超短編!〜平成 | ナノ
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カラフル!A

ヴィンスモーク家と言えばこの世界で知らないものはいないくらいの大富豪である。
でもそれの意味をはっきりと私が理解するのは恐れながら今よりずっと先の話だった。
だから私は彼らの豪邸の子供部屋の中、来週ある田舎の夏祭りに行こうだなんてイチジたちを無邪気に誘うことができている。
今思えば身震いものだが、将来を約束されたジャッジおじさんの大切な御曹司たちを不特定多数の集まる庶民の祭りなんぞに連れて行く提案をするだなんて!
幼さとはある意味無敵だ。

「はあ?そんな下等生物の集まる祭りなんか興味あるか」

私の申し出にイチジはすぐさまそう言った。「暑いし埃っぽいし、そんな中をおれに歩けと??」。更にそう付け加えてプイっと顔を横に向ける。「だな!おれらにそんな場所は向いてねぇ!」。ニジたちもうんうんと頷いた。下等生物の集まり…。私はあまりに酷い断られ方に言葉を失いかけていた。

「おれ、気になる。行ってみたい」

でもサンジは違った!私ににこっと笑顔を見せてくれて、「出店の食べ物、一度食ってみてえ」…と。わくわくした顔でそう言ってくれたのだ。

「じゃあ、行こ!」
「わかった」
「待て。やっぱりおれも行ってやる」
「え?!何で急に…」
「社会見学だ!」
「そ、そうだな!オヤジも言ってた!いろんなものを体験しておいてそん≠ヘないって」
「なら夏祭りとやらのたのしみかたを調べてみるか」
「…」
「…」
「「「じゃあ来週な!!」」」

何故か突然に行くと言い出すイチジたち。
私はハァ、と頷くしかなかった。
やっぱりいつも通り、変な兄弟である。





で、当日。
人でいっぱいの神社を6人で歩いた(完璧に隠れていてわからないんだけど、どこかに彼らのSPが潜んでいる)。
「おー、かき氷か」
たくさんのお店を眺めていたサンジがある出店を指さして言った。まさに夏の風物詩。シャリシャリという涼し気な氷を削る音と色とりどりのシロップに思わず笑顔になる。

「お前!!どれ食いたい??おごってやる!」

するとイチジがかき氷を指さしてそう言った。「え?おごってくれるの??」。突然の有難い申し出。イチジはいそいそとポケットからお札の入ったお財布を取り出して(多分小銭など入っていない)、「早く選べ!」と私を急かした。


「一番好きなやつ、な!」


ニジとヨンジはじーーっと食い入るように店先に並んだシロップを見つめていた。
イチゴ、ブルーハワイ、レモン、メロン、ピーチ…。
カラフルなシロップ。それはどれもとてもおいしそうだった。
でも、一通り眺めて私は首を振る。
だっていきなり冷たいもの食べたくないしね。

「今はいいや」
「「「なんでだよ!!」」」

すると兄弟たちに一斉に怒られた。

なんで怒鳴られなきゃならないんだろう??
わからない。



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