超短編!〜平成 | ナノ
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プレゼントをくれる人。

朝、家の門を開けて少し歩くと鼻息の粗さがすでにわかる顔をしたロー兄が自宅から出てくる姿が見えたので私は激しい目まいを感じるしかなかった。
家へ逃げようにも、突っ切ろうにも、この距離と道幅ならば私はあの危険人物に簡単に捕まってしまうだろう。だから冷静に進むしかなかった。私は深呼吸をすると意を決して奴のいる方向へと歩いた。

「おはよう」
「ハイハイおはよう。そして行ってきますバイバイまた明日」
「待てよ。ホラこれ。今日、誕生日だろう?プレ…」
「いらんわーー!んなもんマジで本当にいらないよ!!!すぐに返品してこい!変態野郎!!」
「お前…。まだ中身も見てないのにそんな…」
「その紙袋見れば中身はわかるわーー!!!何で下着メーカーの袋下げてんのよッッ!!買ったの!?その店に行ってロー兄が自分で買ってきたの!?それとも通販?!どっちにしろキモすぎて死んでほしいよ!!」
「馬鹿だな。通販なんか利用するか!もちろん店に行ってこの手で選んで買ってきた。素材とか、触れてみねえと細かいところまでわからねえだろ!?」
「行ったんだ…。ああぁああ。この町内からついにプレ犯罪者が誕生した……。というかよく耐えられたね!?下着ショップに男がいるなんて変な目で見られるしかないでしょうに!!」
「大丈夫だ。結構歓迎モードだった。こういう方がどんどんいらしてほしいです〜とかなんとか」
「絶対嘘だからお世辞だからただの冷静な店員の神対応だから!!真に受けないでよ!」
「ちなみにコレは今冬の新作らしい。店員も持っていて、見せたら彼氏が喜んでいたそうだ。当然俺もお前が身に付けてくれれば嬉しい」
「もうヤダ…引越ししたい……もう怖すぎるこの人話も聞かないし……ヤダ…死んでほしい…うん…殺し屋…どこかにいないかな…」
「それで、サイズなんだが…」
「……もうそれ以上何も言わないでやっぱり話も聞いてないし…。これでドンピシャのサイズ言われたら……本当に警察に相談してくるからね!」
「もちろん、わかるわけがねぇから憶測で買ったんだ。店員は交換OKと言っていたから今度一緒に行こうな」
「誰が行くかーーーーー!!立ち去れこの野郎!!!こんなのが朝一番の会話だなんて最低だよ!!あああ行ってきます!!もう会いたくない!!」
「あ、待てって!!もう一つ、ほら、プレゼントだ!」

私が究極に胸を悪くしながらロー兄を振り切ろうとすると、ぎゅ…と腕をつかまれてそのままぽん…とこの手に突然何かを握らされた。「何よ!!」。私がキーー!と手の中の箱を投げつけようとしたその時、けれど、その箱にプリントされたブランド名がこの目に飛び込んしまえば私は悲しいけれど思わずその手を止めてしまう。…。

「…何で?」

それは私が好きなアクセサリーショップの名前。
好きだけれど、高くて買えなくて、いつも雑誌を眺めては終わっている物。今までのロー兄との会話の中でも何度かそのブランドが好きだと言っていた気がする。

「欲しかったんだろう?」
「………うん」
「ならよかった」
「…………ありがと」
「雑誌に付箋までするくらいだもんな」
「…ちょ!!な、何で知って!!」
「前勉強教えてやった日に見つけた」
「ハァ!!?」

私はそれを聞いて少し凪いでいた感情をまた一気に爆発させていた。その雑誌って、本棚にきっちりしまってたはずなんですけど!!??

「勝手に取り出して見たの!!?もーーー!!あり得ない!やっぱり変態野郎だ!!もう近づいでこないで!」
「いけなかったか?付箋が飛び出てるのが見えたから俺への買ってアピールかと…」
「んなもんするか!!!もうロー兄なんて家に入るな!」

私はそう叫んで箱を投げつけようとした…が、残念ながらそれはできない。なので代わりに鞄を思い切りぶつけてよろけてしまったロー兄から逃げるように走り去った。
付箋してあったページなら……この箱の中身は本当に欲しかった…ピアスだ。
返品に行くのもきっと面倒だろうし……仕様がないからもらっておいてあげてもいいよ!!
私はそう思って箱を握りしめながら駅へとダッシュしつつ、少しだけ顔をニヤつかせてしまった。



その夜。

「お帰り。ローちゃんがあんたにバースデープレゼントって私に袋を預けて行ったわよ」
「え?お母さんに??何で…?」
「とにかくコレよ。よかったわねえ。いい子ねえあの子」
「…なんだろ…」
ガサガサ
「ギャァアア!!」
(クッソ!今朝の下着かよ変態!!外袋変えてやがるあの野郎め!)


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