超短編!〜平成 | ナノ
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会いたくない海賊がいます

船に鳴り響いた敵船遭遇のサイレンで甲板に躍り出た私は、その船の全貌を確認するや否やクルーに叫んだ。
「回避ーー!!全力で回避ーー!」
…が、その命令むなしく瞬時に伸びてきたモノ≠ノ私はあっけなくからめとられて気づけば敵船の甲板のど真ん中、人々に囲まれた状態になっていた。あああああ絶体絶命!!

「ひっさしぶりだなーーー!!なーんで逃げようとすんだよ!!せっかくなんだから顔見せてくれりゃいーのに!」
…とその船の船長。
身体に巻き付けた自身の腕をシュルルッと元の長さに戻しながらニカッと笑って屈託なくそう言う。私たち仲良しじゃない!
「よう元気か?ルフィの類似品」
ニヤニヤ。剣士は私を見るとそう言った。類似品って言うな!ちゃんと名前で呼んでよ!
「やだもう!相変わらず触り心地のいい肌ー♪」
サワサワ。航海士は私の腕をとると容赦なく触りまくっている。やめれー!
「本当ね。白いし羨ましいわ」
ナデナデ。考古学者もニコニコと微笑みながら同じく私の反対の腕に触れていた。お願いですお姉さん離してください。
「いい弾力だなぁ!!すげー気持ちいいなあ!!」
トナカイはでれーんとした顔で私に抱き着いている。そして和んでもいる。…これはちょっとカワイイんだよね。
「お前っ!なれなれしくレディに触ってんじゃねえよ!!!レディイイイん♪ここは乾燥地帯!保湿しないとひび割れるよぉおおおん」
ハートの目をしたコックはそう言って飲み物を持ってきてくれた。頼んでないし!…が、確かに皮膚がピリピリする感じはずっとあるので私には割と致命的だ。水分水分…。…って、そうじゃない!!

「だああ!!あんた達私から離れてっ!!船に戻せー!こっちは戦う気ないし慣れあう気もないっ!」
「いーじゃんかよー。なあなあ!おれとお前、どっちがいっぱい伸びるか勝負しようぜ!」
「んなもんやるか!どんな勝負だ!」
「やってみりゃいいじゃねえか類似品」
「黙れっ!お前の刀、ベタベタにしてやろうか?!」
「おっと、そりゃ困る。それにお前は切りにくいしやり辛ェんだ戦いたくねぇ」
「ゾロ。切るなんて言わないわ。開く、って言うのよ」
「成程」
「なるほど、じゃないわ!麦わら!私を船に戻せっ!」
「えーー。つまんねぇ。おれたちお前が好きなんだよ。いい加減にこっちの仲間になればいいのに」
「ならんわ!私は私のやり方で気ままにやっていきたいのっ!」
「…ムスッ」
「膨れないでよ!」
「アハハッ!よく膨れんのはお前だろー?」
「うるさいっ!」

私の怒号なんて気にも留めずに麦わらのルフィは大きな声で笑い声をあげた。あああ埒があかない!もう自力で逃げるしかない。
「もう帰る!」
びよーん!ベタ!
「あ!!待てよモチ子!!もっと遊ぼうぜー!!」
ビヨーン!グルグルッ!
「あああもう!!ついて来ないで!!私の船に勝手に乗らないで!」
「アッハハハ!今おれのほうが長く伸びたぞ!おれの勝ちだな!」
「勝負してない!!」
「にしても、モチ食いてえなぁ」
「あんたいっつもそればっかり!」
「おーい。出し汁用意したぞ。今日は1月だし雑煮にしよう」
「準備するなぁ!!」
「嬉しいっ♪久しぶりねぇお雑煮☆」
「やった!おれ白出汁のがいいなぁ」
「喜ぶな!!」

あああ、もう本当にヤダこの人たち。
どういうわけか揃いも揃って麦わらクルーは全員お餅が好きみたいで、初めて会った時からモチモチの実を食べている私は彼らにいたく気に入られている。だから出会えば軽く拉致られてしまう。

「なあなあ!餅、投げてくれよ!いつもみたいに!」
「ぜったいに投げないっ!」
「…ムスッ。へへっ!どうだ??モチ子の真似〜♪」
「似てない!」
「そうか?じゃあもう一回…」
「すな!」

ダメだ…。話聞いてないし疲れるばかり。
この先海賊辞めて実家に帰ることを視野に入れようかな…。そう思った。


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