超短編!〜平成 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
落とし物を拾ったらなんと…

〜前回のあらすじ…+α!〜

落ちていた電伝虫の持ち主は世間を騒がす海賊だった!そしてそれを拾った私はその海賊の船長にほとんど強引に彼の船の一室へと連れて行かれたのであった…!!



無理やり通された船の一室。
怯えを通り越して最早深いため息しか出せないそんな私の目の前にポンポンポンと置かれたのは、殻に独特の模様が入っていて、更には帽子をかぶったりヒゲを生やしたりしているそれら単体だけ見たならばかわいいなぁと思える三匹の電伝虫たち…だった。
そしてそれを置いた本人であり、この子たちの持ち主さんである電伝虫の見た目そのままな姿をした人、トラファルガー・ローさんはそれを置くなり私を見てニヤっと笑って言ってきた。
「これの世話を頼みてェ」
…と。

「はー?!何でですか…」
「最近コイツらが生意気で困ってたところなんだ。餌も食わねえ時があるし、気分で通話を遮断しやがる。お前なら何とかできそうだろ?」

そして横柄な態度のままそう言われる。ム!なので私は思わず反論してしまった。電伝虫の扱いに困る…だなんて!!私にはあり得ない話でしかない。

「はぁ!?あなた一体どんなお世話してるんですか?逆に聞きたいですよ!電伝虫一匹まともに飼育できないんですか??簡単でしょ!?ペットとか、生き物飼った事今までなかったんですか?」

私が噛みつくようにそう言うと、トラファルガーさんは背後にたたずむ白熊のクルーをちらりと一瞥し…「ある」と答えた。「現在進行形だな」「えぇ!?キャ、キャプテン?!」。待て!ドヤ顔で言うなぁ!!その子はミンク族じゃないか!!ペットじゃない!…はずだ!

私は彼の言葉にずーんと落ち込んだ白熊ちゃんに憐れみの目を向けつつ、目の前で偉そうにしたままのトラファルガーさんを小さく睨みながら「原因はそこじゃないですか?」とやや強い口調で言ってやった。
「この子たちに対してのあなたの愛情が足りてないんですよきっと。だから怒ってるんですよ!ちゃんと毎日名前呼んでかわいがってあげてるんですか?」
「は?名前だァ!?…付けてるわけねぇだろ。相手は電伝虫だぞ」
「だからっ!!その考えがいけないんですよ!相手は生きてるんですから!!せめて名前つけてあげてくださいよ!!こんなにまであなたの姿かたちに似通わせてくれてるのに酷くないですか?」
「…責められる理由がてんで理解し難ェな…。まあいい。…名前か。…。……。…一号・二号・三号でいいだろ」
「愛がない!!あーいーがーなーーい!!駄目です!!」
「…意味が分からねェ」

私のセリフにトラファルガーさんは眉をひそめてそう言った。机の上の電伝虫たちはそんな彼に怒った表情をしてぷい…と顔を背けているのだからその名前が気に入ってない事くらい一目瞭然であるのに!
私は不機嫌な電伝虫たちを見つめ、そしてムス…と口を引き結んで同じく不機嫌なトラファルガーさんを交互に見つめると「なら…」と口を開いた。

「じゃあこうしましょう。左からトラ、ファル、ガー!船長さんの電伝虫なんですし、自分の名前をわけてあげたらいいんじゃないですか?」
「…ハァ?…テメェふざけてんのか」
「ツーツー♪ツーツー♪」
「あ、ホラ。見てください。喜んでますよ」
「…マジかよ」

私の付けてあげた名前に三匹並んだ電伝虫は顔をほころばせて甘えた声を出した。「ツーツーって…。んな鳴き声聞いたこともねぇ」。トラファルガーさんは、ニコニコと笑いながら鳴く電伝虫を目を丸くさせながら見つめ吃驚していた。

「よかったね。やーっと名前を付けてもらえて。トラ〜、ファル〜、ガ〜♪ご飯を食べない時があるってどうしてなの??おいしいご飯もらえていないの??君たちそれぞれの好み、この人ちゃんと把握してないのかな??」
「…ハァ?好みなんかあんのかよ」
「あるに決まってるでしょ!いつも何あげてるんですか?」
「キャベツやレタスを…」
「野菜だけ??!かわいそう!!もっと魅力的な物あげなきゃだめですよ!!トラはビスケットおいしそうに食べてましたよ!!??だからこの子はきっと甘いものが好きなんですよ!わからなかったんですか!?」
「わかるわけがねえだろ…」
「あり得ない…あり得ないです!!もっとちゃんと電伝虫に寄り添わないとだめです!!……。うん。ファルは何だか個性的な顔してるから…ハーブとか好きそうですよ。ガーは何だか酒飲みっぽい顔してるから酒の肴系が好きそう♪」
「…マジかよ」

私がそう言うと、心底信じられないという顔をしてトラファルガーさんはそう言った。
そんな彼はお前こそ有り得ねぇ…とその後言い続けていたのだが、私が白熊ちゃんに頼んで持ってきてもらったバジルやからすみをファルとガーに与え、そしてそれらを彼らがガツガツと食べ始めた姿を見れば口をあんぐりあけたまま黙ってしまったけどね。ドヤ!

「…ならもうお前に決定じゃねえか。飼育係。頼んだぞ」
「ハ!!いや、その!!そのつもりなんか全然なくてですね!!いやいやいや!!それこそあり得ないあり得ない!!嫌ですって!家に帰してください!!」
「おいベポ、出港しろ」
「待って酷すぎる!」
「まあいいじゃねえか」
「よ、よくない!」

私の必死の抵抗にトラファルガーさんは聞く耳なんて決して持たない。そして本当に船は出港し始めた。
だから私は絶望の中、離れゆく自分の育った島を甲板の上から決して届かないとわかっていながらも手を必死で伸ばして「助けてーーー!」と叫ぶしかなかった。



「大丈夫だ。今日から毎日名前呼んでかわいがってやるから。…愛情が足りねェなんて言われねえくらいにな」
「ペットじゃないし!」
「キャプテン!おれも…おれもペットじゃないよ!」
「似たようなモンだろ」
「「ええ!!」」

prev index next