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「反論はさせねぇよ」
陽の光の眩しさに思わず手を上げてそれを遮れば、私の瞳には丁寧に巻かれた包帯が映った。
今、その痛みのほとんど消えた手を動かすことに支障は全くと言っていいほどない。それはこうしてマストの天辺まで自分の手で登り、そこから見張りができるくらいに…だ。

私は双眼鏡を再び顔へ当てると、周りに何も異常がないかどうかを見渡して確かめる。すると、
「おい!!ラナ!!アイツ来てねえよね!??見えねえよなぁ!??」
…と。甲板からウソップの怯えたような声が聞こえたので「今の所だいじょうぶだよ!!」と私はそれに手を振って答えてあげた。
ウソップはその言葉にホッとした顔を浮かべてくれたけれど、それはほんの一瞬だ。彼はその後すぐさま再び身体を緊張させれば自分の双眼鏡で四方八方をしきりに見つめながら船に迫る脅威がないよう必死に祈っているようだった。
…彼がそうなってしまうのも無理はないとそう思う。ちなみにこの私も、今まさに彼と同じ恐怖心をこの身の内に抱えている一人と言っていいのだから、ね。


トラファルガーさんは今日、電伝虫である人と取引をした。
相手はあのドンキホーテ・ドフラミンゴで、彼はパンクハザードで捕まえたシーザーの身柄と引き換えに王下七武海をやめるよう険しい顔をしながらその人にそう告げていた。


そして、そのせいで今この船は怯えに怯えまくっているウソップやチョッパーなどによって過剰なまでの見張りが続けられている。まあ、ルフィやゾロはそんな事少しも気にしておらずいつも通りに鼻歌なんて歌ったり、筋トレなんかしているんだけれどね。私はそんなマイペースな二人にクスっと笑って、見張り台から帆桁へと移るとそこをスタスタ歩いて別の方向を眺めた。

「…あいつ等…相当な怯えようだな」

すると、私がいる反対側の帆桁に座るトラファルガーさんの呆れたような声が聞こえた。
私がここからの見張りを始めた途端、やっぱりナチュラルに側へとやってきて座る彼。その当たり前になりつつある行動に最早文句すら言う気にもなれなかった私だが、その台詞には黙っていられなくて「誰のせいだと思ってるの?」…と、こちらこそ呆れた声でそう言ってやった。
トラファルガーさんはそれに「そうだな」…と言ってククッと笑い、次いで帆桁に立つ私を見れば「落ちるぞ」と少しだけ瞳に心配の色を含めてそう言った。
私はそれに首を振る。
潮風は強く、それは容赦なく私の身体に当たり続けるのだがこのくらいならどうってことなかった。それこそ、これは二年皆と離れている間に師となってくれた人がみっちりと鍛え上げてくれたものであり、私の数少ない強み≠フ一つと言っていい。

「平気。ここで側転だってできるよ」
「…止めておけ。本当に落ちるぞ」
「なら見てて…ねっ!」

できる、と言った私を牽制するその言葉にどうしてだかむきになってしまった私はくるり、帆桁に手を当てながら身体を一回転させた。別に難儀な技ではない。…が。
「あ、れ?」
グラリ。
いつもはきれいに両足をぴたりと狙った場所へと到達させられるはずのそれが、今回は何故かあらぬ位置を目指していたので身体がよろけた。ズキ…。そしてすぐさま感じたのは傷の痛み。さっきまで全く何も感じていなかったのにどうして??そんな疑問を抱えながら私の身体はそのまま斜めに倒れ、それと共に揺れる自分の視界に多少の怖気を感じた。けれどその揺れはすぐに止まった。
「…お前馬鹿か?」
私のよろけた身体を素早く支えてくれるその手。
それはいつの間にかこちらへと駆け寄ってくれていたトラファルガーさんのもので、彼は盛大に顰めた顔で私の身体をぎゅ…と力強く引き、半分落ちかかっていた私を自分のほうへと寄せれば「怪我してること忘れてんじゃねえよ…」と呆れ声で言った。

「あれ、おかしいな」
「…おかしいのはテメェだ。塗り薬に多少の麻酔作用があるんだ…。今まで痛みを感じてねえのはそのためだ……」
「…何で言ってくれなかったの…?」
「こんな無茶をする馬鹿野郎だとわかっていれば言ってた」
私の小さな抗議に、トラファルガーさんはすぐさまそう切り返してきた。けれど彼はその直後「いや、待て。…お前はそういう奴だったな…。俺は知っていた。…俺の過失だ」と、チ…という舌打ちと共にそう言って恥ずかしそうに少しだけ顔を赤くした。

「…ッ」

それは予想外でしかない彼の姿。なので私はク…と思わず吹き出してしまう。
それが事実であっても、その事は棚に上げて私だけを悪者にしてくると思っていた。そんな人だと思っていた。

「あはは…」

それなのに素直に非を認め、そう言ってバツが悪そうにするトラファルガーさんの姿に声をあげて笑ってしまった。トラファルガーさんは私を帆桁に座らせてくれながら、急に笑い始めた私を見ると少しだけ驚いた顔をした。
「…ご、ごめん…。フ…フフ…。何だか色々と笑えちゃって…」
一歩間違えば落下していたであろう私がその事を反省せずにトラファルガーさんに対して笑っているだなんて、こんな姿を見た彼は嫌味の一つでも言ってきそうだった。けれど、彼はそんなことは言わなかった。

「お前やっと笑ったな」

ただ、嫌味の代わりにそう言った。
そう言われて、私はトラファルガーさんに対して緊張し続けていた心がようやく解けていっている事に気がついた。それはきっと、昨日私の行動を間違っていない、と言ってくれた時からだろうか。落ち込みかけた私にはその言葉は単純に嬉しくて、それに、海王類から救ってくれたことも帆桁から落ちないようにしてくれた事も普通にありがたかった。
だから、その後当たり前のように彼が私の隣に座ってきたその行動に動揺して困ることもなかった。

「どうして今まで笑えなかったんだろうね」

すぐ側にいるトラファルガーさんにそう言ってみた。
彼は目を伏せながらフン…と鼻で笑い、穏やかな声で、そして少しだけ嬉しそうにしながら「知らねえよ…」と、それに答えた。





その後の私はいつも通りの生活を取り戻したように感じる。
慣れ、ももちろんあるかもしれない。私はこの船にトラファルガーさんが居るという事に違和感を感じなくなったし、その視線を受け止めても動じる事がなくなった。
食事の時隣にいる事に緊張しなくなったし、私の方から彼に笑いかける事も引き続きできていた。そうなると最初に抱いていた最悪だった印象も嘘みたいに消えていくから可笑しい。ああ、でもこれからドレスローザに行けばまた彼に強引に連れまわされて振り回されるのだろうか?そうなったらまた不満でいっぱいにさせられそう。…そう思うとクスッと笑えてしまって、そして私はそんな顔のまま目の前の医療室のドアを開けた。そこにトラファルガーさんはいて、彼は私を見るなり少しだけ驚いた顔をした。

「え、と。…包帯を変えてくれるって言ったから…来たんだけど…」

そのまるで意外そうな顔に、あとで来いと言ってくれた事が幻聴だった??と慌てれば、トラファルガーさんは「ああ…」とすぐに納得したようにその目を細めた。チョッパーはウソップと一緒になって外の入念な見張りを続けているので医療室にはトラファルガーさんしかいない。

まっすぐに彼へと近づいて、彼の前にあるスツールに腰かけた。今までと違う緊張は感じたけれど、耐えられない事はなかった。そっと差し出した私の腕をトラファルガーさんは取り、前の包帯を解いてそして現れた傷を彼はじ…と見つめた。やはりすまなそうな目をしていた。
「今なら…俺の能力で傷を目立たない場所へ変えてやれる」
すると彼は私を真摯な目で見つめてそう言ってくれた。そんな事もできるのか…。私は感心したけれどその提案には首を振った。
「ううん、いい。…この傷を見れば…自分がもっとしっかりしなきゃいけないって思わせるだろうから」
「…」
「これからドレスローザにも行くし、せめて気持ちだけでも皆の足手まといにはなりたくないし」
「…」
「…私、パンクハザードの時みたいに…色々お手伝いするよ。…フフ。帽子取りに行くのはもう慣れたしね」

そうおどけて言った私に、するとトラファルガーさんはその視線を腕から私へと移すなり急に眉を寄せた。何だろう?…表現しがたい妙な表情を浮かべた彼は、傷口に薬を塗るその動作を止めていた。

「必要ない」

しばらくの沈黙の後、彼は一言厳しい声でそう告げた。止めていた手を再び動かし始め、包帯を巻き終えるとギロリ…と強い眼差しで私を見据える。

「ドレスローザでは何手かに別れての行動になる。…お前は…、船の安全を確保するチームになれ」
「え…」
「…どの道お前は手負いだ。…麦わら屋もそれに同意するだろう」
「…そう、か」
その台詞に小さく驚いた私がいた。てっきり、そうだな…と。ニヤリと笑って、当たり前だろ…とか、そんな事を言ってくれると思っていた。
「でも、」
だから何となくその事を寂しく感じてしまって、思わずそう言いかけてしまう。別に抗議するつもりじゃなかった。いつもなら、そんな事言わないんじゃない?…と。おかしいね、と。多分…そう言いたかったんだと思う。

「うるせえ…」

すると私の言葉を遮るようにして、トラファルガーさんはそう言って腕に触れていた手に力を入れた。そしてそのまま、彼は私を引いた。「…あ」。また、抱きしめられる…?そう思った。

「ん…ッ」

けれど違った。
腕を引いたトラファルガーさんは、空いたほうの手で私の後頭部に触れると、自分の顔を私の顔へと…寄せたのだ。
そのまま唇が合わさって、私は目を見開いた。ドッとその瞬間心臓が跳ね上がり、肩も同じようにびくんと跳ねた。

「…反論はさせねぇよ」

一時だけ離れた彼の唇が、怒った声でそう告げた。そしてすぐにまた強く口を塞がれた。
隙間なく合わさった唇に、息ができなくて苦しい。
後頭部の彼の手と、腕から移動して背に回された手に更に力が籠もってそれらは私を引き寄せ続ける。だから私の身体は益々トラファルガーさんに密着した。
呼吸をさせてもらえないほどの激しいキスに困惑して身体をよじるが、彼はそれを全部阻止する。次に唇が離れた時、私はやっと息をする事ができたがトラファルガーさんはけれどすぐさま私の唇を再び塞いでしまった。


「…こんな深夜に、包帯を変える?…のこのこやって来やがって…。お前は馬鹿か?」

酸素がなくなる一歩手前で唇が離れ、トラファルガーさんは息の多少上がった声でそう言った。
「襲われてぇのかよ…」
顰められた彼の顔がまた近づいて、ふわり、その恐ろしい言葉とは裏腹に今度は優しく唇が触れた。私は身体を怯ませながらぎゅ…と目を閉じ、先ほどとは打って変わった優しいキスに困惑しながらも抵抗することができずにいた。唇や、腕や、背中といった、彼が触れた箇所から全身がゆっくりと痺れていく。その甘い痺れに思考回路もまた、痺れた。

…夕食が終わってずいぶん経ち、夜の見張りを交代した矢先、側を通りかかったトラファルガーさんに私は包帯の事を言われた。私はそれに特に何の疑問も感じなかった。
チョッパーはウソップと一緒にずっと外を見張っている。だからここにはきっと来ない。
こんな時間に医療室を利用しようとする人もまた、いない。
回転の鈍くなった頭の中でもその事はすぐにわかった。
けれど、私はトラファルガーさんの言葉に怯えるより、別の感情に支配されて溺れてしまいそうだった。柔らかくしっとりと落とされたキスが私にはあまりにも心地よくて、思わず身を委ねてしまいそうにもなる。
…と、そこへぬるり…と突然に彼の舌が口内へと侵入してきて、その未知の感触に私は思わずぎくりとそれに反応してしまった。しかも、彼の手は私の着ているシャツの裾の隙間を見つけ、そこから無遠慮に指先を侵入させて素肌に触れる。

「ッ!」

その瞬間、頭の中で警笛が鳴り響いた。
私は溺れきってしまいそうだった意識を無理やりに水底からすくい上げる。すぐさま顔を背け、両手で抵抗するように彼の胸を押した。

「…いや…だ」

その声は掠れてしまった。彼を押す両手にも力などほとんど入っていない。

「…だめ…」

ほとんど無意味でしかないとは思ったが、もう一度声を上げた。

しかし、驚いたことに彼の身体はあっけなく私から離れた。
名残惜しそうにする仕草は窺えるものの、けれどトラファルガーさんはそれ以上は無理に私を引き寄せることはせず、そっと私の身体をスツールに座り直させる。それに伴って密着していた部分の体温がス…と下がった。その温度変化が哀しいくらいよくわかった。

気付けば激しく打ち続けていた鼓動の所為で、私の息も多少上がっていた。彼の先ほどまでの行為を少しの間であれ抵抗もせず受け入れていた自分に急に羞恥心が襲って恥ずかしくなり俯いた。彼の顔がまともに見れない。自分のことも見られたくない。
私はスツールから立ち上がりかける。
ただ、逃げ出したかった。
するとトラファルガーさんの手が伸びて、「待て…」。私の腕を…やはり掴んだ。
「痛…」
するとじくり、とその箇所が痛んだので思わずそう言う。
咄嗟だったせいだろうか、彼は私の傷の深い部分を掴んでいた。その声に彼は慌てたのだろう、すぐさまハッと息を飲む音が聞こえ、そして「悪ィ」と。まるでこちらまで辛くさせてしまいそうなほどの哀しい声でトラファルガーさんはそう言った。


「…すまなかった」


そして、ぽつり。静かになった医療室の中、また小さな声が響いた。
逃げる事を許されなかった私の、その腕を掴んでいた彼の手はその言葉と共にそっと離れる。そしてその手はまるで労わるように包帯を撫でた。その仕草にまたびくりと身体が反応した。そして思わず私は俯かせていた顔をあげトラファルガーさんの顔を見つめてしまった。

「…」

目の前にいるトラファルガーさんは、哀に満ちた顔をしていた。
今彼はこの上ない後悔と懺悔の意思すら感じる表情で私の腕を見つめ続けているのだ。
私はそんな見たこともない表情をするトラファルガーさんが信じられなくて、ただ黙って彼を見つめた。激しく打つばかりだった心臓は、その仕草や彼の顔を見ていればいつの間にやら落ち着きを取り戻していったが、どうしてだかその代わりに妙な焦燥感に似た不安が生まれた。そしてそれは私の心を容赦なく襲い、その所為で私は益々彼から目を離せなくなってしまった。


「お前の怪我は…俺の所為だ」


そして、彼は唐突に、弱い声で絞り出すようにそう言ってきた。
目線は私の腕にあるまま、切れそうなほどに切ない瞳をしたその姿。
私は突然の彼の告白の意味が分からなくて「…え?」と声を上げてしまう。


「俺の所為で、お前は負傷した」
「…」
「あの時…、俺が迷ったせいだ」
「…」
「…お前が怪我をすれば…麦わら屋はお前をドレスローザの中へは連れて行かないだろうと…俺はあの瞬間そう思っていた」
「…何…言ってるの?」
「お前を傷付けたくねぇとずっと思っていたくせに、傷付けばいいだなんて……滑稽だよな…」
「…」


トラファルガーさんはほとんど一方的にそう言ってしまうと、そっと私の手を離し椅子から立ち上がって帽子をかぶり直した。そして私を避けてゆっくり医療室のドアへと歩いていく。
このまま行ってしまうのか…。そう思いながら、振り返って彼の背中を見た。

「ラナ…」

すると、トラファルガーさんの手がドアノブへと当てられたとき、彼はぴたりとその動きを止めて…私の名前を呼んだ。
名前を呼びながらこちらへと振り返った彼と私は目が合う。
暫く彼は立ちすくんだまま何も言ってはこなかった。私はそんな彼から目を逸らせない。どうしてだか引き付けて離さない表情を浮かべたその顔を、私もまた何も言えないまま見つめていた。「お前は嫌かもしれねぇが…」。そして彼は小さくそう呟いた。

「明日も…」

トラファルガーさんはその時少しだけ躊躇うように目を伏せる。けれどすぐに彼は視線をあげて私をまたまっすぐに見つめた。目深にかぶった帽子で多少見えにくくても、私には彼が寂しげに笑っているのがわかった。


「…またお前に会いてぇな」


何を言っているのか益々意味がわからなかったが、切実さがにじみ哀願するようなその言葉に私はその疑問を問いかける事ができない…。


「…早ければ今夜には会えるんじゃないかな…」


私はそしてそう答えた。
いつも余裕そうに、強引に、自分のやりたいまますべての物事を進めてはニヤリと笑う人であった彼が、こんな風に謝ったり気弱な姿を見せてきたりすると…どうしてだか心が落ち着かなくなるばかりで私は思わずそう言っていた。それに…正直それが嫌であるとも思わなかった。

今日はシーザーを引き渡して、工場を壊して、錦えもんの仲間を助けてあげて、そしてドレスローザから去るという流れだ。
危険な目には合うかもしれないけれど、ルフィたちがいて、そしてトラファルガーさんがいるならば。明日にはそれらを全部終わらせて、船の上でみんな一緒に、いつものように笑い合っているだろうとそう思う。

「そうだな…」

トラファルガーさんは私の言葉にフ…と小さく笑った。
そしてドアノブを回してドアを開け、今度こそそこから出ようとするも、彼はその途中でまた歩を止めて私の方へ振り返った。

その瞳はもう寂しげではなかった。
今や強い光を宿したように見えるその眼差しは私をじ…と見つめている。
先ほどまでの哀しそうな顔も消え、それはいつも通りの不敵な笑みを浮かべた顔へと変化していたのでそれは私をホッとさせた。けれど、彼は次に恐ろしいとしか言えないことをさらりと言ってきたものだから私の心臓はその所為でぎくりと縮んでしまった。


「その時は、もう途中で止めねぇ」
「え?」
「無理やりでもお前をもらう事にするよ」
「…そ、その時は本気で逃げさせていただきます」
「クク…」

私は先ほど思わず言ってあげた自分の台詞に最大限に後悔し、彼はそんな私の反応を見ればおかしそうに笑った。そして彼は笑顔のままぱたんとドアを閉め暗い医療室の向こう側へと消えていった。




その後、明るく陽の登った甲板に集まった私たちの元。
空からはドンキホーテ・ドフラミンゴの七武海脱退を告げるニュースを記載した朝刊がひらひらと舞い降りた。

トラファルガーさんはそれをじ…と見つめ、そして眼前に現れたドレスローザという国を医療室で見せたものと同じ強い光を宿した瞳で見続けていた。


私はそんな彼の背中を遠く離れた場所から見つめいてた。
そして、理由もわからないもどかしい思いを抱きながら、心を落ち着かせるために包帯の巻かれた自分の腕をそっと撫でた。