親友の兄が好き
その子とはずっと昔から親友だったから、その子のお兄ちゃんとも私はずっと昔から顔見知りで、でもずっとその人は私に素っ気なくて、だから見込みはきっとないんだろうなって思ってる。
「お邪魔しまーす」
「遅かったじゃん!上がって上がって!」
だからその子の家に遊びに行くたびに切なくて、いっそのこともう家へ行くことは止めた方がいいんじゃないかなぁって、私はいつもそう思ってる。
「…お兄ちゃん、家にいるんだ」
「そう!日曜日なのに引きこもってんのよー。情けない兄貴!」
でも、家に行くたびに玄関の靴をさりげなく確認してしまう癖はどうしてもやめられないし、そして靴があればどうしようもなく嬉しくなるのもやめられないし、
「…お前か」
「あ!お兄ちゃん、こんにちは!」
私を見るその顔がいつだって怒ってるような不機嫌顔であってもやっぱり顔を合わせられたら嬉しいし、声を聞けば胸が躍るし、
「ロー兄ちゃん、暇ならジュース持ってきてよ」
「はぁ?!兄貴をこき使ってんじゃねーよラミ。俺は忙しいんだ」
「はぁ!?忙しい??朝からずっと家でダラダラしてるくせに!?」
「うるせぇよ」
こんなどこにでもあるような兄妹のやりとりでしかないのに、それが彼らならば、見ているとどうしようもなく可笑しくて、胸がきゅんとなって、顔がにやけちゃって…、
「ま、いーや。じゃ、行こ」
「うん」
だから結局、私はラミちゃんの家に行くことはやめられないし、そのお兄ちゃんに恋をすることだってやめられないんだ。
「でね!そいつったら…」
「うんうん。フフフ!」
トントン
「はーい。って、おにーちゃん!ホントにジュース持ってきてくれたんだ!ありがとっ♪」
「ついでだ」
「あ、ありがとうございます!」
早速話しに花を咲かせている時、空いたドアからまさかのお兄ちゃん登場で私はどうしようもなく焦ってしまった。
差し出されたトレイにはジュースがふたつとアイスコーヒーがひとつ載っていて、私は俯きつつその中のジュースをひとつ受け取った。その際お兄ちゃんの視線を感じて、私は更に顔を俯かせてしまう。
「全く。毎回毎回長々と飽きねえよな。どれだけ話題が尽きねえんだよ」
お兄ちゃんは呆れたようにそう言っていた。
私はますます俯いてしまった。
ラミちゃんの家に来ればやっぱり楽しくて、どうしても私は長居してしまうから。
ラミちゃんは「うるさいなー」と言い、頬を膨らませつつお兄ちゃんを睨みつけているようだった。
きっと、お兄ちゃんも私をうるさい奴だと思ってるんだろうな。
ああ、その所為で私はいつも睨まれているんだろうな。
ならやっぱり私はここへ来ることを控えた方がいいのかもしれないな。
そう思っていると、ラミちゃんが言った。
その言葉に思わず顔を上げてお兄ちゃんのほうを向けば、お兄ちゃんはチ…という舌打ちと共に顔を見てわかるくらいに赤らめた。
「てかさー。お兄ちゃん何でいっつも私たちといる時極度に緊張してんの??ずーっと顔が強張ってるよ?」
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