超短編!〜平成 | ナノ
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はす向かいの人。

高校に上がってから途端に数学が難しくなって、やれやれ塾にでも行くっきゃねぇな!…と思っていたら連れてこられたのがロー兄だった。我が家のはす向かいに住む大学生でお互いのお母さん同士の仲が良かったから付き合いは長くて深い。塾代より安く済むから♪…とニコニコ笑う我が母の後ろでにんまり笑っているロー兄のその姿に、私の笑顔がぴしりと引きつった事に彼女はきっと気が付いていないだろう。

「久しぶりだな。お前の部屋」
「とっとと勉強しましょう」

仕方なく通してやった私の部屋をまるで舐めまわすようにニヤニヤした顔のまま見て回るロー兄。私は部屋の中央の机を指し示しながらぴしゃりとそう言い放つと小さなため息とともにクッションに座って教科書とノートを置いた。けれどロー兄は突っ立ったままある物を凝視し続けてこちらに背を向けていた。…その視線の先にあるものは……。ヤベェ!私の学校の制服じゃん!

「なあお前!これ!これ着ろよ。そして脱がさせろ」
「キモッ!!!やっぱそういう所変わってないんだ!!てか、どんどんエスカレートしてる気がする!!」
「俺はお前が好きなんだ」
「ウワァアア!!鳥肌立った鳥肌!!!気持ち悪っ!!」
「俺はずっとお前の事だけしか見てねぇってのに…」
「ヤダヤダヤダ!!もう嫌!!ねえお願い!もう帰って!」
「…じゃ、勉強するか。どこがわかんねぇのか言ってみろ」
「急に真面目になんな!!」
「きっとここだろ?因数分解。初めは誰でもここでつまづく」
「…」


就学前、幼稚園、小学校、…そして中学校。
私が成長していく過程で当然のように側にいたロー兄は、どういうわけだか私の事がずっと好きらしくて常に異常なまでの愛を態度や言葉で示してくるのだから参る。
そりゃね。小さいころはイケメンのこの近所のお兄ちゃんにドキドキしていた時期もあったよ?…でもね。いちいち発言が気持ち悪いんだよ。脱がせたいとか触りたいとか他の誰にも見せたくないだとか側に置いておきたいだとかお前の相手は俺しかいないだろとかだからもう婚約してもいいんじゃないかとかとか!!そして不思議な事に近所の人は誰一人として彼が持つこの狂気に少しも気が付いていない。…だから母はイケメン且つ頭もいいこの彼に全面的な信頼を寄せていてこの度このような事態になっているのだから私の味方は近所にも身内にすらもいないに等しいと言える。


「この問題やってみろ」
「…わかんないから困ってんの…」
「そうか。…仕方ねえ。なら解き方を覚えるまで念仏のように耳に囁いて…」
「お願いだから帰ってください」


ゾゾゾ…。ロー兄の変態発言に再び背筋を寒くさせながらそう告げると、ロー兄はニヤニヤ笑った顔のまま「お前の母親には『お願いだから最後まで見捨てずに教えてやってくれ』と言われてる」…と得意げにそう言った。


「大丈夫だ。数学だけでなく本当に色々な事を俺が教えてやるからな」
「おかーさーーーん!!警察!!!警察呼んでヘルプミーーー!!!」


私は階下でロー兄の分も含めた夕ご飯を楽しげに作っているであろう母に叫ぶようにそう告げた。



(…が、その口はすぐさまローの手によって塞がれてしまうのである)


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