超短編!〜平成 | ナノ
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上司が毎日私を食事に誘ってきます

私は海軍本部にて海賊の情報をデータ管理化する仕事をしている。
世界中のどこかしらで新しく活動を始めた海賊たちのデータを入手すれば新規登録し、海軍が既存の海賊を捕縛したり殲滅させたりすれば登録内容の変更を行っている。
はっきり言って激務。
毎日渡される海賊の手配書や報告書を眺めてはパソコンにむかってキーボードをたたき続ける日々である。
ほとんど毎日残業し、家に帰っても寝るだけ。
友達とゆったりショッピングする…なんて何週間していないだろうか??
そもそも休み自体取れにくいし、私は人間らしい…、というより青春まっさかり女子らしい活動の一切が出来ていない気がする。だから彼氏なんていない。作る暇もない。もちろん新しい出会いもない。その前に海兵女子なんて少しもモテない。だからとにかく辛い。

「…悪いな。これが今日の分だ」
「いえいえ。大丈夫です。最近海賊の手配書を見るの、楽しいんですよ」

ある日、上司の持ってきた新しい海賊たちの手配書の束(多い)に私はふ…と微笑を浮かべながらそう答えた。「…どういう意味だ」。すると、その上司が訝しげにそう問うた。
ほとんど毎日海賊討伐で海上を駆け回っているその人は今日はたまった事務作業をするらしく珍しく本部内にいた。
私のしている仕事は今現在私のみが担当しているので彼の仕事場の隅に席をもらって作業をしていた。だからその人は実際には直属の上司というわけではないが、同室ということでその人が本部にいる時はさらに上の上司から彼が資料を受け取って届けてくれる。その際に彼はいつも私をねぎらう言葉をかけてくれたり、体調の心配をしてくれたり、お菓子を買って来てくれたりと優しい。その人が部屋にいると、彼から始終もうもうと煙が吐き出されるからそれには参ってしまうが、筋の通ったものの考え方をするその人のことを私はずっと尊敬している。

「ほら、見てください。例えばこの人。トラファルガー・ロー、北の海出身。年齢24歳で、私の2歳年上で歳の差がちょうどいいです。顔も嫌いじゃない…むしろかっこいいと思います。この人となら付き合えますよ私」
「……は?」
「あああ、この人もいいですね。ふふふ。モンキー・D・ルフィ、東の海、年齢17歳。5つ年下だけど、そのくらいなんてことありません。この笑顔キュートじゃないですか??一緒にいて楽しそう…」
「…何言ってる…」
「この人はユースタス・キッド…か。うん。ちょっと強面だけど、実は動物好きとかかわいい一面があったら私は簡単にホレちゃいますね。悪くない。ああ、ほら、この人もいいと思いません?さっきの麦わらのルフィの一味なんですけど、サンジって言って…」
「…」

…と、このように。
私の最近の趣味は手配書を見てこの人となら付き合えるかどうかを考えることである。
あまりにも生身の人間に出会えない日々が私をついにそうさせてしまっていた。
しかも手配書をそういう目で見るようになってみると、割とイケメンが揃っているから中々に楽しくてやめられない。
もちろんこちらは海兵で相手は海賊だから実際どうこうなるってことはないのだけど、妄想くらいなら許されてもいいはずだ。なんせ余暇が全くないのだもの。
そして私は、もしトラファルガー・ローさんと付き合ったら私は潜水艦で暮らすんだなーとか、ルフィくんと付き合ったら毎日笑って過ごせそうだなーとか、サンジくんはこんなデートを計画してくれそうだなーとか。…そんなことを考えて単調な日々の多少の彩にしているのだ。



「…」



すると、私のそんな姿に上司であるスモーカー大佐はム…と顔を顰めて長い事無言となった。
きっと部下の末期症状とも言えるこの状態に一抹の不安を感じ取ったに違いない。
彼はフーーーと口の中の煙をすっかり吐き出してしまうと、こちらをじいっと見つめて私に言った。

「メシにでも連れて行ってやる」
「えー。いいですよーお忙しいでしょうし。私はこうやって毎日手配書を眺められればそれで」
「いいから行くぞ。このバカ女が」

スモーカー大佐は苛々しながら私の手を強引に引いた。
え?今すぐに行くんですか??


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