超短編!〜平成 | ナノ
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誰か助けてくれE

学園祭で大賑わいの学内を私は大きな箱をもってスタタタ…と小走りで走っていた。すると時折来場者に指をさして笑われた。…まあ、そうだろうね。でも気にしない!忙しいから気にしている時間もない!!そう思って耐え忍びながら、目的の人物を見つけると側へ寄って肩をたたいた。「アァ!?」。やっぱり不機嫌そうなロー先生のその声。それはもう聞き慣れすぎてるから気にはならない。けど「…お前…」その振り返った途端に見せられた呆れ顔と呆れ声には…ちょっと文句を言ってやりたいと思った。

「…何なんだよテメェ…どうして忍び装束で現れた…」
「頭領、それは余りに聞き捨てならぬお言葉。拙者たち忍び一同カフェの運営のために己の素性を隠し、それぞれが頭領の命令通りの衣装をまとい、昨日より本校生徒と一般客の奉仕へと努めているというに…」
「…あああ、ハイハイ思い出したわ。確かに俺がそれテメェに選んだわ…。…で、ただの下忍が何の用だ?」
「私はただの下忍ではない。私は1組の雪月花、またの名を学園祭実行委員長」
「あーハイハイ。委員長だったのかよお前。俺は忙しいんだからさっさと用件を言え」
「御意。ここに携えし箱をご覧くだされ。これは我が学園一の美姫、すなわちミスグランドラインを決定する重要な投票箱なり。頭領の投票如何でもしかすれば…結果に大きな変化が起こり、この学園の歴史を大きく変える可能性が…。さあ、これが投票用紙です」
「お前はバカか…。生徒の一人を選ぶなんて俺みてぇな立場の人間がするかよ当たり前だろうが!んなもんしたら学園の歴史の変化とかじゃなくて俺が色々と失うわ!陥れる気かよ!」
「しかし殿には先ほど記入いただけましたぞ!」
「ハァ!?…あのクソ校長投票しやがったのかよ!あり得ねえな…」
「まあ全員に一票、という内容であるが故毎年無効票としておりますがな」
「いやそれはもう有効にしてやれよ…」
「成程。では我が頭領の意見としてそう念頭に置いておきましょうぞ。して、投票は?我が忍び一族からはおナミが気合の衣装でこの後開催の水着審査に参加予定でござるぞ。その後になさいますか?」
「水着審査あるのかよ!!だからやたらカメラ持ってウロウロしてる男が多いのかクソ!それの駆除に俺は駆り出されてんだ!妙な審査でこっちの仕事増やしやがって!!…というか、投票はしねぇって言ってんだろうが下忍!さっさとワノ国へ帰れ!!」
「仕方なし…。せっかく警視庁に務める我が姉より指紋採取キットを借りており、頭領が誰に投票したか暴いてやろうと思っていたのだが…」
「お前の姉警察かよ!!しかも何借りてきてんだよクソが!!」
「嘘でござるがな♪」
「ダアア…。もういい。さっさと行け下忍め。…俺は巡回を続けなきゃなんねえんだよ…もう邪魔するんじゃねえ」
「して頭領。話は変わりますがその装いのままで仕事を続ける気でござるか?ミスグランドラインを決めると同時にミスターグランドラインも本日決まるでござる。ミスが生徒ならばミスターはもちろん教師!今年は若い男性教諭が頭領だけ故、票は恐らく頭領に集まるであろうというのが拙者の予測。名を呼ばれ壇上に上がる際にジャージでは見劣りしましょうぞ。いつものシャレたスーツに着替えたほうがよろしいかと思いまする」
「ハァ?!んなもんあるなんて聞いてねぇぞ…。……。マジでミスターなんて決めるのかよ」
「実行委員長嘘つかない!でござる!」
「…」
「む!集合の合図…。では拙者これにてドロン!ローせんせーまた後でね〜♪」


途端に押し黙ってしまったロー先生に合掌して背を向けると、私は箱を持ってこの場から颯爽と立ち去った。「あ!見て見て!!忍者だ忍者だ!」「おお小童、よくぞ我が隠れ身の術を見抜いた。ではこの密書(割引券)を授けよう」「わー!すごい!!カフェの人なんだって!!」…と。また来場者の子供に指をさされて笑われてしまった。私だってできることならナースやチャイナドレスやチアガールでちやほや…がよかったけど、ロー先生が選んだこの衣装は割と集客(主に子供)に役立っていた。…が、笑いものでしかないのは少し悲しい。でも今はそれを気にしている余裕などない!!この事を皆に伝え、来るべき時に備えなければならない!そして今は委員長としての任務も頑張らなければならないんだってばよ!ニンニン!



…その後


「クーーー…クックック」
「ビビちゃんまだ笑わないで…ウ…ククッ!」
「だって…本当に…あ、アハハ…」
「ほら!!始まるよ!!黙って黙って!!」
「…うぐぐ…」
『えー、では本日のメインイベントであるミスグランドライン決定に続きまして、ミスターグランドラインの投票結果も発表いたします!名前を呼ばれた方はぜひ壇上へとお上がりください!』
\ザワザワ!/
「あ、アハハ…ローせんせーの顔が…ひ、引き締まってるんだけど!!あーヤバいって…ヒッヒヒヒ!!」
「本当にジャージから着替えてるし…ククク…素直すぎでしょ!!あの人!」
『在校生の中から選ばれた、我が学園一番のイケメン女子!!その人は!!何と!!あのロー先生を足蹴にしちゃった白雪姫であり子供に大人気だった忍者サン!その男気に得票数ダントツでミスターグランドラインに決定しましたァアア!!おめでとうございまーす!さあこちらへどうぞ!』
「うそっ!!何と私でござるか!!」
「アーーーハッハッハッハ!!あんたかい!あ、わわ!ちょっとちょっと!ローせんせーが超絶すごい目つきであんた睨んでるよ!!ヒーッヒッヒ!!」
(テメェーーーー!!騙しやがったなァアアアアーーーー!あとで覚えてろよこの野郎がァアアーー!!)
「ヒャー!!すっごいせんせーの殺気感じるんだけど!!だって信じると思ってなかったし!!普通先生たちから選ぶわけないじゃん!え?私が悪いの?!信じたほうが悪くない??」

…が、ナミちゃんとビビちゃんはただ黙って私に対して十字を切るだけだった。
アーメンってか…おいおい!ヤバいぞ!





「わーー!!ローせんせーだ!!に、忍法雲隠れの…ギャーー」
「ここを辞める前に…お前を徹底的にシめる事にするよ…」
「だ、誰か助けてくれーー!!」


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