超短編!〜平成 | ナノ
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逆トリルフィは苦悩しないA

色とりどりの落ち葉を踏みながら歩いていると、隣にいた麦わら帽子の少年がつまらなそうに息を吐いた。もうすぐ冬になろうというのにやっぱり脱がないその帽子については私もさすがに見慣れたけれど、への字口をして今にも不平不満を言い連ねそうな彼の姿は見慣れない。

「怒らないで」
「だーってよー!何でもうあのカレーの店もかつ丼の店ももう行っちゃいけねぇんだ?すっげーうまかったのによーー」
「だからね。その店のメガ盛りメニューは一人一回までって決まってるの。完食すればタダになるから連れて行ったけど、そうじゃないメニューをいつもの量食べられたら私が困るんだよ」
「ちぇーッ!つまんねーの。どっかに財宝でも落ちてねぇかな〜」

ルフィくんは私が食事の店に連れて行ってあげないことにかなり納得がいかないらしい。そりゃそうでしょ!もうこの界隈じゃ私と麦わら帽子の大食漢少年の存在はきっとブラックリストに載る勢いで知られている。それほどこの短期間で様々な店を食い荒らしたのだ。全くルフィくんの食欲は見ていて気持ちがいいけれど、いかんせんお金がもたない。けど、何故だか出て行け!と強くは言えないのだからこの明るく無邪気で爽やかな少年には困りものだ。

「ほら見てよ。紅葉してて木がきれいだよー」
「葉っぱなんか食えねえじゃねーか!!見てもおもしろくねーよ。あー腹減ったなぁー」

私が気をそらそうとして道端の木を指さすも、ルフィくんはすねた顔をしてそっぽを向いた。サクサクとその葉っぱを踏みつける草履から覗いている素足。寒くないのかなぁなんて思いながら、私はずっと口を結んで不貞腐れているルフィくんにクス…と思わず笑っていた。

「葉っぱは食べられないけどね」
「…」
「これを集めてたき火したら」
「…」
「焼き芋が食べれるよ」
「おぉお!!ヤキイモ!!食いてぇえええ!!なあ!やろうたき火!!おれ落ち葉集めるな!!」

私がそう言うとすぐに目を輝かせて足元に舞い落ちている色とりどりの葉っぱをかき集め始めたルフィくん。食べ物に関してだけ異様に素早いこの反応!私は身体を屈めて必死に落ち葉を集めているルフィくんの背中を見つめてくすくすと笑い続けた。


どこの誰かもわからない。
たくさん食べるけど無一文。
言ってることも支離滅裂だし、はっきり言って変な少年。


「どこでやる?なあ!どこで焼く??」


けど、そう言いながら落ち葉を抱えるこの少年がニシシと大きく笑ってくれれば何故かこちらまで嬉しくなってしまうのが事実で。


「あの畑で焼こう!おーい!じいちゃーん!!サツマイモちょうだーーい」


だから当分食事に関しては苦労するなぁと苦笑しながら、私は畑で作業してるじいちゃんにそう言って手を振った。


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