マジで!?ロー兄すきっ!!」
「仕方ねえだろ。ちょっと待ってろ。秒で帰ってくる」
「やったー!わーい!」

私はソファから立ち上がったロー兄を笑顔で見送る。
何で危険人物であるロー兄と一緒に我が家でDVDを見る展開になってんだろうトホホ…、なんてことは最早どうでもいいのだ!
DVD借りてきてやるからその間にご飯炊いておけ!としつこく言うロー兄→渋々それに従ったらその後帰宅した彼がすぐさま第一話を流し始めた→仕方がないから一緒に見る→すると、そのあまりにもおもしろすぎる展開に気づけば二人とも食い入るようにそれを見始めてしまう→なんと5枚全部立て続けに見てしまった→次がない!←イマココ。…という次第なのだ。
正直こんなことになるとは思ってもみなかった。おにぎりを握る時間も惜しいくらいだったので、炊きあがったご飯をお茶碗に入れ海苔をのせただけのものを渡してもロー兄は文句も言わず黙ってそれを食べるほどだったから、彼も相当このドラマにハマってしまったようだった。セクハラ発言をする余裕もないらしいし、素早く次を借りに行ってくれるほどだから人気海外ドラマ恐るべし、である!

「帰った」
「待ってた!!早くっ!もう待てない!!」
「焦んなよ」
「じらさないで!それ、ちょうだい!ねえってば!」
「…。そんな態度じゃあげられねえな」
「意地悪しないでえ!」
「お願い。それをください。…だろ?言えよ」
「お願い!それをください!」
「ククッ。仕様がねえな」
「早くー」
「ほら」
「んーーー♪♪って、ちょっと!」

差し出されたDVDに手を伸ばすと、しかし、それをひょいっと交わして頭上に持っていかれた。

「ロー兄!何でえ?」
「コレ、俺が入れてやろうか?それともお前が入れるか?」
「んん!?別にどっちでもいいけど、って、それよりも早くそれ頂戴ってば!!意地悪!」
「なあ、おねだりしてみろよ。コレがどうしても欲しいって」
「もーーーさっきから何よ!欲しい欲しいっ!今すぐ欲しい!どうしても欲しい!」
「ヘ、ヘヘ。そうか、欲しいか。嗚呼、もっと言ってみろ」
「もおお!欲しいんだってば!!」
「なら俺が入れてやるよ。ゆっくり、な」
「だめ早く入れてえ!」
「んっふふふ。ああ、入れてやるよ。希望通り、早く」
「?…ッッ!!ああッ!」

私は暫しのやりとりの後、彼の魂胆に気づいてハッとなる。
「ッ!!!ハァアア!?コノヤローー!お前、私に何言わせとんじゃーーー!このキモ野郎!!出てけっ!!」
前言撤回!!ロー兄の変態思想はやはり健在だった。
でも!そんなロー兄を追い出そうにも、奴の手には待ちに待ったDVDがしっかりと握られている。奴を追い出したらそれもなくなってしまうし、さすがにこの時間はもうレンタルショップも閉まっている。
ロー兄はそれらを全部わかっているからなのだろう、勝ち誇ったように意地悪く笑いながら私を見下ろして言った。
私はキイイイーーと拳を握りしめながら地団太を踏むしかない。

「いいのか?俺を追い出して。ん?」
「くぅううう!それだけ置いていってよ!!」
「ヤ、ダ」
「鬼ーーー」
「フフ。何とでも言え。じゃ、もう一度おねだりしてみような?できれば色っぽく、だ。上手に言えたらお前の欲しいものをくれてやる」
「んあーーー!この変態馬鹿ーー!」


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