超短編!〜平成 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
剣道着のロー

「気付いたんだけど…」
「あ?」
「小手の時より胴のほうが、胴のほうより面のほうが歓声がすごいのよ」
「ああ?」
「あ、でもね。突きの時の歓声が一番黄色いかも」
「…」
「どうしてだと思う?」
「知らねぇよ」
「あんまり出ない技だからじゃない?」
「…お前暇人だな」
そう言うと、ローは呆れたように防具をつけた。


私とローは剣道部。
元々は私が小さいころから剣道をしていて、彼を誘ってみたら入ったという感じ。
ローは中学から始めたから六歳のころからやっている私よりは経験はずっと浅いはずなんだけど、筋がいいのか高校に入学した今先輩を差し置いて剣道部の副将レベルだ。
そしてそれは高校女子の注目の的で、剣道場は今日もロー目当ての女の子でいっぱい。
キャーキャー歓声が響く中、一際大きな声が上がるその音量の違いを気にしてみればさっき言ったような結果が出たというわけなのです。はい。


でも皆わかっていない。
本当にキャーと言いたくなる部分は、私にとっては別にある。
放課後2時間の活動のあと、ひとしきり歓声をあげた女子はわいわい言いながら去っていく。
だめだなー。
ここからなのに。
私は面を取って、隣に座って同じく面の紐を解くローを盗み見た。


被っていた面を脱げば現れる、頭に手ぬぐいを巻いたローの素顔。こめかみからす…と流れ落ちる汗。その汗は次いで首筋をつたっていく。
全体的にしっとりしたその顔と首元に、私はいつもドキドキしてしまう。
これですよ、これ。
同じ剣道部である特権かな。私はそれをいつもこうやって至近距離で見られるのだ。

ローはそんな私に気が付いていないのか、手ぬぐいを取り去って、首回りの汗をぬぐった。


「俺も気付いたんだが」


すると、同じくしっとりした頭をぐしゃりと掻いたローが私を見ないでそう言った。


「ん?!何!?」


その言葉に、いつも盗み見ている事でもばれちゃったのかと焦った声で返答すると、ローはおもしろそうに私を見て行った。



「どんなに歓声が聞こえても、お前が何言ってんのかは聞き取れる」
「!?」


ローは笑う。意地の悪い笑みだった。





「…なあ、どうしてだと思う?」

prev index