超短編!〜平成 | ナノ
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美しいペルソナ

夕方の図書室。
部活動の時間も終わってずいぶん経ち、運動場からも廊下からも生徒の声が聞こえなくなるとこの場は普段以上に静けさが際立った。
私は積み重ねていた本の最後の一冊を棚に戻し終えるとフゥ…と息をつく。楽だと思って立候補した図書委員だったけれど、貸し出した本を元の場所へと戻す作業はわりと重労働だったからそれはため息に近いと言っていい。今日は特に本の出入りが激しかったから作業も長引いてしまい、上げ下ろしを続けたこの腕も小さな悲鳴を上げていた。
でも、もうこれで終わりだ。
そう思って小さく笑いながら伸びをすると、突然に側へと現れたローに手をぐい…と引かれてあっという間に抱きしめられた。私と同じく図書委員を希望した彼は、突然の抱擁に息をのんだ私を見下ろしてニィと笑んでいる。

「作業も終わった。だから楽しもうぜ?」
「楽しむ?」

そのセリフに私が首をかしげると、ローは何も言わず笑ったまま首筋にキスをひとつ。そしてチロ…と舌先がその場所を刺激するように舐め上げるから私は彼の言う「楽しむ」の意味合いをすぐさま理解して失笑した。

「ちょっと。盛らないでよ、こんな場所で」
「何言ってる。ここでヤってみたくて図書委員になったんじゃねえのか?」
「それ勘違いも甚だしいよ」

私がローの発言に鼻で笑ってみせるも、ローは気にも留めずに一度首から離していた唇をまたそこへと埋めた。カプ…。そして今度は甘噛みをひとつ。その小さな刺激には私も自然とぴくり…身体を反応させてしまった。ローはそれに嗤う。

「満更でもなさそうじゃねえか」
「そんなことない」
「へぇ…」
ローは嗤ったまま素早く私の足に手を這わせて太ももをするり…撫でた。「ん…」。また自然に身体がそれに反応して声が出て、それに気をよくしたローは大胆にも下着にまで指先を侵入させた。

「や、めて」
「…ック。少し濡れてるぞ?」
「それは言わないで…ッアァッ!」
抵抗しようとするも、最初の首への刺激の時点からこちらの意思とは裏腹に疼き始めたそこへとローが躊躇うことなく長い指を入れてきたので私は声を上げてしまう。それに益々ローが楽し気にするのがわかった。彼はそのまま侵入させた指をぐるり、中で動かす。ビクン…。身体は素直にそれに反応する。

「ん…ッ…ふ…。だ…めだ…よ。人が……」

どうしても零れ落ちてしまう甘い息を止められないまま、誰かが来るかもしれない危険性を告げてみた。が、今度はそれにローが鼻で笑った。「来ない、だろ?」…と。わかってるくせに、とでも言いたげに意地悪な口調で。


…そう。きっと誰も来ない。
担当の先生は用事があるから申し訳ない、と言ってここの鍵を置いて帰ってしまった。
眉目秀麗・頭脳明晰。そんな完璧に近い生徒であるローに対して先生たちは大抵甘い。そう言った先生の台詞に、ローがニコリと微笑んで『ならあとは任せてください』と言ったのならばその言葉を疑う者は誰もいない。『じゃあお願いね』『はいわかりました』。…けれど実際はこうだ。

優等生という美しい彼の外面は、所詮は作り物な所為かさもはがれやすい代物らしい。それを簡単に取り捨てたローは、私に刺激を与えることを止めないままもう片方の手で制服のパンツのベルトを器用に外した。そのカチャリという金属の擦れる音。それを聞いただけで私は身体が疼いてしまうのを感じたし、止められなかった。
恐らくそれで更に私の秘部に蜜が溢れたのであろう。
ローはくつりと笑うと、指をそこから引き抜いて私の目の前で見せつけるようにして舐めた。

「楽しもうぜ」

消えた刺激に物足りなくて歪めた顔を誤魔化すことなんてもうできない。私はローの意地悪なその言葉にこくりと素直に頷き、彼の首へと自分から両腕を回した。

私も日常では理性のある仮面をつけていた。
けれどそれはローのものと同じく、いとも簡単にはがれ落ちて足元で消えていった。



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