超短編!〜平成 | ナノ
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カラフル!B‐大学生編‐

突然の通り雨に、帰り道にある店の店先に慌てて逃げ込んだ。
大学を出てからまだほんの数分。
傘なしで家に帰るにはまだ距離があるし、雨も強くなる一方だから途方に暮れるしかなく…。
やれやれどうしようかな。
暗く重たい空を肩を落としながら眺めている…そんな時だった。

ブロロ〜!

私の目の前に、派手なエンジン音と共に3台の高級外車が次々と止まった。赤に青に緑。誰が乗っているかなんて、中を見なくてもわかった。免許をとれる年齢になって早々にそれを取得したあの兄弟たちが、広い庭にて自分の車を自慢げに見せてきたのは記憶に新しいからね。

「おい、雨宿りか?」

ウィィイン。
運転席の窓が滑らかに開くと共にイチジがニィと口角をあげながら私を見て言った。ニジ、ヨンジも同様に。

「乗れよ。送るぜ?」
「待て。おれのほうに乗れよ!」
「いいや、私のだ」

イチジの言葉に、後方の車の中にいたニジやヨンジも身を乗り出しながらそう言う。
たいして広くもない道路に3台の車を止めて占領し、「おれが一番にあいつを見つけた」…だの「お前の車は狭いだろうが」…とか「たまには私に譲れ」…だなんて言い争っているから呆れる。しかも、濡れてるよ?

「あれ、お前何してんの?」

するとそんな私の側をキキッというブレーキ音と共に一台の自転車が止まった。サンジだった。
ぎゃあぎゃあ喚く兄弟に肩をすくめていた私はカッパを着こんで自転車を漕いでいたサンジのその姿に驚いてしまった。「あれ。サンジは自転車で学校行ってるの?」。思わずそう聞いてしまう。サンジは兄弟をちらりと見て顔を顰めると、ため息を吐きながら、「別に車で行く距離でもねぇし」と言った。あ、車は持ってるんだね。ジャッジおじさんは相変わらず子供たちに甘い。

「…乗ってく?」

そしてサンジは喧嘩の終わらないイチジたちから顔を逸らすと、私を見てニカッと笑いそう言った。
「はあ!?おま!!自転車の癖に何言ってんだ!!」
イチジがすかさず怒号を上げた。私は苦笑いするしかない。
「カッパ持ってないしな」
二人乗りは危ないし、やっぱり濡れるしで私が渋ると、だよなあとサンジはくすっと笑った。「じゃあおれの車に」「いや、だからおれが」「待て、こっちだ」。ぎゃあぎゃあ。再び始まる、雨の中での喧嘩。


「あー、なになに??どうしたの?傘持ってないの??」


すると、どういうわけかレイジュさんまで現れると高級そうなブランドバッグから颯爽と予備の傘を一本スマートに出してくれた。「これ使いなよ」。なので私はありがたくその傘を借りることにした。

「「「はあ!!?姉上!!!空気読めよな!」」」

途端に響く、兄弟たちの怒号にも近い大きな声。
私はあははと笑ってしまった。
あきらかに兄弟は不満そうである。



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