超短編!〜平成 | ナノ
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誰か助けてくれB

猛烈な暑さも少しだけ威力を失くしてきたと感じられるこの季節。そんな中、やっぱり女が3人以上集まればなんとやら…というやつで、今この教室はいつも通り、というかいつも以上に女の子特有の甲高い笑い声とはやし立てる声でいっぱいに溢れかえっている。そして、これもまたいつも通りで、これからあるのはロー先生の授業なんだよね。アハハ♪やっぱり今日も彼は私たちの手により哀れな仔羊と化するのである。アーメン。

「…お前ら」

廊下の先からでもこの騒ぎ声が聞こえたせいなのか、少し遠慮がちに開けられる教室のドア。暑さが和らいできたおかげか、いつもの苛々した感情は今日は少しだけ失われてどことなくその声は柔らかい。…が、ス…と教室へと入ってきたその顔はやっぱり怒ったような顔をしていて…そして…「うぉおおおおお!!」。そんなロー先生はこちらを見るなり目をいっぱいに見開いてものすごい声でそう叫んだものだから「アハハ!」…と、私たちは更なる大きな笑い声をあげてしまった。「お、お前ら一体全体その恰好は何なんだ!?」。あまりに素晴らしい光景だったのか、ロー先生は後ずさって背中を黒板にぶつけていた。そして顔は盛大に引きつってもいた。
まあ、そうだろうね。
そこから見える一部の人間は、まるでどこか場末にある特殊な(?)飲み屋の中で働くお姉さんみたいになっているんだから。私はメイド服、ナミちゃんはナース服、ビビちゃんはチャイナ服、他にもチアガールやら婦人警官やらセーラー服やら…その他イロイロ。それらを着込んでウフッてなってる私たちがいるもんだから、ロー先生はもう顔が赤くなるどころかそれを通り越して青ざめかけていた。そして慌てたようにして私たちにくるりと背を向けてぬわーってなってる。

「お前ら何やってんだ!!」
「学祭の衣装決めです!!」
「学祭って…。ウチのクラスはカフェをやるって決まってたんじゃねぇのか!?これじゃまるでイメクラだろうが!馬鹿かお前ら!」
「ただのカフェじゃつまんないから、皆でかわいい衣装着ようって話してて…。メイド服じゃ王道すぎるじゃないですかー。だから今日イロイロ着てみてるんです」
「何で今なんだ!…てか、こんなにたくさんどうやって用意したんだよ!?」
「お姉ちゃんが持ってました!」
「ハァ!?兄貴が、じゃなくて姉貴かよ!?おかしいぞ、お前の姉!」
「ローせんせー!どの服装の子に一番奉仕してもらいたいですか?」
「うるせぇうるせぇうるせェエエ!!俺の趣向を聞いてどうする!?」
「オ兄サーン!イイ子イパイイルヨー♪コッチ向イテミナヨー」
「妙な客引きの真似をすんじゃねえ!!カフェなんだから全員メイド服でいいだろうが!」
「なーんだ。つまんな!じゃーコレかー」

私は全くおもしろみのないロー先生の返事にそう言って、自分の着ていたエプロンの裾を引っ張ってみた。ブリブリフリル。ま、これを着たナミちゃんやビビちゃんは究極かわいいだろうから、たくさんのお客さんは呼べそうだ。でも私ってばあんまり……。するとロー先生が背を向けたまま言った。

「…待て。お前はメイド服は似合わねえツラしてたな」
「うわお!今まさに思ってること言ったよこのせんせー!そしてけっこう酷い事サラッと言ってのけたよね!え!?」
「…確かに全員同じ恰好じゃつまらねぇ…。客の好みは……人それぞれで違うからな」
「うっわ!何だかノってきてるよこの先生!どうした!?」
「購入のためのカタログはあんのか?」
「はいはいここに!!」

私が教卓に本を乗せてあげると、ロー先生はそれを取り上げながら中身をちらりと見て「よし。後で出席番号順に並べ。テメェらそれぞれに似合うものを言ってやる」…と言ってきた!うっそ!あり得ない展開!!
…が、ロー先生は教室の向こう側からこちらを見ていた校長先生の存在に気づくや否や慌ててその本をバサッと隅へと放り投げていた!なので先ほどの暴言の仕返しとばかりに私はすかさず言ってやった。

「ローせんせー。どうしてもこの格好のまま授業しなきゃダメですかぁー?」
「待てコラァアアア!!んなこと言ってねえだろうが!!このクソ野郎!!」

フォッフォッフォ。
校長先生の冷たい静かな嗤い声が遠ざかっていくのをロー先生はどこか放心したような顔で見送っていた。なのでそんなロー先生のために私たちは全員、胸の前で十字を切ってあげた。彼の敵より、彼を救いたまえ。アーメン。…って、私たちが原因なんだよね。テヘッ!



職員室にて


「…終わった」
「…楽しみだな。学園祭」
「それまでに俺はここで生きてねぇよ」
「フォッフォッフォ。…ワシも楽しみだな。学園祭」
「…マジかよエロジジイ達め」


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