超短編!〜平成 | ナノ
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ある平和な病院の哀れな医者の話@

吾輩は医者である。医者は医者でも心臓外科医である。名前はエマ。とある病院に勤めていて毎日忙しく働いている。
この病院は幸いにも映画やドラマにあるような面倒くさい上下関係や派閥やその激しい対立…なんていう事とは全く無縁で、且つ自分の腕前も周りに認めてもらえているので私はずいぶんと幸せな環境にいるのだと思う。手術も任せてもらえることが多く、割と院内で私という存在は目立っているようだ。
だからなのか私の手術メンバーには妙なチーム名が、そして私自身には変なあだ名がつけられちゃったりしている。それについてはちょっとだけ嫌な気持ちを抱くのであるが、気にしないようにする。だってたかが名前、だもの。
それよりも!今はとある症例について、チームを集めて術前カンファレスをするほうが大事である!
私は仲間がいる部屋のドアをバーンと大きな音をたてて開けながら、椅子に座っているうちの一人に向かって大声で言った。


「おいトラファルガー!手術、しようぜ!」
「出た!!エマ名物ナカジマ#ュ言!」
「…」


その言葉を耳にするなり盛大に眉をひそめたトラファルガーは、私を睨みつけながら大げさにため息を吐いて「またお前が執刀医かよ」と舌打ちした。
外科医としての経歴はトラファルガーと私は同じくらいなんだけれど、私は何と世間からスーパードクターと言われるくらいの腕前だったりする。
「しょーがないじゃん私のほうが腕がいいんだから。またあんたが第一助手やってね」
「…ムカツク」
「はーい!チーム・エマさん集合〜。カンファレンス始めまーす。さーて、来週の患者さんは〜??…云々」
「…こんな奴が俺よりも上だとは…」
トラファルガーは「あー、クソ!」と悪態をつきながらも、私がカルテを差し出すとそれを奪い取って顰め面のまま読み始めた。


私が手術で存分に実力が発揮できるのは、トラファルガーが横にいて常に私を完璧にアシストしてくれるからだ。
だからできればずっとトラファルガーには私の第一助手をやって欲しいんだけど、彼は上昇志向が高いからいつかきっと私の元を離れて行ってしまうのだろうか?

「いつかトラファルガーが私を追い越したらチーム・タイガーが別個にできちゃうのかな…」
「…」
「ま、できないか!そうしたら私ももっとレベルアップしてるだろうからあんたが私を追い越すことなんてないもんね」
「ハァ?!」
「なあイソノ!!俺たちずっと仲間でいような!」
「うるせえナカジマ!」
「だって私あんたとずっと一緒に手術したいもん」
「ああ、もう!さっさとカンファレンス始めろよ馬鹿」
「えー」
「…」

ずっと追い越せねえとか仲間とかふざけんじゃねえよ

そう言ってまた舌打ちをしたトラファルガーは再びカルテを怖いくらいに睨みつけ始め、チーム・エマさんのメンバーはそんな私たちを見てくすくすと笑った。




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