超短編!〜平成 | ナノ
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誰か助けてくれC

黒板へいろいろな組成式を乱暴に書き連ねた先生≠ヘ、いつものお決まりである、眉間に皺が深く刻まれた状態の苛々顔で生徒側へと振り返る。その際に長い白衣の裾がひらりと翻った。するとそれに染みついた薬品のような匂いが周囲に舞った気がした。理科の授業はいつもこんな感じだ。私はニィ…と思わず笑った。

「お前等…黒板をよく見てノートに全部書け。重要な化学式だ。テストに出す」
「せんせー!意味がさっぱりわかりません!」
「うるせぇ。ゴチャゴチャ言ってねェで黙って覚えろ。取るべき点数は…必ず採ってもらう」
「せんせー説明が雑すぎです!!」
「黙ってろビビ屋。どう教えようと俺の自由だ」

ギロリ。そう言って睨みつけるとビビちゃんは「…サーセン」と肩をすくめてしまった。するとそれを見かねたナミちゃんが抗議した。まぁ、そうだろうね。確かにこれは私でもひどいと思う。

「ローせんせー!そんな言い方ないんじゃないですか??仮にも先生なんだからきちんと教えてください!」
「ハァ?お前俺に命令する気か?…生意気な奴め。おい、ナミ屋。起立しろ」
「…え?」
「立てっつってんだよ聞こえねぇのか馬鹿。さっさとしろ間抜け」
「…ハ、ハイ」
「よし。そのまま上の服を脱げ」
「…え?」
「聞こえなかったのか?脱げっつったんだよ。黙って命令に従え。テメェが今日新しい下着をつけてきてるってことは知ってんだ。だからここで見せやがれ」
「…そんな…。また…、ですか?」
「ああそうだ。だからさっさとしろ。それとも俺に脱がされてぇのか?」
「…やだ…。こんなところでなんて…嫌です…。許してください」
「ふぅん。じゃあ仕方ねえな。俺がゆっくり脱がしてやるよ」
「…ウッ…!!くーーーククッッ」

…と、ここで堪えきれなくなったのかナミちゃんがプッと吹き出し、その途端にクラス全員が「アーーハハハ!!」と笑い出した。するとそのタイミングで「お前等ァアアアアーーー!」と言いながらローせんせーが破壊せんばかりの勢いで理科室のドアを開けて勢いよく侵入してきたので、笑い声は更に一層大きくなった。
私は着ていたローせんせーの白衣を翻しながら「テメェらうるせえぞ!!黙ってろ馬鹿!!」と一喝。また大きくなる笑い声の中、ローせんせーはつかつかと私へ近づくとわなわなと口を震えさせながら「何やってんだーー!」と私を一喝した。
昼休み明けの理科の授業。私たち全員は開始10分前にここに集まって授業ゴッコをしていたのだ。

「意味がわからねぇ!理解不能だ!さっきのは何なんだ!!まさか俺の真似か!?」
「学祭でクラス対抗モノマネ大会があるのでその練習です!」
「ハァ!?モノマネ大会って…。んなもんプラグラムになかっただろうが!!」
「私が企画して先生に掛け合いました!すんなり通りました!」
「何なんだよその行動力は!!??そういうのは勉強面で発揮しろ!!」
「ローせんせー!どの部分が一番自分と似ていると思いましたか??」
「どれもこれも似てねぇよ!!俺の授業はそこまで酷くねぇだろうが!!」
「だいたい合ってると思いますけどー」
「…う…、……まあ…そうだな。否定はできねぇ…。だが問題は後半だ!ありえねえモン創作してんじゃねえよ!!!あれを披露するなんて許さねえぞ!!」
「せんせーが脳内で考えてそうな事をやってみたんです!」
「ハァアア!!??んなこと思ってねぇよ馬鹿が!!」
「えー。本当ですかぁー?」
「ああそうだよ当たり前だろ!!ふざけんな!」
「えー。でもせんせーの目、時折すごくいやらしいですよー?」
「何言ってんだ!!!そんな目したこともねぇわアホ!!」
「ほぅ…。ロー先生はいやらしい目で生徒を見ておるのかね」
「だから見てねェ……って!!ッッ!!うわぁ!!校長かよ!!何で部屋の中にいるんだよテメェはァアア!!」
「モノマネ大会の練習風景を見させてもらっていてのぉ。…しかし、ロー先生の教え方とやらは斬新じゃの。フォッフォッフォ」
「かなり威圧的でーす」
「待てコラ!!余計な事言ってんじゃねぇよテメェ!!」
「ほう…。…さあて、じゃあワシは帰るとするか。…そうか。いやらしい目で見ておるのか」
「見てねえって言ってんだよこのクソ校長がァアアーー!!」


職員室にて

「…どうしたんだよ…。テメェら鏡なんか見て…」
「ああ、ロー先生。…どうかな?俺の目、いやらしい目に見えるだろうか??」
「ハァア??…何言ってんだよ…気味が悪ィ…」
「校長が男性教諭は生徒への目つきに気をつけろ…と警告してきたからな。俺たちもあの子等に指摘されないように気をつけんといかん…」
「マジかよ…。気にしすぎだろテメェら…」
「甘く考えない方がいいぞ…。俺たちの立場は圧倒的に弱いんだ……圧倒的弱者…。ほら、ロー先生にも鏡だ」
「…クソ…いらねぇよ…。ハァアア…。やっぱりこんな変な高校辞めたくてたまらねぇわ…」

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