バルトロメオ(兄)に悩み相談
アタシは今猛烈に後悔している。落ち込んでいる。悩んでいる!!
「兄ちゃぁあああ〜ん。アタシ、もうこれ以上生ぎていげねぇっぺよ〜〜」
…なので、アタシの乗る船の船長であり、兄であるロメオ兄に泣きながらすがりついて、このどうしようもできない歯がゆい気持ちを吐き出そうとした。
ロメオ兄は、けど、そんな事どうでもいいみたいに先ほど手に入れた新しいルフィ先輩の手配書にキスする勢いですがりついているので、かわいい妹であるアタシの事なんて最早視界に入っていなかった。だから私はその手配書を強引に奪ってやった。
「おっま!!何すんだべさ!!イッツニュー!…なルフィ先輩の大切な手配書だべ!?気楽に触ってんじゃねぇっぺよ!!」
ロメオ兄はすると烈火のごとく怒りながらそう言ってアタシを睨みつけた。…が、それの上の威力を持つ必殺潤んだ瞳!でロメオ兄を見つめ返せば、途端にまるで掌を返すみたいにして「わ、悪かったっぺよ!」…って謝ってくるからやっぱりロメオ兄ってば妹に激甘!…そう思った。…が、そんな事は今はどうでもいいのだ!アタシは今悩んでいるんだからね!
「どうしたんだっぺ?」
「アタシ、愛しのトラファルガー船長にさ、恥ずがしい所見られたっぺよーーー」
「ハァ!?あんな奴…お前未だに好いてんだっぺか!?おれは止めとげってずっと言ってっぺ!?あんな奴さどこがいいべさ!?お前は将来ルフィ先輩の正室か側室に…」
「アタシにとってはルフィ先輩はそういう対象じゃねぇんだっぺよ!!海さ出る時にも言ったべさ!?アタシの目的は愛しのトラファルガー船長に会う事だって…」
「認めねぇってずっとおれも言ってっぺ!?まーだそんな悪夢さ見てっぺか!??…って、でも今恥ずかしい所さ見られたって…。ならもうそれで諦めるべさ。…ってか、何があったんだっぺ??」
ロメオ兄はとりあえずは心配そうにそう聞いてくれる。アタシはうるうるとした瞳ではぁ…とため息を吐きつつその事を語った。失態だった。…まさかあのお方がいるとは思わなかったのだ。
「…ドレスローザの店で…、メガ盛りカツ丼(10杯目)食べてる所さ…見られた…」
「…お、お前、…まさかその店から出禁さ食らってねぇべな!?」
兄はギラリ…と今までの目つきから一変してそれを鋭いものへと変えながらそう言った。…アタシはそれにふるふると首を振った。…だってその10杯目を…完食できなかったんだもの…。だから次の10杯を…頼めなかったんだもの…。出禁どころじゃないよ。トラファルガー船長のあんな呆れた顔…見てしまったら。アタシはそれ以上箸を動かせなかったよ。
「お前を出禁にする店…いや、その町…、俺がぜーんぶ締め上げてやるっぺ!!」
「だがら、されでねえって!早まんねぇでいいっぺよ」
アタシは勢いづいているロメオ兄を慌てて止めた。
…かつてアタシ達が暮らす地元ではこんな噂がたった。
緑リーゼント頭をした女が店を潰す勢いで食事をしそこから出禁を食らえば、その店のある町自体が緑リーゼント頭の鼻輪の男にその後潰されてしまう…。そんな噂が。
あ、当然アタシとロメオ兄の事なんですけどね。
かわいい妹に何やっとんじゃー!!!って、このロメオ兄はそうやって合計150くらいアタシがグルメを堪能しつくした挙句の果てに「もう来るな」と言われてしまった町をことごとく締め上げてしまったのだ。ロメオ兄の愛を感じまくりの日々だったよアタシは。…でも今はその愛よりも、愛しのトラファルガー船長からの愛がこの先期待できなくなることのほうが辛いんだってば!!
「…それならいいっぺ。…なら、お前、ルフィ先輩風の悩み吹っ飛ばす方法さ試すっぺよ」
「え?何さソレ」
ロメオ兄はそう言ってフフンと笑うと、スゥウウウウーーッと深い深呼吸をした後もろ手を上げて大声でこう叫んだ。
「宴だーーーーー!」
「「「「ウォオオオオオオーーーー!」」」」」
「えーーー!??」
ロメオ兄!!それってルフィ先輩が何かゴタゴタが全て解決した際に言う掛け声ってやつじゃん!!アタシなんの解決にも至ってないし!ってか、これからどうしようって時なのに宴って!?馬鹿兄ーーー!!!
するとバルトクラブの面々は皆嬉々として宴の準備をし始めた。さっきドフラミンゴやっつけて皆で宴し終えたばっかりだってのに!またやるんですか!?全く!
「妹御、闘魚のメガ盛りシチューです」
「…ああ、今はそんな気分じゃ…って。イイ匂いだっぺなぁ。…食べるべ」
けれど差し出された大皿のシチューから漂う良い匂いには抗えない。
きっとアタシルフィ先輩と張れるぐらいの胃袋の持ち主だからね。とりあえず、まずは食べるか…。アタシは大きなスプーンを持ってそれを勢いよく食べ始める。…すると。
「オーーッス!!トサカ!!じゃあ乗せてもらうぞ……って!何だまた宴やってんのか!?やっりぃーー!俺も混ぜてくれ」
って!!ルフィ先輩が現れたし!!
ってことは!?
もしかしてもしかして!!!!
「…女…。テメェまた食ってんのか…」
ルフィ先輩の背後にいらっしゃるのは……!!嗚呼!!眩しい!!神々しい!!まるで神ッ!!愛しのトラファルガー船長がこの船の上に降臨されているゥウウウーーー!何故このタイミングで現れたのォオオオオーー!??
アタシはシチューに入っていた闘魚の身の大きな一切れを口いっぱいに頬張った状態の顔をバッと背けながらまた泣きそうになっていた。
まさかこの船にルフィ先輩たちを乗せてあげることになってたなんて…。
早く言ってよ!馬鹿兄貴!!
アタシは背中に愛しの人物からの冷たい視線を受けつつそう思いながら、けれど闘魚はごっくんとしっかり飲み下した。
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これの中編、書きたいなぁって思った。
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