超短編!〜平成 | ナノ
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逆トリルフィは苦悩しない

道を歩いていると季節外れな麦わら帽子をかぶった男の子がきょろきょろしながら歩いていた。
どうかしたのかな、と話しかければ「迷子だ!」…と明るく言ったその子。
なんだか放っておけなくてとりあえず家へと連れ帰りいろいろ尋ねるも、記憶が混乱しているのか帰る場所や行きたい場所があまりにも意味不明。
困ったなぁ…なんて思いながら、けれどますます放っておけなくなってしまった私は何だかんだで今も彼を家に置いている。…で、あまりにも常識はずれな事ばかりを言うまるで異世界人のような彼に、本日思いたって年中行事を教えてあげてみた。

「まずは1月ね。1月1日は元旦って言って、年の始まりを祝う日なんだ。お正月とも言って…」
「へー。祝うってことは何か食うのか?何食うんだ?」
「おせち料理とお雑煮だよ。最近売ってるおせちは洋風や中華とかがあって我が家は今年洋風だったなぁ」
「へー♪」
「で、2月はね。節分っていうのがあるの」
「へー。で、その日は何食うんだ?」
「豆と恵方巻きだね。豆は歳の数だけ食べるの。恵方巻きはその年の恵方へ、あ、方角のことね、…そっちを向いて巻き寿司を無言で丸かじりする日なんだ」
「へー。黙って食うなんて皆真剣だな!」
「あとはバレンタインデーがあって」
「何食うんだ?」
「チョコレート」
「へー。ついでにコクハクもするなんておもしれぇなあ」
「…で、3月はひな祭りやホワイトデーが…」
「何食うんだ?」
「…で、4月にお花見が…」
「何食うんだ?」
「…5月は…」
「何食うんだ?」
「…6月は…」
「何食うんだ?」





で、1年分ひとしきり教えてあげると、ルフィと名乗ったその子は至極楽しそうな顔をして「いい国だなー」と屈託なく笑った。

「おれ、この国だったらもう少し居てもいいぞ」
「…はあ」

…と。
もっと自分の置かれた状況に焦るべきでは?とそう思うんだけど彼は全くそんな事なく邪気のない顔をしてそう言ってる。
…そして、話の流れ的に私はこれからお月見団子を作らないといけなさそうです。
「とりあえず100個な!」
うーん。腕が疲れそう。




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