超短編!〜平成 | ナノ
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誰か助けてくれD

よく晴れて暖かな日差しが差し込む廊下を私は長い、長すぎるスカートを翻しながらターゲットに向かって全力で走った。そして叫んだ。

「ローせんせぇえええええーーーーー!!!」
「アァ!?お前いつもうるせえんだ……って!!ウガァアアアア!!」

相変わらずの苛々した教師らしからぬ声を上げつつ振り返ろうとしたロー先生は、私の恰好を目にするや否や今までにない酷い奇声を上げながら身体を強張らせた。まあそうだろうね!!でも今はそれについてゆっくりと語っている時間はない。私は硬直した先生目掛けて飛びかかり、緊張した腕を捕まえると「捕獲ゥウウウ!!」と背後の仲間に向かって叫んでやった。

「急に何なんだお前はァアア!!??でもってその…その奇抜な格好は何だ!!!」
「白雪姫です!!!!」
「何言ってんだどこが白雪姫だ!!!!サイドにスリットが入りすぎて、あっ、足が丸見えだろうがァアア!!!ウワァアアア!!しかもお前の背後に控えるホットパンツ集団は何だァアア??!」
「七人の美脚です!」
「ハァアア!!?ワケがわからねぇ…。演劇部の大道具運びを手伝ってやった時はまともな『白雪姫』やってたじぇねか…。何でまたこんな大胆な設定変更を…」
「近くにあるサウスブルー男子高の集団が学園祭に来ることがわかったの!!だから少しでもこっちの魅力をアピール…って!今はそれどころじゃないのよ!!せんせー!!王子やって王子!!」
「あぁああぁぁああ!!全く話についていけねぇんだよ何でそんなこと頼まれなくちゃなんねぇんだよ何が王子やってvvだよ知るかァアアア!俺は校内巡回で忙しいんだ!!それに最初はお前が王子役やってたんじゃねぇのかよ!!」
「そう!本当はビビちゃんが白雪姫するはずだったんだけど、さっき足を挫いちゃったの!!!だから急きょ私が姫で、それで王子がいないのよ!だから助けてよせんせー!!」
私が真剣な顔をして事のあらましを簡単に告げれば、ロー先生は片手で顔を覆いながら盛大に唸った。
「そういうことかよ。あぁああぁあああ。でもやめろや。俺はもうアラサーなんだよ。お前らに混ざって王子やる歳じゃねぇんだよ。頼むから巻き込んでくれるな。そんなもんやってみろ。今晩にもその画像が地球の裏側にまで配信されちまうだろうが。そうなったら俺は終わりなんだよ。社会的抹殺だろうが。ガァアアア…」
「でも!私たちの仲間で他に空いてる人ってもういないし!!練習風景見てて劇の流れ知ってるのはせんせーと校長先生だけなんだよ!どちらに頼もうか…ってなったらどう考えてもせんせーのほうになるじゃん?!腰の曲がった王子じゃ失笑されちゃうよ!」
「んなもん俺がやっても失笑の嵐だろうがァアアア!!!!!」
〜ピンポンパンポーン…。まもなく〜、演劇部による『白雪姫』が〜、体育館にて〜、上演されます……
「あああ!!!時間ないっっ!!!美脚集団!!!もう無理やりでも衣装着せるよ!!大丈夫!せんせーの台詞はビビちゃんがマイクで言ってくれるから!!皆!私が腕掴んでるから早く!!」
「ウギャアアアア!!!パンツを勝手に下ろすなァアアアアア!!!」
「わー!せんせー足長すぎて…プッ!!これじゃ七分丈王子だよッッ…アハッ…アハハッ!!」
「変な所を触るなァアアア!!!」
「でもちゃんと入る腰の細さが憎い!」
「テメェはシャツをはぎ取るんじゃねェエエエーーー!!!」
「せんせー大丈夫!ボタン止まらなくて前がはだけてるけどマントでどうにかなってるし!似合って…ック…るよ!…うん!似合ってる!はい!王子の帽子と剣!!ちなみに馬はないから徒歩登場ね♪」
「お前今ちょっと笑いやがったな!!??アァアアアア!!それよりも頼むから俺を解放してくれェエエエーー!!!!」





『……白雪姫の棺を前に七人の美脚たちは彼女の死を悼み泣いていました。そこへ通りかかったのは、何とこの国の王子です。彼は泣いている七人の美しく艶やかな輝くおみ足に思わず見惚れてしまいましたが、彼女らの側にある棺の中の白雪姫が彼女たち以上に滑らかな足と美しい容姿の持ち主であることに気づくと、本能的にフラフラとそちらの方へ近づいていってしまいました』
(ホラ!!せんせー出番!早く舞台に出て!!もう諦めて!!)
(……何だよこのナレーションは…。酷すぎにも程があるだろ…。フラフラって…なぁ、おい…)(早く行ってってば!)ドンッッ!!「ウワァッッ!!」

\あ!ローせんせーだ!ローせんせーが王子やってる!!アハハハッ!!/

「…(クソォ…)」
おお、何と美しい足の姫。だがすでにこの世を去ってしまっているなんて…生きとし生ける者全てが全力で悲しむべき事態。ああ、私がもう少し早くあなたに出会っていて、かつ医学の知識でもあったならば!!ああしてこうして…ムッフッフ

私が棺の中でこっそり薄目を開けてみると、何言ってんだコラァ!!…とこの台詞に今にも叫び出してしまいそうなロー先生がヒクついた顔をして立っていた。
ウッ!
私はその姿に思わず吹き出しかけた口を必死で閉じ、笑いそうになるのをどうにか堪える。
そんなロー先生は舞台に立ったらさすがに諦めるしかないのか台詞に合わせつつガクガクと不自然ではあるが演技らしきものをしてくれていた。
さあて。でも重要なのはこれからですよローせんせー!
キスの真似事、どうにかやりきってちょうだいね!!
…って。
やっぱりダメか…。
ロー先生は私の棺の側まではギクシャクとやってきたが、そこでぴしり…、その身体を硬直させ顔も引きつらせてかなり困っているようだった。…なので背後に控える美脚集団が彼を煽った。

「王子さま。さあどうか、姫に最後のお別れを!!」
「…」
「…」
「……」
「王子さま?」
「………」
あああ、すまない。姫にキスでも…と思ったのだが、実は私の人生で初めてのキスなんですよ!!だからどうしても緊張してしまって身体が思わず動かなくなってしまったのです。…口、臭くないかな??大丈夫オレ??ハー!

ビビちゃん…。
私はその勝手な台詞を聞いて更に顔を引きつらせたロー先生にプッと小さく吹き出した。対して観客はそれに大笑いだ。

\アハハッ!!ローせんせー!初キスがんばれー!!/

「…(クソォ…!!)」
「王子さま!!何卒!!早く!!覚悟を決めてください!!」
「王子さま!」
\せんせー!早くしなよー!!/
「今すぐに!!」
「さぁ!せんせー!」
「漢になって!」
「姫待ってるし!」
「ローせんせー!!」

(…早くしてくれないかなァ…終わらないよ…)

それでも動かないロー先生に私がハァ…と思わず棺の中でため息をついたところ、先生が突然に「あああ!」と叫んで私を棺から引っ張り出した。
「!?」


「喉にリンゴ詰まらせてるなら有効なのは背部叩打法だァアア!!」


そして私は先生に思い切り肩甲骨部分を叩かれ「グェッッ!!!!」と思わず乙女らしからぬ声を上げてしまった。
「ほら!!生き返ったぞ!」
「…あ、ひ、姫ー!!」
\えー!!!つまんない!!/
「うるせぇ!これでめでたしめでたしにしろ!!」

そりゃなくない!?せんせー!!
サウスブルー校生徒の前で酷くない!!??

「つまらない男ね!キスもできないヘタレ王子なんて城へ帰れ!」

なので私は仕返しに先生を足蹴にしてやった。

「芳香足(パフューム・フェルム)じゃ!!」
「ッ!おい!!白雪姫が攻撃とかありえねぇだろ!!!?」
「姫!!寝覚めが悪くご乱心ですか?!!静まりたまえ!!静まりたまえー!!」



その後


『よぅ。今度飲まねえか?』
「もしもし。キッドか。…急にどうした珍しいな…。日が合うなら別に構わねぇが」
『ありがとうございます。わたくしめのような下賤な民の誘いを受けてくださるとは恐悦至極にございます。我らが王子におかれましては大衆居酒屋などお気に召さないかと存じますが…』
「…切る(…クソォ!!!やっぱり情報が流出してやがるッッ!!!ああああーーー!!やっぱりあんな高校辞めるしかねぇわ!!!)」

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