超短編!〜平成 | ナノ
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逆トリロビンと学校教師

ある日目覚めると超絶美人がキッチンの椅子に座ってお茶を飲んでいたので私は思わず叫んでしまいそうになった。
理解不能な事態に頭がうまく働かなくて彼女を凝視することしかできない私に、美人さんは「勝手にごめんなさいね」と優雅に笑ってそう言った。彼女によると自身も寝て起きて気づけばここに居た≠だそうだ。「こういうときは慌てず闇雲に動かないほうがいいのよ」。美人さんはそうも言ってフ…と小さく息をつきつつ再びカップを口に運んでいた。…いや、これはもっと動揺すべき事態ですし落ち着きすぎだと思います。…が、一向に取り乱しそうにないので私はのろのろとベッドから起きて身支度をし、家主であるのにこっちが「スイマセン失礼します…」と恐縮しながら向かいの椅子に座り、今や彼女とぽつぽつ話なんかしている。何となくだけれど、この人は悪い人ではなさそうだと感じたので。

「あなたは何者なのかしら?」
「あの、それ絶対私の台詞だと思うんですよね。…まあいいです。教師やってます」
「まあ。先生なのね。何を教えているの?」
「ほぼ全部ですよ。小学校勤務なので」
「全てを…。あなた…普通の子っぽいのに博識なのね。素晴らしいわ」
「いや!えっと!!すごくはないですよ!!あのあのあの!それが普通なんです!!それにガイドラインもありますし!!」

私の言葉に目を見開いた美人さん(ロビンさんというらしい)のその台詞に私はかーっと顔を赤く染めていた。例え相手がいきなり家に現れた怪しすぎる人物でしかなくても「美人」に褒められると何だか照れる。そしてロビンさんは部屋に積み重ねていた小学校の教科書に気づくとじーっとそれを興味深げに見つめ始めたので私はそれの一冊、算数の教科書を彼女に渡してあげた。ロビンさんは嬉しそうにそれを受け取ると中をパラパラとめくって読み始めたが、急にとあるページでぴたりとその手を止めてきれいな表情を少し固くした。え?どうしたのだろう??

「…これは…」
「どうかされました??」
「…この記述に出てくるたかし君とひろし君は…危険」
「えええ!?一体何を言って…」
「…普通の人間は一定の速度で歩き続けたり乗り物を走らせたりなんてできないわ。この二人、きっと特殊な訓練を受けてる」
「…ッ!(…もしかして歩いて家を出たたかし君を何分か後に自転車で追いかけるひろし君の問題のこと…??!!)」

う…!
私はその台詞に盛大に吹き出しそうになるも、対するロビンさんは至極真面目な顔をしていて決して冗談を言ってるわけではなさそうであった。だから私は必死で唇を噛んで爆笑しそうなのを堪えた。まさかのまさか。そんな話をされるとは思ってもみなかった。

そんなロビンさんはその後も歴史の教科書を見れば…
「記録に残っていない歴史にこそ真実はある」
って言ってみたり、国語の教科書を見れば…
「この子の気持ちを述べよ?他人にその人自身の本心なんて完璧に読み取れないわ」
とか言っている。まあ…確かにそうなんだけどね。

小学校にこんなことを言う生徒がいたら相手をするのが大変だなぁ…とそう思った。でも絶対に…一人はいるだろう。
私はしみじみとそう思いながら目の前に差し出されたロビンさんの入れてくれたお茶を苦笑いを浮かべながらすすった。
今日は日曜日。
はてさて、この後私は一体どうやってこの人と過ごそうか。





「まだまだ元の場所に帰れそうにないわね。お部屋を借りているお礼に何かあなたにしてあげられればいいのだけど…」
「別に気にしなくても…。ちなみにロビンさん、何か得意なことってあるんですか?」
「暗殺かしら」
「うぉえェエエ??!!い、今何と!??」
「フフッ。私の特技は暗殺よ。もし気に入らない相手がいれば言ってね」
「ヒー!!」
「でも相手がたかし君とひろし君なら……もしかしたら返り討ちにあうかもしれないわね」
「…(本気で言ってるのかなぁ…??)」


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