超短編!〜平成 | ナノ
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ハートの海賊団と過去から来た子

正式題名→ハートの海賊団と遠い過去の日本からトリップしてきた女の子


ある日おれが甲板掃除をしていたら、まるで時空がずれて歪むような映像と小さな雷のような閃光が走る光景が見え、そこから何と奇妙な格好をした女の子が零れ落ちてきたので慌ててその子をおれはキャッチした。

「うぎゃあ!!熊ァアア!!獣に食い殺される!!」

その子はおれを見るなりそう叫んだ。獣でスイマセン…。


「何!?何、何なの!!??なぜわたくしはこんな奇天烈な形をした殿方ばかりの船にいるのです!!?さっきまで道を歩いていたのに!!」
「…キャプテーン。変なの落ちてきたけどどうしよう?」
「能力者か?」
バッシャーン!!「キャァアア!!何ゆえ海水をッッ!!??無礼者!!!」
「…じゃねぇみてぇだな」
「こ、これは…黄色い船……。おのれ亜米利加…、黒船だけでは飽き足らず黄船まで日本に寄こすか…!!和親条約なんて幕府が結ぶものか!!!この蛮族!!日本は開国も降伏もしない!!」
「…あめりか?にほん?何言ってるのかなァ??」
「…経緯はわからぬがこんな場所にいることすら屈辱…!!自害…自害しなければ…ッッ」
「わーーー!刃物ダメ!!キャプテン止めてよ!!」
「…ROOM、…シャンブルズ」
「あぁあああーー!奇術使い!!懐剣を返せ!!」
「…」
「返せと言ってる!!それを寄越せ!!ここで死んでやる!!」
「…お前よく見ると美人だな」
「ハ!?え!?急に何をッ!!」
「だからここに置いてやるよ」
「何を言っている!!??有り得ぬ!!意味がわからぬ!!ああああ!!離せ!離せぇえええーー!!死ぬ!!死んでやるんだから離せーーー!」


数か月後…


チュ…
「うぎゃああ!!今何を!!何をした?!今わたくしに口付けたか船長?!!」
「別にいいだろ?」
「いいわけがない!!…わたくしには…うぅッ…日本に許嫁が……いるのですよ…?!…それなのに…」
「フーン。でもお前もうきっと帰れねぇよ。だから諦めて俺の物になっとけ」
「帰れます!!いいえ、帰ります!!…ああ…傷物にされてしまった……。うぅッッグスグス。…父と母に何と言えばよいのか……。やはり自害……自害を…!!」
「ROOM、シャンブルズ」
「その奇術を使うでない!!うわあああああん!!お許しください…!!許嫁殿…私は純潔を守れませんでした…」
「まだシてねぇだろ。キスくらいで騒ぐな。……お前そいつを愛してるのか?」
「わからない。だって会ったことがないもの」
「ハァ?会ったことがねぇ許嫁だなんて意味がわからねぇな…」
「顔も知らぬ相手との婚姻など珍しくない!いちいち騒ぐな!世間知らずか?!」
「そりゃお前のことだろうが…。会ったこともねぇ男と添い遂げようとするより、目の前にいる俺といたほうが何倍も価値があるだろ?そう思わねえか?」
「思わぬわ!」
「それにお前、俺の事好きだろ?」
「すすす、好きじゃない!!好きじゃ……うぅううッッ!!グスグス!!…うわぁあああんん!!でもわたくしが許嫁と結婚しないと家が落ちぶれてしまうからぁあああ…!!だからッッ!!船長なんか好きじゃない!!うわーん!」
「ヨシヨシ。素直になれ」
「うわぁあああーーん!船長の馬鹿ーーー!!」


時折おれが見る空にあの時と同じ時空の歪みと閃光が見えたけど、船長もおれもそれを無視しながらこんな航海が続いている。
ずっと頑なだった彼女が(諦めて)心を開くのはもうそろそろかもしれないね。




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