超短編!〜平成 | ナノ
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散歩道

春島の気候の、晴れて気持ちのいい山道をローと一緒に散歩した。
ちょうどよい強さの風が吹いていて、花や緑がいっぱいで、私は自然と顔がほころんだ。

「あれ?ふきのとうが…」
「ハシリドコロ…。毒草だ。錯乱して異常興奮するぞ…」

「セリがあるよ。セリって食べられたよね?」
「セリはセリでもドクゼリ。主な毒成分はシクトキシンだ…」

「あ、おもしろいキノコ生えてる」
「…触るな。ドクツルタケだ。クルーに食わせたら全員死亡するぞ…」

「…。もう…ローとの散歩ってつまんない!!あ!きれい!!スズランだ!」
「それも毒草だ」
「…ハァ。あ、このお花もきれいだなぁ」
「…」
「…何?どうせこれも毒草だとか言うんでしょ!?」
「いや、それはニオイスミレ。…恋の媚薬として本に登場する…」
「へー!!効くのかなぁ?」
私はそのスミレの花をそっと手折る。
「使うまでもねぇ…」
「え?」
「もう効いてる」
「…」
「…ずっと前から…」
「…それって…」


そう言ってしまうと、背を向けて足早に歩いていったロー。
その背中を私は手にしたニオイスミレと共に追いかけた。
甘い香りがそっと鼻先をかすめて、思わず微笑んでしまった。

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