超短編!〜平成 | ナノ
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エースに悩み相談

「…でさぁ。私やっぱりその案件がうまく処理できなくて…課長に怒られて…」

深夜近い、街中から外れた場所にあるファミレス。
彼の家の近くで開いている店と言ったらここくらいしかなくて、でも、どうしてもすぐにこのもやもやを話しを聞いてもらうことでどうにかさせたかった私は、会社から彼に連絡してその店へ来てくれるようお願いしていた。
そしてやって来たエースは、待っていた私の目の前に座るなり嬉々としてメニューを開いてその中の文字を一生懸命に追っかけ始めた。
急にどうしたんだよ
とか、
何かあったか?
とか、
せめて
お疲れさん
…とか。
何か言ってよ…とそう思うも、そういった言葉なんてなく、彼はやってきたウェイトレスに笑顔を浮かべながら「これと、これと、あとこれと…」と、楽しげにメニューの中の写真を指差していた。

…で、ほとんど一方的に私が今日会社でやってしまった失敗をぽつぽつと話すも、エースはじーっと私を見つめ時折相槌を入れてくるくらいでやはり何も言ってはこなかった。
ハァ…
まあ、私なんかの悩みやらグチやらを聞いても楽しくなんてないか。
彼はおもしろいことが好きな人だから。
私としてもせっかく会うならもっとお互いが大笑いできる事を話せたらいいんだけどね。でも今日ばかりはちょっと落ち込んでしまったから…。

そうしていると、私の頼んだパスタがやってきて、エースの前にはハンバーグやらエビフライやら、彼の頼んだいくつもの料理が並んであっという間にテーブルはそれらでいっぱいになる。
「チーズケーキとバニラアイスクリームパフェです」
そして、なんと最後には大きなガラスの器に入ったデザートまでやってきた。私はそれを見て驚きで口をあんぐり開けてしまう。
エースはありがと!とウェイトレスさんにそう言うと、すぐさま大きなスプーンを手に取ってパフェの器にそれを突き刺す。そして中身を大きくすくい取れば、それを私へとずいっと身を乗り出しつつ差し出してきた。

「ほら、あーん」

笑いながら、まっすぐな瞳と声で。
軽い口調なのに、けれどまるで有無を言わさないその仕草に私は思わず口を開けてしまう。
そしてやってくる甘くて冷たい塊とほんのり酸味を感じる爽やかなケーキ。
咀嚼すれば私の大好きなそれらの味が混ざり合った。
エースは私を見てニコッと大きく笑った。


「まー、これ全部食ってもまだ辛かったらとことん話し聞いてやるよ」


そしてまた次のひとすくいを私の目の前に差し出してくるから、私はぐしゃっと潰れそうな顔をどうにかしつつ大きな口を開けてそれをねだった。
こんなところ、見られるの恥ずかしいよ。
でもそういう事を自然とやっちゃうエースが私はずっと前から好きなんだ。


「お前いっつも甘いもん食えばどうにかなるっていう単純系だっただろ?」
「最後余計!」

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