超短編!〜平成 | ナノ
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落ち込んでいる人。

突き刺すような寒さが身に凍みる1月1日の早朝。震えながら向かった先には何と誰もいなかった。…なので、何でよ!…と思いながら家のチャイムを鳴らせば家主が苦笑いを浮かべつつ中へと迎え入れてくれたのでその人物の部屋へと目指しドアをノックと共に開けてみた。
私を待ってくれているはずのロー兄、その人は頭の上まで布団を被って寝ておりしかも私が部屋の中へと侵入しても微動だにしない。だから私は盛大に呆れるしかなくて思わずロー兄を蹴っ飛ばしそうになってしまった。

「ちょっと待ってよ何でまだ寝てるの!?初詣行こうって言ってきたのはそっちだよね??」
「…」
「ロー兄!!すぐ起きてよ!!私せっかく準備したんだよ!」
「…嫌だ。あり得ねえんだ。初夢にお前が出てこなかった。信じられねえからもう一回寝る」
「ハァア?!!相変わらずキモッ!!あり得ないし信じられないのはその発想だからね!!」
「13年間毎年欠かさず夢に出てきていたのに…今年はどうしてなんだ……幸先が悪すぎる…俺は今年死ぬんだろうか……」
「13年間毎年って…。それを知った私のほうが幸先が悪いよ…。あああ、気分が悪くなってきた……吐きそうだよもう…」

私は途端にせり上がってきた吐き気をどうにかしながらロー兄がしっかり被っている布団を無理矢理に引っぺがしてベッドから彼を引きずり降ろした。

そしてその後どうにか身支度を終えさせ、近所の神社に暗い表情をしたロー兄を引っ張って連れていく。
たくさんの人混みにもまれながらもお賽銭を投げて願い事をし、その後おみくじを引いてみると私は半吉であった。その微妙な結果にふ…と小さく笑いながら隣のロー兄を見やると彼は自分のおみくじを見つめながら表情をさらに暗くしているので「悪かったの?」…と聞いてみた。もしかして凶でも引いたんだろうか?そうならば落ち込んでしまうだろう。

「…吉」
「なんだ。まあまあいいじゃん。私なんか半吉だよ?」
「…よくねぇよヤベェんだ。出産の部分が難産≠チてなってやがる…クソ…何なんだ今年は…」
「…ちょっと…ちょっと待ってよ、待ちやがれ変態馬鹿野郎。何でその部分にロー兄がショック受けてんの??ぜんっぜん関係ないよね男が出産なんて!!??」
「お前に負担をかけちまう…」
「ハァアア!!??もうっ!!何でそういう発想になるの!??相変わらずイカれてる!!あああ!!何で新年早々こんな気持ちにならなきゃならないのよ気持ち悪ッ!!やっぱりロー兄と初詣なんて行くんじゃなかった!!!!鳥肌が消えないっ!!」
「…あ。方角…北がいいとある。旅立ち…思い立ったが吉日、か。わかった。ちょっと北に行ってくる。それで厄払いしてくる…」
「あああーハイハイ!!!そのまま北極まで行ってしまえもう!!!そんでもってそこでシロクマに新年の挨拶でもしてもうこっちに帰ってこないで!!」
「シロクマ…。そうかシロクマか。…なあ、今から水族館行こう」
「えええ!もう…意味わからない…どうしてそういう話に急に……なるのかなもう…。疲れる……」
「お前シロクマ好きだろ?」
「好きだけどさ!!今そういう話してないよね?!」
「お前がシロクマ見て笑ってくれりゃいい厄払いになると思った」
「……」

…と。
そう言われた途端に全身の鳥肌がすーっと消えていき、しかも暖かいようなそうじゃないような、決して嫌じゃない妙な気持ちになってるんだからこのはす向かいの変人とはやっぱり今年も妙な付き合いが続いていくんだろうなぁ…って。

そんなことを不覚にも思ってしまった新年の最初の日。


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