超短編!〜平成 | ナノ
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親友の兄が嫌い

その子とはずっと昔から親友だったから、その子のお兄さんとも私はずっと昔から顔見知りで、だから、その人のずっと変わらない性格≠ノついてももう嫌というほど理解している。


「お、お邪魔しまーす」
「何だお前か」
「ちょ、ちょっと兄貴!何で家にいんのよ!しかも彼女と!!外で遊びなさいよ!」


だから、その子の家に遊びに行くたびに違う彼女さんを連れてニヤっと笑っているその人を見て、ええ!また新しい人!?…と思ったり、当然のように目の前でイチャイチャとくっつきあうその姿を見せつけられる事もまた嫌というほど経験させられ、何だか目が慣らされている気がするのだから腹が立つ。


「うるせぇラミ。外は暑ィんだよ面倒くせぇ」
「なら彼女の家に行きなさいよ!」
「ハァ?何で俺が行かなきゃなんねえんだ。それにコイツが来るっつったんだよ」
「私前から今日友達が来るって言ってたよね!?」
「そうだったか?」


この家に来るたび玄関に靴があるかどうかを確認してしまうのも癖になった。そしてお兄さんのものがある事がわかればゲ…と思わず抱く嫌悪感。


「いちゃ悪ィのかよ?なあ?」
「いえ…別に」
「構わねえとさ。クックック。じゃあな。ああ、お前ついでに何か飲み物持って来いよ」
「嫌。自分のことは自分でやって」
「はー。妹のくせに使えねぇ」
「…」


そしてお兄さんはいつも通りの派手な見た目をした美人の彼女さんを連れて二階へと上がって行った。ラミちゃんはもー!とそれを睨みつけるようにし、私に「ごめんね」と謝る。ううん、いいよ。もう慣れちゃった。…決して慣れたくはない事だけど、ね。


「二階に行くのヤだから、リビングにいよ?私、ちょっとケータイとか取ってくるから座ってて」
「うん」


そう提案され、思いっきり首を縦に振った私はリビングのソファに座った。これからあのお兄さんの部屋の隣にあるラミちゃんの部屋に行っても不快にさせられるだけだ。
私は柔らかいソファに身を沈めながらあーあと伸びをした。
すると突然にさっきの派手彼女っぽい人の怒鳴るような声がすると共にドアが乱暴に開けられて閉じる音、バタバタバタと階段を駆け下りながら「最ッ低!」と言い捨てた彼女さんが玄関で靴を履いてこれまた乱暴にドアを開けて閉めて帰って行く姿がものすごい勢いでこの耳に聞こえ、そして目にも映った。…一体いきなり何があった?

「あー。…ク。帰っちまった」

そして、ゆらりと階段を降りつつ、閉められた玄関を見つめて嗤うお兄さん。
着ていたシャツは半分以上ボタンが外れてだらしなくはだけていたから、さっきまで何をしようとしていたかは一目瞭然だった。…また嫌悪感が湧いた。すると、そのお兄さんの嗤った瞳が私を捉えた。


「二股がバレちまったよ」


聞いてもいないのにそう言われた。
私はつい…と目を逸らした。けれどお兄さんはそんな私の態度など気にも留めずにつかつかとリビングに侵入してくると、私の隣に躊躇なく座る。「だからヤり損なった」。そしてごく自然にその端正な顔を私の近くまで寄せて耳元でそう囁く。「…可哀そうだと思わねえか?」。全く思うわけがない。私は無視してソファから立ち上がろうとした。けれど、お兄さんはそんな私の手を素早く掴んだ。

「なぁ…。お前どうにかしてくれよ」
「…はぁ?」
「どうせキスもセックスもしたことねぇガキだろうが…。今なら優しく教えてやれるぜ?」

強引に引き寄せて再び近づいた私の耳にお兄さんはそう囁いてクス…と嗤う。
…と、その次の瞬間「このゲス兄貴!!」という鋭い声と共にラミちゃんのキックがお兄さんの身体に炸裂して彼は「グアッ!」という情けないうめき声と共にソファから転げ落ちていった。

「テメェ!!兄貴に何しやがる!」
「うるさい!このクソ兄が!!離れろ!大事な親友が腐る!!もう外行こ!!この家から離れよ!」
「うん」

ラミちゃんは盛大に怒鳴って睨むお兄さんよりも更に大きな声でそう叫ぶと、私の手をとって玄関へと引っ張った。「あああ気分悪い!」。そう言いながら怒りまくっている。

「あ、携帯ソファに置いたままだ。取ってくる」

私はその事に気づいて靴を履くラミちゃんにそう言った。「また触られそうになったら蹴っていいから」。ラミちゃんのその言葉に「わかった」と苦笑し、足早にリビングへと入ればお兄さんはクソ…と顰め面しながら転がった先のカーペットの上で胡坐をかいていた。
私はその側に近寄ってソファから携帯を取る。
その際お兄さんと目が合った。
だから私は素早く彼の顔に自分の顔を近づけると言ってやった。

「どっちもしたことあるよ。見くびんな」

そして私はそれを聞いた途端に目を見開いたお兄さんにすぐさま背を向けそこから立ち去った。
お兄さんは黙ったままで私に何も言ってきやしない。
果たしてどんな表情をしているのかもわからない。
…けれど、多分きっと。
お兄さんはそんな私を嗤っているような気がした。
だからやっぱり腹が立った。



私は昔からずっと変わらない性格をしたこのお兄さんが本当に嫌い。



いつだって私を勝手に子ども扱いして、馬鹿にして、常に嗤ってばかりでしかないその人。
だから私は昔からずっと、彼の事を心の底から憎いとしか思えないのだから…それにどうしようもなく腹が立って仕方がないんだ。

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